5月30日、マツダスタジアムで行われたカープとの一戦は、5対2で阪神が勝利を収めた。今季ここまで混戦模様が続くセ・リーグの中で、阪神はこの勝利により貯金を再び「8」とし、首位の座を守る格好となった。試合の主役は、先発を務めた村上頌樹投手だ。7回を投げ抜き、わずか3安打1失点と圧巻の投球で、堂々の今季7勝目。これにより、セ・パ両リーグ通じて単独トップの勝ち星を手にすることとなった。
今季の村上は、これで6試合連続の「クオリティスタートプラス(HQS)」となり、安定感は抜群。特に今季は試合序盤での失点が課題となっていたが、この日も2回に先制点を奪われるものの、そこからの立ち直りが見事だった。
立ち上がりから球に力があり、1回はわずか8球で三者凡退に抑えた村上だったが、2回にわずかな綻びが出る。先頭の坂倉にレフト線を破られるツーベースを浴びると、続くモンテロにも痛打されて1点を失った。この2者連続二塁打での失点に、マウンド上の村上は一瞬、苦悶の表情を浮かべた。しかし、そこから表情を引き締め、次打者をきっちりと打ち取り後続を断つ。
試合後に村上は、「点は簡単に取られましたけど、そこから自分の投球ができた。粘って辛抱強く投げたのがよかったと思います」と冷静に振り返った。この“魔の2回”は今季の彼にとって鬼門であり、先発した試合での失点の多くがこの2回に集中している。今季ここまで防御率2点台前半を維持しながらも、序盤に崩れることがたびたび指摘されていた中、この日の試合は課題克服の第一歩となった。
3回以降は見違えるような投球だった。スライダーとツーシームを低めに集め、左打者には外角へのチェンジアップを織り交ぜる巧みな配球。広島打線は的を絞れず、気づけば6回まで無安打に抑えられていた。特に、昨季彼に相性の良かった秋山翔吾には2打席連続で凡退を強いられ、末包昇大もまったくタイミングが合わない。村上は「狙い通りのゴロアウトが多く取れたのが大きい。守備にも助けられた」と感謝の言葉も忘れなかった。
その守備陣もまた、村上の快投をしっかりと支えた。4回、センターの近本光司が背走しながらのダイビングキャッチを見せ、5回にはセカンド中野拓夢が鋭いゴロを横っ飛びで止めるなど、好守が目立った。こうしたバックの援護が、村上の気持ちをより引き締めさせた。
そして試合が動いたのは5回。阪神打線が広島先発の玉村を攻めた。2死二塁の場面で、打席には近本光司。カウント1-2と追い込まれながらも、しぶとくセンター前に運び、俊足の木浪が生還して同点に追いついた。さらに、中野の安打で一、三塁とし、森下翔太が放った左翼への浅いフライが、左翼手・中村貴浩と遊撃手・矢野雅哉の交錯を誘う。これが落球となり、阪神に2点目、3点目が転がり込む。記録上は敵失だったが、粘り強くつないで生まれた勝ち越し劇だった。
9回にはダメ押しの追加点も奪う。2死一、三塁の場面で代打・豊田寛が中前に痛烈なタイムリーを放ち、5対1と突き放した。今季昇格したばかりの豊田にとってはこれが貴重なプロ初打点。ベンチでは笑顔を見せながらベテランたちとハイタッチを交わし、スタンドの虎党からは大きな拍手が送られた。
村上は7回113球を投げ、6奪三振1四球、与えた得点は2回の1点のみ。8回からは加治屋、そして9回にはゲラが登板し、わずか1点を返されはしたものの、リードを守り切った。試合終了の瞬間、マウンドに立つゲラが大きくガッツポーズを見せ、ベンチの村上も力強く拳を握った。
この勝利で村上は今季7勝目。試合後には「チームが勝てばいいと思って投げているけど、勝ちがつけばうれしいし、自信にもなる」と語る一方、「まだ半分にも満たない。もっともっと投げられるようにしたい」と冷静に今後を見据えた。また、同じ1998年生まれの巨人・山﨑伊織投手が6勝で追走していることについて問われると、「伊織とは大学の頃からずっと意識している存在。やっぱり負けたくないですね」と、同世代のライバルへの対抗心をのぞかせた。
試合を通じて感じたのは、阪神の投打にわたる「粘り」。そして、村上の「我慢」が試合の流れを引き寄せた。得点は中盤まで接戦だったが、広島に傾きかけた試合のリズムを村上が寸断し、味方打線がじわじわと追い越した。こうした勝ちパターンを確立できていることが、阪神の今季の強さの証でもある。
次戦は5月31日、再びマツダスタジアムでの広島戦。チームは連勝を狙い、先発には伊藤将司が予想される。村上の好投が生んだ流れを引き継ぎ、虎の快進撃は続くのか。今後の戦いに注目が集まる。
