この日、神宮球場に詰めかけた観衆の目を釘付けにしたのは、阪神先発・才木浩人投手(26)の圧巻の投球だった。118球、8回途中で降板したが、許したのはわずか1失点。力強い直球と緩急を織り交ぜた投球術でヤクルト打線を封じ込み、見事リーグトップタイの12勝目を掴み取った。チームとしても8対1の快勝で盤石の状態で首位をキープし、後半戦での勢いを加速させている。
試合は、阪神が先制したものの膠着状態が続く。4回にヤクルトの村上宗隆に10号ソロを被弾し、才木は1点を失った。だがそこで気落ちする事もなく、淡々と試合を作り上げた。村上との真っ向勝負を制すべく投じた148キロ速球をレフトスタンドへ運ばれたが、その後も切れ味鋭い直球とスライダー、緩い変化球を組み合わせて、得点を許さない。一点リードの難しい展開を、冷静に乗り切ったその姿は、まさにエースの貫録だった。
6回以降は援護にも恵まれる。阪神打線は4回に佐藤輝明が放った32号ソロで2点目、さらに6回には才木自身が押し出し四球を選びリードを広げる事に成功。8回には、坂本の適時二塁打などで一挙5点を加え、試合の主導権を完全に阪神へ引き寄せた。合計13安打の猛攻となった。
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中盤の見せ場は、6回表の2死満塁の場面で訪れた。ここで才木は代打を送られず、自ら打席へ立つ。「これ打ったら俺かっこいいなと思って」と語ったヒーローインタビューの言葉が物語るように、彼は打者としてもチームに貢献しようとした。しかし結果は押し出し四球。それでもその1点は貴重な追加点であり、ピッチャーとしての覚悟と責任感が光っていた。
その後も才木は力投を続け、8回に入ってからも2者連続三振を奪いゲームの流れを渡さないまま降板。自らの手でアウトを取り切ることを強く願ったように、降板時は悔しさを滲ませた表情だったという。だが、この内容には文句なし。5連勝、12勝目、防御率は1.53となり、最多勝争いへ堂々の名乗りを挙げた。一方、打線とリリーフ陣も見事に機能し、チーム一丸で掴んだ価値ある白星だった。
この活躍に対し、ヒーローインタビューでは「頑張ろうかなと思ってました」と繰り返し語った才木。どんな厳しい場面でも、真摯な姿勢でマウンドに立ち続け、チームを信頼し粘り強く投げ続けたその精神力に、ファンの声援も一層大きくなった。試合後のコメントには、「ファンの熱い声援がすごい力になるので、ここから最後までノンストップで行きたい」と、終盤戦に向けた強い決意をのぞかせた。
この試合前日まで延長戦続きの連戦で疲弊気味の中継ぎ陣にとっても、才木のイニングイーターぶりはまさに“救世主”的な存在だった。その疲れを考慮した継投戦略との兼ね合いの中で、代わりの投手を意識しながらも、最後まで自ら投げ抜きたかったという表情には、投手としての誇りと責任感が色濃く表れていた。
また、今回の登板がプロ通算100試合目というメモリアルマウンドだったことも見逃せない。そこに花を添えたのが、勝利と自らの12勝目。チームとしては勝ち数、防御率、勝率といった個人成績三冠への期待も高まる中、特に最多勝争いではライバルも多く、ここからの1勝1勝が正念場だ。
この日、神宮へ詰めかけた虎キチ達にとっては、これ以上ない痛快な夜となった。才木の好投に打線の援護、ベンチの采配、そしてファンの応援が一体となって、チームの勢いを再加速させる試合となった。後半戦も優勝への道を確かなものにするため、この“才木劇場”はまだまだ続きそうだ。
