26年シーズン、3度のサヨナラホームランを振り返る

26年シーズン、3度のサヨナラホームランを振り返る

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7点差をひっくり返した5・20 森下翔太が起こした奇跡の大逆転

2026年の阪神タイガースが見せてきた数々の勝利の中でも、ひときわ強烈な印象を残しているのが「サヨナラホームラン」だ。ここまで3度。しかも、そのどれもが単に最後の一振りで勝負が決まったというだけではない。そこに至るまでの展開を含めて、一本のアーチが試合そのものの物語を完成させている。

最初の一発は5月20日の中日戦だった。

甲子園で行われたこの試合は、途中まで阪神にとって悪夢のような展開だった。先発の茨木秀俊が2回4失点で降板すると、リリーフの石黒佑弥も失点。7回表を終えた時点でスコアは0-7となった。

7点差。しかも残された攻撃は3イニングしかない。

普通なら「今日は厳しい」と考えても不思議ではない状況だった。しかし、ここから試合は信じられない方向へ動き始める。

7回裏、2死満塁から坂本誠志郎が2点適時打。代打・嶋村麟士朗、中野拓夢も続き、一挙4得点を奪った。0-7が4-7。まだ3点差だったが、甲子園の空気は明らかに変わっていた。

8回にも阪神は2死満塁の好機をつくる。ここで再び坂本が適時打。この日だけで4打点を挙げる活躍を見せると、代打・木浪聖也も続き、ついに7-7。同点まで追いついた。

7回に4点、8回に3点。

わずか2イニングで7点差が消えた。

そして9回裏。先頭で打席に入ったのが森下翔太だった。

フルカウントからの6球目。高めのストレートを振り抜くと、打球は左翼席へ一直線に伸びた。今季11号は、森下にとってレギュラーシーズン初のサヨナラ本塁打。0-7から始まった大逆転劇は、森下の一振りによって8-7で完結した。

この勝利が特別だったのは、最後だけが劇的だったからではない。7点差をつけられても攻撃を終わらせなかった打線があり、坂本、嶋村、中野、木浪らが一つずつ点差を縮め、最後に森下へ打席を回した。

サヨナラ本塁打は森下の記録として残る。しかし、そこまでつないだ全員で生み出した一発でもあった。

森下自身も当時、打撃の状態に苦しんでいた。鈴木誠也から受けた助言も参考にしながら動作を小さくするなど修正を重ね、その中で飛び出した一発だった。最大7点差からの逆転勝利は阪神にとって9年ぶり。2026年最初のサヨナラ勝ちは、これ以上ないほど派手な形で刻まれた。

また森下が決めた6・30 同点弾、そして延長10回のサヨナラ弾

それから約1カ月後の6月30日。

舞台は再び甲子園。相手も同じ中日だった。そして最後に試合を決めた男も、また森下翔太だった。

ただし、5月20日とは試合の性格がまったく違った。

5月が7点差を追いかける乱打戦だったのに対し、この日は1点を争う緊迫した展開。阪神先発の才木浩人は2回に先制を許したものの、その後は立て直し、7回1失点。シーズン100奪三振にも到達する力投で試合を壊さなかった。

援護したのは、やはり森下だった。

0-1で迎えた6回。3ボール1ストライクからの一球を捉え、左翼スタンドへ18号ソロ。試合を1-1の振り出しへ戻す。

ところが8回、中日に勝ち越しを許し、再び1点を追う展開となった。

ここで今度は濱田太貴が仕事をする。2死一、三塁から二塁への適時内野安打。移籍後初打点となる一打で2-2とし、試合は延長戦へ突入した。

10回表を岩崎優が無失点で切り抜け、その裏。1死走者なしで森下に打席が回る。

相手は中日の守護神・松山晋也。

森下は2球目のフォークを振り抜いた。

打球は左翼スタンドへ。

この日2本目となる19号ソロ。試合開始から積み重なっていた緊張を一瞬で吹き飛ばす、サヨナラホームランだった。

5月20日に続き、2026年に阪神が記録した2度目のサヨナラ勝ちも森下の本塁打によるもの。しかも今回は1試合2本塁打で、最後の一本が決勝弾という主役ぶりだった。

森下は試合後、「甲子園で打つホームランが一番気持ちいい」と喜びを表現している。

この一勝には順位上の意味もあった。阪神は苦しんだ6月を劇的な白星で締め、首位に再浮上。藤川球児監督も森下の一発を「素晴らしいホームラン」と称えた。

5月20日は、仲間が7点差を消した先に森下の一発があった。6月30日は、才木が粘り、濱田が追いつき、岩崎が守り、その先に森下の一発があった。

形は違っても共通するのは、誰か一人でサヨナラの場面をつくったわけではないことだ。森下自身も後に「サヨナラというのは自分一人で取れるものではない」とチームメートへの感謝を語っている。

