8月26日、横浜スタジアムで行われた阪神タイガースとDeNAベイスターズの一戦は、劇的な幕切れとなった。序盤からDeNAペースで進み、阪神は劣勢を強いられたが、試合が決したのは土壇場の9回表、しかも2アウトランナー1塁という絶体絶命の場面だった。ここで打席に立った大山悠輔が放った渾身のスイングは、ライトスタンドに吸い込まれる逆転2ランホームランとなり、敵地の空気を一瞬にして沈黙させた。スコアは最終的に阪神が3-2と逆転勝利。まさにドラマのような試合展開に、球場全体が揺れ動いた。
阪神は初回から苦しい立ち上がりを強いられた。先発の村上は2回にDeNAの和製大砲・筒香に先制ソロアーチを浴びてしまった。さらに4回には筒香の2打席連続アーチで1点を追加され、序盤で2点を追いかける展開となった。村上はそれ以外のバッターには粘り強く腕を振り、7回107球2失点で降板。阪神ベンチとしては我慢の時間が続いた。
打線もなかなか繋がりを欠いた。DeNA先発のケイは直球と変化球の絶妙なコンビネーションで阪神打線を翻弄。3回に投手の村上がボテボテの内野安打で出塁したものの、5回までに安打はこの1本のみ。最終回まではお通夜ムードが続いてしまった。
8回にはリリーフ陣が踏ん張った。2番手のハートウィグが先頭の佐野に出塁を許すものの、なんとか後続を断ち切りベンチのムードが一気に高まった。「ここから流れが来る」と選手たちが感じ取った瞬間だった。
そして迎えた9回表。DeNAのマウンドにはクローザーの入江。2点を追いかける阪神打線はあきらめなかった。先頭の近本はショートゴロに倒れるが、続く中野が内野安打。森下もセンターへポテンヒットで続き、逆転への期待が高まっていく。ここで4番・佐藤輝明がきっちり犠牲フライを打ち上げて1-2。2アウトとなるが1点差の状況で打席にはキャプテン大山が入る。敵地の大歓声を背に受けながらも、大山は静かにバットを構えた。
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そして入江が投じた初球を迷わず叩き、完璧に捉えた打球は、ライトスタンドへと高々と舞い上がった。そのままスタンドに突き刺さる逆転2ラン。大山は珍しく感情を露わにガッツポーズしながら、ダイヤモンドを力強く一周。ベンチではナインが総立ちで迎え入れ、球場の雰囲気は一変した。レフトスタンドの虎キチ達の大歓声が敵地にもかかわらず響き渡り、スタジアムは異様な熱気に包まれた。
9回裏は守護神・石井が登板。先頭の代打・ビシエドにヒットを許し、その後2アウト満塁とサヨナラの危機を迎えるが小幡のスーパープレーにも救われ、最後は神里をセンターフライに仕留めて試合終了。阪神が2点差をひっくり返す劇的勝利を収めた。スコアは3-2。大山の一振りでチームが救われる形となった。
試合後、大山はヒーローインタビューで「最後まであきらめない気持ちが大事だと思っていました。ファンの皆さんの声援が力になりました」と語り、笑顔でスタンドの阪神ファンに手を振った。その姿は頼れるクリーンナップであり、精神的支柱としての存在感を改めて示した。
阪神にとっては、多少の劣勢でも力づくでひっくり返すこのような勝ち方はチームの士気を大きく高める効果を持つ。藤川監督も「大山の一振りがチームを救った」と満面の笑みで語った。選手たちの表情からも、この勝利が単なる1勝にとどまらず、シーズン終盤戦に向けた弾みとなることが感じられた。
球団関係者は「これぞ阪神という試合。粘って粘って最後に主軸が決める。ファンの心に残るゲームになった」と語った。確かに、8月下旬のペナントレースの中で、この勝利は今季を象徴する試合のひとつとして記憶されるだろう。
横浜の空に舞い上がった逆転弾。あの瞬間、スタジアムの空気は完全に変わった。試合後もしばらく虎キチの六甲おろしが響き渡り、敵地とは思えない光景が広がった。選手たちもその声援に応えるように帽子を取って一礼し、勝利の余韻に浸った。
