猛虎打線が、リーグ戦再開の一戦でいきなり牙をむいた。
6月19日、横浜スタジアムで行われたDeNA戦。阪神は初回から打線が爆発し、13安打11得点、4本塁打の猛攻で11-3と大勝した。交流戦を6勝12敗で終え、仕切り直しを迫られた再開初戦。だが、その重苦しさを吹き飛ばしたのは、初回先頭・福島圭音の一振りだった。DeNA先発・石田裕太郎の初球をとらえて右前打。ここから中野拓夢がきっちり投前犠打を決め、1死二塁と形をつくる。森下翔太が四球で歩き、1死一、二塁。ここで佐藤輝明が右翼へ先制の適時二塁打を放った。阪神が1点を先取すると、なおも1死二、三塁から大山悠輔の遊ゴロの間に三走・森下が生還。さらに髙寺望夢が右翼へ適時二塁打を運び、3点目を奪った。圧巻は2死二塁からの坂本誠志郎。外角球を逆方向へはじき返すと、打球は右翼席へ飛び込む今季1号2ラン。スコアは一気に5-0となった。
初回の攻撃は、ただ長打が続いただけではない。福島が出て、中野が送り、森下が選び、佐藤が返す。大山が最低限で走者をかえし、髙寺が続き、坂本が仕上げた。石田裕は立ち上がりから流れを止められず、阪神はわずか1イニングで試合の主導権を完全に握った。佐藤は先制打について、初回に先制できたことを喜び、チャンスで結果を出せたことを前向きに受け止めた。藤川虎にとって、この初回5点は単なる大量点ではなかった。交流戦で沈んだ空気を一掃し、再スタートの合図を鳴らす5点だった。
4発13安打―大山2打席連発、森下単独トップ弾、坂本1号
DeNAも反撃した。2回に宮﨑敏郎が右翼へ6号ソロを放ち、3回には蝦名達夫の死球、牧秀悟の中二塁打で1死二、三塁とし、佐野恵太が右翼へ適時打。右翼・森下の後逸も絡んで2者が生還し、阪神のリードは5-3まで縮まった。
だが、この日の阪神打線は追い上げられても止まらない。5回、1死から中野が中前打で出塁し、森下が死球。1死一、二塁で佐藤が二塁への適時内野安打を放ち、6点目を挙げた。なお1死一、三塁から大山が左犠飛。阪神は7-3と再びリードを広げた。試合を決定づけたのは終盤のアーチ攻勢だった。8回、先頭の大山が宮城滝太から左翼席へ9号ソロ。これで8-3。続く髙寺、坂本は空振り三振に倒れたが、熊谷敬宥が右前打、代打・前川右京が死球で出塁し、最後は福島が空振り三振に倒れた。それでも、阪神の勢いは9回にさらに加速する。中野が四球で出塁すると、森下の打席で暴投があり走者は三塁へ。森下は坂本裕哉から左中間へ16号2ランをたたき込み、10-3。これで本塁打数はリーグ単独トップに立った。さらに佐藤が右飛に倒れた後、大山が再び左翼席へ10号ソロ。2打席連発で、自身9年連続2桁本塁打に到達した。
初回の坂本1号2ラン、8回の大山9号、9回の森下16号、そして大山10号。計4本塁打で11点を奪った一戦は、まさに猛虎打線の力を見せつける内容だった。坂本は自身の一発について、珍しい逆方向への本塁打に驚きながらも懸命に走ったと振り返った。大山は4打数3安打4打点2本塁打。佐藤は5打数2安打2打点。森下は3打数1安打2打点で、四球と死球でも出塁した。福島、中野、髙寺、坂本、熊谷にも安打が出て、先発野手全員安打。単なる長打祭りではなく、つなぎ、選球、犠打、犠飛、内野安打が絡み合った、厚みのある11得点だった。
村上、序盤3失点から崩れず―女房役・坂本が語った“村上さまさま”