そしてこの一発は6月度「スカパー!サヨナラ賞」に選出された。2カ月連続で甲子園の最後をホームランで締めくくった森下。2026年の阪神にとって「最後に森下まで回せば何かが起こる」と思わせるほどの勝負強さだった。


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9回、佐藤輝明から大山悠輔へ 8・18に生まれた球団史上初の幕切れ

3度目は、それまでの2試合とはまた違う衝撃を残した。

8月18日のヤクルト戦。舞台は京セラドーム大阪だった。

阪神は1点を追ったまま9回裏を迎える。

あとアウト3つで敗戦。しかも1死となり、残されたアウトはあと2つ。

ここで打席に立った4番・佐藤輝明が、右中間へ29号ソロを叩き込んだ。

土壇場で2-2。

これだけでも十分に劇的だった。しかし、この試合には続きがあった。

次打者は5番・大山悠輔。

大山が放った打球は左翼席へ消えた。

14号ソロ。

同点ホームランの直後に、今度はサヨナラホームラン。佐藤輝と大山が2者連続でスタンドへ運び、阪神は3-2で試合をひっくり返した。

阪神が2者連続本塁打でサヨナラ勝ちを収めたのは球団史上初。長い球団の歴史の中でも一度もなかった形の決着だった。

サヨナラ弾を放った大山にとっては、2021年9月4日の巨人戦以来となる自身4本目のサヨナラ本塁打。球団では田尾安志、新庄剛志、福留孝介に並ぶ歴代3位タイとなった。

だが、この場面の凄みは大山の一発だけを切り取っても伝わりきらない。

佐藤輝が打てなければ、阪神はまだ1点を追っていた。佐藤輝が試合を終わらせない一発を放ち、その興奮が冷める間もなく大山が試合そのものを終わらせた。

「追いつく」と「勝つ」が、わずか2人の打者によって連続して起きたのである。

藤川監督は試合後、2人を「本当に素晴らしいクリーンナップ」と称賛。先発の村上頌樹も6回2失点と粘り、リリーフ陣が追加点を許さなかったからこそ、9回の大逆転につながった。

5月、6月と森下が見せてきたサヨナラ劇。そして8月、今度は佐藤輝と大山という中軸2人が、それまでとはまったく違う方法で試合をひっくり返した。

一振りで同点。

次の一振りでサヨナラ。

筋書きとして書けば出来すぎにさえ思える展開を、阪神の4番と5番が現実のものにした。

3試合に共通する「終わるまで分からない」強さ

5月20日、6月30日、8月18日。

2026年に阪神がサヨナラホームランで勝利した3試合を並べてみると、同じ「サヨナラ本塁打」という言葉ではくくれないほど、それぞれの展開は異なっている。

5月20日は0-7からの大逆転だった。

7回に4点、8回に3点を奪い、最後は森下の一発で8-7。大量ビハインドから一つずつ得点を積み上げ、最後の最後で試合をひっくり返した。

6月30日は緊迫した接戦だった。

才木が粘り、森下が一度追いつき、勝ち越されても濱田が再び追いついた。延長10回、最後は森下がその日2本目の本塁打で3-2の決着をつけた。

そして8月18日は、1点ビハインドの9回1死から佐藤輝、大山の連続本塁打。あと2アウトで敗戦という状況から、わずか2人で同点とサヨナラを完成させた。

3試合に共通しているのは、最後まで勝負が切れていないことだ。

大量リードを許しても終わらない。終盤に勝ち越されても終わらない。9回1死で負けていても終わらない。

もちろん、毎試合こんな逆転が起こるわけではない。むしろ野球では、終盤までリードされた試合の多くはそのまま終わる。だからこそ、この3試合の価値が際立つ。

そして興味深いのは、3本のサヨナラ弾だけを見ると森下2本、大山1本だが、その直前には必ず別の選手の仕事があることだ。

5月20日は坂本を中心とした打線が7点差を消した。

6月30日は才木が試合をつくり、濱田が8回に追いついた。

8月18日は佐藤輝が9回に同点弾を放った。

サヨナラホームランを打つ選手は最後の主役であっても、その一人だけではサヨナラホームランは生まれない。

森下が「自分一人で取れるものではない」と語った言葉は、2026年の3試合すべてに当てはまる。

そして同時に、最後の最後に試合を決める打者がいることも強いチームには欠かせない。

森下翔太が2度。

大山悠輔が1度。

さらに大山の一発の直前には佐藤輝明の同点弾。

阪神の中軸が、勝負どころでスタンドまで届かせる力を持っているからこそ、最後のアウトを取られるまで相手は安心できない。

0-7からでも。

延長戦でも。

9回1死、1点ビハインドでも。

野球は最後のアウトまで何が起こるか分からない――。

使い古された言葉かもしれない。しかし2026年の阪神は、その言葉を3本のサヨナラホームランによって、これ以上ないほど鮮烈な形で証明している。

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