甲子園に、久々に胸のすくような猛虎の大勝劇が戻ってきた。
2026年6月17日、阪神は楽天との交流戦最終戦に10-3で快勝。12安打10得点。雨で流れた振替試合、交流戦ラストゲーム、そしてリーグ戦再開を目前に控えた一戦で、猛虎打線がようやく鬱憤を晴らした。主役は、クリーンナップの殿を務める背番号3だった。
0-0の二回、先頭の佐藤輝明が中前打で出塁する。続く大山悠輔は、楽天先発・前田健太の2球目、カーブを逃さなかった。打球は左翼方向へ高く舞い上がり、そのままスタンドへ。先制の8号2ラン。今季ここまでの本塁打はすべてビジターで放っていた大山にとって、これが今季甲子園初アーチ。さらに節目の「10年連続聖地弾」となった。試合後、大山は先制点を取れたことを喜びながらも、まだ序盤だから次の1点をチーム全員で取りにいくという意思を示した。実際、その言葉通りに猛虎打線は止まらなかった。
この日の相手は、11年ぶりに日本球界へ復帰した前田健太。広島時代には阪神を苦しめてきた右腕であり、注目度の高い対戦だった。初回、福島圭音は右飛、中野拓夢は二ゴロ、森下翔太は右飛に倒れ、前田健は立ち上がりを三者凡退で切り抜けた。だが二回、佐藤輝の中前打をきっかけに大山が一発回答。続く髙寺望夢は空振り三振、坂本誠志郎は中飛、熊谷敬宥も空振り三振に倒れたが、阪神はこの2点で試合の主導権を握った。前田健は四回にも佐藤輝に右翼線への二塁打を許しながら、大山、髙寺を連続三振に仕留めるなど、5回75球、4安打2失点、6奪三振と試合は作った。それでも勝敗を分けたのは、あの大山への1球だった。前田健自身も試合後、その1球を悔やむコメントを残している。阪神にとっては、マエケン攻略というよりも、少ない好機を大山が一振りで仕留めた序盤だった。
大山は六回にも仕事を果たす。2-0で迎えた六回裏、楽天は2番手・藤原聡大を投入。阪神は中野が中前打、森下も中前打で続き、無死一、二塁。ここで佐藤輝が四球を選び、無死満塁とする。大山は3-1から右翼へ犠飛。三塁走者の中野が生還し、3-0。2回の2ランに続くこの一打で、大山はこの日3打点とした。記録上は3打数2安打3打点1本塁打。「主砲が決めた」ではなく、「5番が流れを作り切った」。藤川球児監督も、大山の久々の甲子園弾について、いいホームランだったと評価。予備日にもかかわらず集まった多くのファンの前で、いいプレーが多く出たことを喜んだ。甲子園のスタンドを沸かせる一発。犠飛での追加点。派手さと堅実さの両方を、大山がこの試合に刻み込んだ。
大竹6回0封 60球で楽天打線を封じた左腕の静かな支配
打線の大量援護を呼び込んだのは、先発・大竹耕太郎のテンポある投球だった。大竹は6回を投げて60球、被安打3、奪三振5、無四球、無失点。楽天打線に三塁を踏ませない安定感で、今季3勝目を手にした。白星は5月2日の巨人戦以来。自身の連敗を止める1勝でもあり、本人も「ここから勝ちまくっていけるように」という趣旨の前向きな言葉を残している。
初回は平良竜哉を空振り三振、佐藤直樹を右飛、辰己涼介を中飛。二回もマッカスカーを空振り三振、黒川史陽を二ゴロ、浅村栄斗を見逃し三振。三回は村林一輝を二ゴロ、石原彪を捕邪飛、前田健太を空振り三振。三回まで完全投球。派手に押し込むというより、相手打者のタイミングを外し、打たせて取り、要所で三振を奪った。
最初の走者を許したのは四回だった。先頭の平良は右飛に打ち取ったが、佐藤直に左前打を浴びる。それでも辰己を三ゴロ併殺に仕留め、わずか3人でこの回を終えた。五回は、先頭のマッカスカーを遊ゴロ。黒川に一塁内野安打、浅村に右前打を許し、一死一、三塁。この日最大のピンチだった。ここで大竹は村林を6-4-3の併殺打に仕留める。楽天側のリクエストでも判定は変わらず、無失点。二回に得た2点のリードを守り切るだけでなく、次の追加点を呼び込むためのゼロを並べた。六回は石原を中飛、代打・小森航大郎を空振り三振、平良を左飛。ここで大竹の役割は完了した。6回3安打無失点。まさに先発投手としての仕事を、過不足なく、しかも省エネで果たした。
藤川監督は試合後、大竹について、安定した投球を続けていることに触れ、チーム全体の守備や攻撃がかみ合ったことで、ようやく大竹にも運が向いたという趣旨の言葉を残した。実際、この日の大竹は援護が来るまで粘ったというより、試合の形を崩さなかった。初回から三回まで完全。四回は併殺。五回も併殺。走者を出しても得点圏で崩れない。さらに打席でも五回二死走者なしから三塁への強烈な内野安打で出塁した。結果的に得点にはつながらなかったが、投げて守って、打席でも粘る。大竹の60球には、派手さはなくとも、試合を落ち着かせる重みがあった。
スクイズ、連打、代打 後半に加速した猛虎打線
