野球殿堂入りを果たしたランディ・バースはその業績もさることながら、破天荒な行動で周囲を驚かせ続けた豪傑でした。プロとして成果を出すことに拘り、しっかり結果を残し続けたことは本当に素晴らしいですね。
朝までビール２樽、昼１時半に起きてナイターへ…豪快すぎたオレ流調整法
（東スポWEBより）
元阪神のランディ・バース氏（６８）がエキスパート表彰で殿堂メンバーに選ばれた。大阪を熱狂させた１９８５年の阪神日本一に大きく貢献し、２度の３冠王に輝いた「ＮＰＢ史上最強助っ人」。そんなレジェンドの殿堂入りを記念し、「ランディ・バース伝説」を全３回でお届けする。２回目のテーマは〝貫いたオレ流〟だ。
【ランディ・バース伝説♯２】打撃で爆発力を発揮する一方でバースは紳士で通っていた。近めのボールを投げられても激高してマウンドに近寄ることも一度もない。それに本塁打を打っても絶対に相手投手の方を見なかったという。
大声援の中、ガッツポーズや指差しもせず、ただ黙々とベースを回るだけ。通訳を務めていた本多達也氏は「ホームランを打つだけで十分恥をかかせているからと…。相手にそれ以上の恥をかかせてどうするんだ、ということでした」と明かす。それどころか練習中から相手チームのエース級ともフレンドリーに接し、友好関係を築くようにしていた。
そんな紳士な助っ人も、日本野球の慣習への疑問を持ち続け、アジャストできない部分もあった。ナイターなら試合前練習を午後４時に終え、開始まで２時間ある。バースにしたら５時に集合してアップと打撃練習でいいじゃないか、というわけだ。さらに春季キャンプの時期もやっかいだった。「２月１日に行って何の意味があるのか」。４月の開幕なのに２か月も前に集合し、寒い高知・安芸でトレーニングすることに納得ができなかったという。
そのためバースが初日から合流することはなく、早くて中旬。もうすぐオープン戦というころにやってきて「飛行機の切符が取れなかった」「おばさんが死にそうだった」など適当な理由を並べていた。３月のオープン戦だけで状態を仕上げる自信があり、すべてを自己責任でやりたかった。
「ランディにしてみれば日本の球団のやっていることがナンセンスだった。いくらキャンプ、オープン戦で良くても意味がない。『長いシーズンを戦うためにキャンプで体をつくる』という考えは間違いだ、ってね。シーズン中にしっかりトレーニングすることが大事という考え方でした」（本多氏）
遠征の移動時間にも疑問を感じていた。ホームのデーゲームの翌日がビジターでナイターなら、選手は試合後に移動する。しかし、バースは自宅で家族とゆっくり過ごし、当日に移動していた。交通トラブルが起きれば試合に間に合わない事態にもなりかねないが、これも個人事業主として腹をくくった行動だった。
ルール破りのフライングもあった。ある日、バースはシーズン中にゴルフに行った。お忍びのつもりが、近くのゴルフ場で女子トーナメントが行われており、噂を聞きつけたマスコミがバースのゴルフ場に押しかけてきた。
翌日のスポーツ紙に「バース、シーズン中にゴルフ！」と出たことで大騒ぎに…。２日前には試合終了を待たずに球場を引き揚げた事実も発覚し、球団幹部が問題視する事態になった。さすがの大砲も大ピンチ、と思われたが、バースはその日の試合で騒動を吹っ飛ばすかのような２本塁打を放ち、幹部も不問にするしかなかった。
もともと頑固な一面もあり、アメリカ時代に５球団を歩いた理由の１つがこだわりの口ヒゲ。１９７０年代はまだ選手の口ヒゲが認められておらず、野球をする上でふさわしくないとする球団が多かった。最初の球団のツインズからトレードされたのは、ヒゲを剃るように言われたのを断ったのが理由ともされている。
調整はシーズンで試合をこなしながらやっていく。鉄アレイで腕を鍛え、その姿は人に見せなかった。それも調子のいい時にはせず、筋力が落ちたと感じたらやる。約２時間半の試合の中で自分がどれだけ集中できるかを前夜から逆算して行動する。
遠征中、ナイター後は朝まで他球団の助っ人たちと出掛け、ビールをひと晩で２樽も飲んでいた。朝６時に寝て午後１時半に起きてシャワーを浴びる。このルーティンを毎晩続けていたという。無茶なようにも見えるが、これが試合に集中できる（？）バース流の豪快すぎるコンディション作りだった。
郷に入れば郷に従え――とはいえ、納得できない異国の慣習もあれば、譲れない一線もある。バースは自分流を崩すことなく「打てば文句ないだろ」とばかりにバットで周囲をだまらせた。そんな最強助っ人を１９８８年、不運な出来事が襲う…。
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