7月11日、甲子園球場を支配したのは、12連勝目前の阪神タイガースファンの歓声ではなく、悪夢のような沈黙だった。注目の先発・村上頌樹投手(27)は、静かに立ち上がった試合序盤に、まるで悪魔がついたように崩れていった。
初回こそ無失点で切り抜けたものの、2回表にその均衡は一瞬で崩れる。2死からまさかの7連打を浴び、6失点というまさかの展開。7連打のフィナーレを飾ったのは、ヤクルト・内山壮真捕手によるプロ入り初となる満塁ホームラン。147キロの直球を振り抜かれ、打球は左翼席へ一直線に飛び込んでいった。甲子園は一瞬で凍りつき、村上の顔面蒼白となった表情がモニターに映った。村上にとって今季ワーストの結果となり、自己最短の2回降板、自己最悪の6失点という数字だけが残ってしまった。
長い雨天中断50分間を経て7回18時01分に始まったゲームは、最終的に阪神の3‐6という敗北で幕を閉じ、11連勝ならず。2リーグ制以降の球団記録更新は夢と消えてしまった。
Tiktok動画はこちら
それでも、村上自身は試合後に頭を抱えるような姿勢で言葉を絞り出した。「取るべきアウトを取れず、相手の勢いを止められなかった。序盤で大量失点してしまい申し訳ない」と、エースとしての責任と悔しさをにじませた。その言葉には、エースの矜持と焦燥が見え隠れしていた。
丁寧な投球スタイルで防御率トップクラスに名を連ね、開幕から無失点記録を保持してきた村上だが、この日の内容は、エースであるがゆえの重圧と一瞬のミスが招いたものだった。この試合の2回表、村上が投じたストレート、変化球、コース選択。どれが悪かったのか。1死一塁からは二盗を阻んだ好プレーもあったが、次打者以降、連打を許し、最後には命取りの満塁弾を浴びてしまった。
試合後コメントでは、捕手・坂本誠志郎も責任を感じており、「満塁被弾は痛かったが、自分がもう少し冷静になれていれば」と語った。ベテラン捕手の言葉からは、投手と捕手の絶妙なバランスがいかに大切かを再認識させられる瞬間でもあった。
チームは後半、4回と5回に反撃を見せたが及ばず。大山悠輔、小幡竜平らのタイムリーで2‐6、3‐6と1点ずつ追い上げたものの、ヤクルトの継投が処理しきり、阪神の追い上げは叶わなかった。
ここまで8勝3敗、防御率1.76と、まさにエースとしての貫禄を見せてきた村上。その背景には、東洋大学時代から鍛え抜いた肉体と、精神的タフさがある。2023年には新人王・MVPのダブル受賞、開幕から31イニング無失点というセ・リーグ記録タイの偉業も達成。昨季はその才能が見事に花開き、球界に衝撃を与えた。
しかし、野球は難しいスポーツだ。いかに村上のような堅実な投手でも、一つのミスが命取りとなる。ましてやエースの重責を背負う男にとって、その一球一球の重みは計り知れない。甲子園の大歓声が途絶え、代わりに映し出されたのは雨の中の静寂だった。しかし、気持ちを切り替えるしかない。藤川監督は「連勝より内容をどう立て直すか」とコメントし、次戦以降への意気込みを打ち出している。連勝こそ止まったもののチームは前を向き、次へつなげようとする姿勢だ。
エース・村上は甲子園の広さを生かした投球、配球、精神的な踏ん張り――それらすべてをこの敗北から学び、エースとしてさらに成長する覚悟を決めたはずだ。
ファンにとってはつらい夜となった。しかし、敗北からの学びは今後の糧となるはず。村上がこの屈辱をバネに、どれだけ大きく飛躍できるか。次回登板を楽しみに待ちたい。虎キチはまた、大歓声で男の名を呼び、凱歌を迎える日を信じて見守っている。
