2025年8月29日、甲子園。戻ってきた“聖地”の夜は、最後の最後まで手に汗握る攻防となった。阪神は繰り返し流れを引き寄せかけながらも、一打が届かず1点差で惜敗。スコアは3−4。入場者は今季最多の42642人。黄色く染まった外野が総立ちになった最終盤の追い上げは盛り上がったが、あと1点が遠かった。
先手を奪ったのは巨人。0−0で迎えた4回表、泉口の中前、岡本の左前で1死一二塁を作られると、岸田が初球を中前へ運ぶ先制打。阪神先発の大竹は甘さを最小限に抑えて後続を断ったが、均衡は破れた。
それでも阪神は5回裏に反撃。先頭大山の内野安打、熊谷の左前で無死一二塁。坂本のゴロで1死一三塁とすると、高寺が四球で満塁。ここで大竹自身が初球を中前へはじき返す執念の同点打。続く近本の鋭いライナーは吉川の好守に阻まれ、欲しかった勝ち越し点はならず。試合はふりだしに戻った。
6回表、わずかな綻びを巨人は見逃さない。泉口、岡本の連打で一二塁、岸田にフルカウントから四球を与えて満塁としたところで、大竹がアクシデントで降板。左ふくらはぎがつった影響と説明された。2番手ドリスがマウンドに上がるも、キャベッジに右翼フェンス直撃の走者一掃となる3点適時二塁打。ここが結果的に勝敗の分水嶺となった。
大竹は5回1/3で1失点。試合を壊さず踏ん張ったが、勝負どころのアクシデントが悔やまれる。本人は試合後、「結果的にマウンドを降りてしまい、チームに迷惑をかけた」と淡々。導火線をつけたのは自らの同点打だっただけに、無念さはひとしおだ。
ビハインドを3点に広げられても、甲子園は負けを受け入れない。8回、森下が左翼へ19号ソロを運ぶと、直後に佐藤輝が34号で続く“連弾”。一瞬で1点差となりベンチは一気に色めき立ち、スタンドのうねりがグラウンドを包み込んだ。ここで流れを切らせないのがこのチームの真骨頂だが、後続は三振と投ゴロで追加点はならず。
9回裏、阪神はマルティネスの前に小野寺が遊ゴロ、代打豊田が空振り三振。最後は近本のショートゴロで万事休す。逆転まであとひと踏ん張りが足りなかった。
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打線は随所に光を放った一方、拙攻も影を落とした。特に5回の満塁で“流れを決めるあと1本”が出なかったこと、7回の一死一二塁で上位打線が攻めあぐねた場面は悔やまれる。近本はこの日5打数無安打で、連続無安打は6試合30打席に伸びた。不運な鋭い当たりもあったが、結果を求める立場だけに重い。
それでも8回の連続アーチが示したのは、勝負どころで一気呵成に畳みかける力がチームに宿っている現実だ。森下は“重い空気を切り裂く一本”を、佐藤輝は“場を飲み込む一撃”を、満員のスタンドへ突き刺した。連弾時の甲子園の熱量は、今季一と言ってよい程だった。
マウンドでは大竹の後、島本、ネルソン、ハートウィグがゼロを並べた。8回のピンチを無失点で切ったネルソンの粘投、最終回のハートウィグの力勝負は次戦へつながる投球。守りは勝ち越しを許した6回を除き、要所で踏ん張った。
藤川監督は「やっぱり悔しいですね」と率直。最終回の追い上げにも「最後までよく戦ってくれた」と語りつつ、勝負どころの1点の重みを改めて強調した。チームはロードを終えたばかり。大観衆を背に、残るカードで再び畳みかける準備は整っている。
試合を貫いたテーマは“細部”。5回の攻守、6回の四球、8回の後1本、9回の入り。いずれも紙一重で勝敗が揺れる局面だった。数字に表れない1つの選択、1つのスイング、1つのフィールディングが、伝統の一戦の輪郭を決めた。だからこそ、この惜敗は次への燃料になる。
8月が終盤を迎える中で、優勝へ向けての準備は着々と進んでいる。甲子園の超満員の観衆が点火した熱は確かにチームの背中を押す。次からまた、強すぎるタイガースの真価を発揮してくれる事だろう。