大量援護を受けた先発・村上頌樹は、7回を投げて110球、5安打3失点、8奪三振。2回に宮﨑のソロ、3回に佐野の適時打と失策絡みで2点を失ったが、そこから崩れなかったことが大きい。初回は蝦名を見逃し三振、牧を左飛、佐野を中飛に仕留めて三者凡退。2回は筒香嘉智を中飛に打ち取った後、宮﨑に一発を浴び、勝又温史に中前打を許したが、宮下朝陽を右飛、戸柱恭孝を二ゴロに抑えた。3回は石田裕を見逃し三振に仕留めた後、蝦名に死球、牧に中二塁打、佐野に右前適時打を許して5-3とされた。なお1死二塁から筒香を二ゴロ、宮﨑を四球で歩かせたが、2死一、三塁で勝又を二ゴロ。ここで同点、逆転の流れを断ったことが試合の分岐点になった。
4回には宮下を空振り三振、戸柱に中二塁打を許したものの、石田裕のバントを三振に仕留め、蝦名も空振り三振。5回は牧を三直、佐野を中飛、筒香を二ゴロ。6回は宮﨑を空振り三振、勝又を中飛、宮下を見逃し三振。7回は戸柱を左飛、代打・度会隆輝を右邪飛、蝦名を空振り三振に斬った。4回以降は得点を許さず、DeNA打線に流れを渡さなかった。捕手としてリードした坂本は、試合後に村上への感謝を口にし、序盤の失点後にズルズルいかなかった点を評価した。評論家の齊藤明雄氏も、村上の投球について、ボール自体の力を認めたうえで、勝負どころで甘くなる場面を課題として指摘した。内容は完全無欠ではなかった。それでも、援護をもらった先発が7回まで投げ切り、リードを守って救援陣につなぐ。これこそ大勝の裏側にある勝ち投手の仕事だった。
8回は工藤泰成が登板し、先頭の牧に右前打を許したが、佐野を見逃し三振、筒香を二ゴロ併殺に仕留めて無失点。9回は石黒佑弥が宮﨑を二ゴロ、勝又を右飛、宮下を中飛に打ち取り、わずか8球で試合を締めた。11点の派手な勝利の中で、村上、工藤、石黒の継投もまた、勝ち切るための確かな土台になっていた。
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苦い交流戦を越えて首位再浮上――藤川虎、11点勝ちに込めた再発進
この1勝の意味は、スコア以上に大きかった。阪神は交流戦を6勝12敗で終え、苦しい時間を過ごした。だが、リーグ戦再開初戦でDeNAを相手に11-3。しかも、初回5点、5回2点、8回1点、9回3点と、序盤、中盤、終盤のすべてで得点を重ねた。4本塁打が飛び出し、先発野手全員安打も記録した。投げては村上が7回3失点で6勝目。チーム全体で、嫌な流れを断ち切るには十分すぎる内容だった。
藤川監督は交流戦中、選手に対して明るく試合に向かうことを促していた。再開初戦では多くを語らずとも、選手たちはその意図をプレーで示した。福島は先頭で出塁し、中野は送り、佐藤は先制打と5回の追加点、森下は9回の2ラン、大山は2本塁打を含む4打点、坂本は攻守で存在感を放った。中でも大山の2打席連続アーチは、勝負の終盤で試合を完全に決める一撃だった。8回の9号ソロで5点差、9回の10号ソロで8点差。派手な本塁打の中にも、初回の遊ゴロ、5回の犠飛という打点があり、4打点すべてがチームに必要な場面で生まれた。佐藤の先制打は両リーグ最多となる決勝打の記録にもつながり、主軸の頼もしさを改めて示した。森下は16号で本塁打争いのトップに立ち、打線の破壊力を象徴する存在となった。坂本の1号は5点目を奪う一発で、DeNAの立ち上がりを一気にのみ込んだ。福島の初球安打、中野の犠打と出塁、熊谷の右前打、髙寺の初回適時二塁打も、11得点の中で確かな役割を果たした。
巨人が敗れ、阪神はヤクルトと並んで首位に再浮上。横浜スタジアムの夜に刻まれた11-3の大勝は、ただの快勝ではない。沈んだ交流戦から立ち上がり、もう一度ペナントレースの中心へ戻るための再発進だった。4発13安打、11得点。猛虎が見せたのは、力任せの大勝ではなく、役割を果たす打線と崩れない投手陣がかみ合った、チームとしての大勝利だった。

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