圧倒的一強の秘密は「当たり前」の徹底と揺るがぬ投打の柱──猛虎、最速Vの内幕
9月7日、阪神タイガースは甲子園で広島相手に2‐0の快勝を収め、マジック「1」を消化して2年ぶり7度目のセ・リーグ優勝を決めた。1990年9月8日の巨人を1日上回る、2リーグ制以降最速Vという歴史的快挙が完成。優勝までの道のりには、指揮官の驚きの手腕と、チームの“当たり前”を徹底する姿勢があった。──その強さの源泉に迫ってみたい。
“当たり前のことを当たり前にできるチーム”
今季、最多貯金32まで積み上げた猛虎の強さを実感させたのは、「当たり前のプレーを当たり前にできるチーム」であるというOB・評論家の言葉だ。投手リレーの安定ぶり、送りバントや四球、盗塁などチームが意識して積み重ねた基本が、無駄のない試合運びを形作っている。リーグ優勝を達成した7日のゲームでも、先発・才木の危険球退場というハプニングにも動じず、湯浅から桐敷、大川、石井、岩崎へとつながる完封リレーはまさにその象徴だった。また、チームがリーグ最多の四球と盗塁を記録し、ヒットがなくとも得点できる野球を自然に展開できた点も大きい。体力と体調管理の徹底により、主力選手が概ねシーズンを通してフル稼働できた点も優勝の要因に挙げられる。
投打の主軸固定で繰り返される勝ちパターン
クリーンアップの固定起用が功を奏し、主力による継続的な活躍が勝ちパターンの形成へとつながった。佐藤輝明が36本塁打、89打点で二冠王へ突き進み、才木浩人が12勝・防御率1.62の投手二冠を獲得し、打線と投手陣が両輪となって噛み合った。スタメン構成は12球団最少の74通り、打順パターンは8通りという、固定された布陣から生まれる安定感が大きな強みとなった。試合の流れでは、「先制」「5回終了時リード」を確立できれば強固な勝率を誇り、先行逃げ切り型の試合運びを貫いていた。2点差以上の勝利数もリーグ最多で、安定感のある試合展開に持ち込んだのが勝因の一つだ。
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投手力の圧倒的貢献と“こぼさない”布陣
特筆すべきは投手陣の規格外の安定感。先発防御率2.23、救援防御率1.95という圧倒的な数字は、チーム全体を落ち着かせ、相手にプレッシャーを与え続けた。石井大智の48試合連続無失点記録は際立つ数字だが、彼以外にも及川、桐敷、岩崎ら他の中継ぎ陣も献身的な働きでプラスαの安心を提供。結果として野手の負担が軽減され、余裕を持ったプレーが可能になった。
負傷離脱ほぼゼロの“鉄人”揃い
12球団で唯一、主力1~5番を1年間固定できたのは阪神だけだった。巨人やヤクルト、DeNAといった他球団が主力の離脱に苦しむ中、阪神は負傷離脱者をほぼ出さず、スタメン固定化を実現できた。これは投手陣の好投がもたらした“1点取れば勝てる”という心理的な余裕と、首脳陣によるシーズンを見据えたコンディション管理が相まった結果である。2軍調整や休養日を取り入れた起用法は、選手の身体を守るだけでなく、若手起用や起動力の維持にもつながった。
藤川監督の“新監督離れ”した采配
就任1年目ながら、指導者経験のない監督が優勝を果たしたのはまさに快挙だった。戦後以降ではわずかに4例目という記録が示すように、強烈な指導者センスの発揮といえる。また、選手たちに「勝ち方」ではなく「勝たせる環境」を提供し、自分たちの野球に集中させる姿勢も印象深い。勝っても負けても感情を極力波立たせず、毎日を“フラット”に迎える姿勢が、浮沈を生まない落ち着きにつながったとも言えるだろう。
若手の台頭とベテランとの融合
シーズン中は若手のチャレンジ枠にも目が向けられ、若手選手の積極的起用がチームに新風を吹き込んだ。大ブレイクした熊谷、高寺らが出場機会を勝ち取り、1軍戦で活躍する姿を見せてくれた事は、若虎達にも自信とやり甲斐をもたらした。
抜群のクリーンナップと出塁率工夫
クリーンナップ、特に佐藤輝明、森下、大山の活躍は目を見張るものがある。佐藤が打点・本塁打でチームを引っ張り、森下が生え抜き右打者として20号&打点上位の成績、大山も勝負強さで殊勲打や決勝打を多数記録し、チームの核として存在感を発揮した。また、チームは443四球でリーグ最多。出塁率.314という数字に結果が表れ、打撃効率の高い野球で攻撃のリズムを作った。打席内のカウントを有利にする事で、出塁率が向上、快進撃を支える結果となった。
規模問わず好循環を生む“強みの連鎖”
投手の安定 → 野手の疲労軽減 → 負傷回避 → 起用の柔軟化 → 若手の台頭 → チームのレベル向上。この好循環こそが今季の猛虎を支える力だった。さらに、投打それぞれの柱がしっかりしており、固定メンバーによる安定した戦力構築も“ぶれない王者”たる姿を具現化した。
“スキのない熟したチーム”が最速Vを呼び込む
2025年の阪神タイガースは、攻守のバランスが完璧に噛み合った“熟成された”チームにまで成長した。投手陣の鉄壁さ、野手の着実な得点力、負傷者の少なさ、そして監督・首脳陣のコンディション管理……全てが“当たり前を当たり前に”できる基盤に支えられている。指揮官の藤川球児という新風も、チームに穏やかな覚悟と集中力をもたらし、結果的に今年の“最速V”を達成した。これこそが“スキのない”強さの正体であり、タイガースが迎えた黄金期の始まりかもしれない。