この日の阪神は、ホームランだけの勝利ではなかった。二回の大山弾で先制した後、三回は大竹が二ゴロ、福島が空振り三振、中野が二ゴロ。四回は森下が二直、佐藤輝が右二塁打、大山と髙寺が連続三振。五回は坂本が右飛、熊谷が中飛、大竹が三安、福島が空振り三振。前田健の前に追加点を奪えない時間もあった。それでも六回、投手が藤原に代わると、一気に流れをつかむ。中野の中安、森下の中安、佐藤輝の四球で無死満塁。大山の右犠飛で3点目を奪うと、一死一、三塁から髙寺がセーフティスクイズを成功させた。森下の好走塁もあり、4-0。打者走者の髙寺はアウトになったが、犠打で確実に1点を奪った。力で押すだけでなく、細かい攻撃でリードを広げたところに、この日の阪神打線の幅があった。
七回はさらに勢いが増した。楽天は3番手・宋家豪を投入。先頭の熊谷は三ゴロに倒れたが、代打・糸原健斗が左翼への二塁打で出塁する。二塁走者には植田海が代走で入った。福島は遊ゴロに倒れ、二死二塁。ここで中野が右翼への適時打を放ち、5-0。送球間に二塁へ進む抜け目のなさも見せた。続く森下は左翼への適時二塁打。6-0。中野、森下の連続適時打で、前半に抑え込まれた打線が完全に息を吹き返した。森下はこの日5打数2安打1打点。交流戦終盤の打撃状態の良さに加え、19試合ぶりの右翼守備にも問題なく対応したとされる。本人も普段の準備を強調する趣旨の言葉を残している。中軸だけでなく、2番、3番がしっかり走者を返したことが、12安打10得点の流れを決定づけた。
八回表に阪神は3点を失った。及川雅貴が黒川に中安、村林に左二塁打を浴び、一死二、三塁から石原の三塁内野安打と佐藤輝の悪送球で2点を返された。さらにドリスへ継投した後、平良の投手内野安打で6-3。嫌な空気が漂いかけた。しかし、この日の阪神はそこで止まらない。八回裏、楽天は九谷瑠にスイッチ。先頭の大山が左前打で出ると、小野寺暖が代走に送られる。髙寺は村林のファンブルで出塁し、無死一、二塁。坂本が一塁へ犠打を決め、一死二、三塁。熊谷のスクイズで1点、さらに九谷の失策と浅村の送球ミスも絡んで、阪神は一気に8-3とした。なおも代打・前川右京が左二塁打で続き、一死二、三塁。福島が右翼へ2点適時打を放ち、10-3。福島はそれまで右飛、空振り三振、空振り三振、遊ゴロと苦しんでいたが、最後の第5打席でしっかり結果を出した。先発全員が派手に打ったわけではない。それでも代打、犠打、スクイズ、相手のミスにつけ込む走塁と打撃で、10点まで積み上げた。
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交流戦6勝12敗から再出発 リーグ戦へつなぐ大勝
この勝利で阪神は交流戦を6勝12敗で終了した。順位は交流戦9位。決して満足できる数字ではない。だが、最後の最後に10得点の大勝で締めた意味は小さくない。前日の西武戦では0-1で敗れ、重苦しい空気もあった。そこから一夜明け、立石正広の登録抹消に伴い、佐藤輝が三塁、森下が右翼へ戻る形となった。スタメンは1番左翼・福島、2番二塁・中野、3番右翼・森下、4番三塁・佐藤輝、5番一塁・大山、6番中堅・髙寺、7番捕手・坂本、8番遊撃・熊谷、9番投手・大竹。佐藤輝は第1打席で中安、第2打席で右二塁打、第3打席で四球と、攻撃では3出塁。守備では八回に悪送球があり、完全な一日とはいかなかったが、久々の三塁先発で打線に厚みを戻した。本人は尊敬する前田健との初対戦について、いつも通り臨んだという趣旨の言葉を残している。
楽天側から見れば、痛い敗戦だった。前田健は5回2失点で試合を壊してはいない。だが六回以降、救援陣が踏ん張れなかった。藤原は1回2失点、宋家豪も1回2失点、九谷は1回4失点ながら自責点は0。守備の乱れが失点に直結した。テレビ解説を務めた岡田彰布オーナー付顧問からは、楽天のふがいなさに厳しい言葉も出た。阪神からすれば、相手の乱れを見逃さなかった勝利でもある。二回は佐藤輝の出塁から大山が一発。六回は無死満塁から犠飛とスクイズ。七回は代打・糸原の二塁打から中野、森下が連続適時打。八回は失策絡みの好機を逃さず、前川、福島が続いた。12安打の内訳も、単打だけではない。大山の本塁打、佐藤輝・糸原・森下・前川の二塁打があり、長打と小技が同居した。
藤川監督は交流戦を振り返り、チームの課題として取り組む必要があるという趣旨の言葉を残しつつ、DH制のある交流戦について「もう9人目を探さなくていい」とも語った。交流戦の苦しみは終わった。19日からは敵地でDeNA戦。セ・リーグの戦いに戻る。阪神はこの勝利で連敗を2で止め、リーグではヤクルトと並ぶ2位タイに浮上した。もちろん、10-3で勝ったからといって課題が消えたわけではない。八回の3失点、守備のミス、交流戦6勝12敗という現実は残る。それでも、大竹が6回無失点で勝ち、大山が甲子園今季初本塁打を含む3打点、中野と森下が終盤に適時打、髙寺と熊谷がスクイズ、福島が最後に2点打。久々に打線がつながり、甲子園の虎党に大勝を届けた一夜だった。交流戦の苦い記憶を、最後に12安打10得点で塗り替えた。藤川虎がリーグ戦再開へ向かう、その足元に確かな白星が残った。
