【また一発に沈んだ虎 2戦9被弾、首位陥落の重い敗戦】
虎戦士達がまた、敵地の空に白球を見上げた。阪神は10日、みずほPayPayドームでソフトバンクと対戦し、2-6で逆転負け。前夜9日の10-4に続き、2日連続でソフトバンクの一発攻勢にのみ込まれた。この日は柳田悠岐に8号ソロ、近藤健介に11号ソロ、12号2ランを浴びて計3被弾。前日の6被弾と合わせ、2試合で実に9本塁打を献上した。先に主導権を握りながら、終わってみれば4点差。数字以上に重い、力で押し切られた敗戦だった。
試合は阪神にとって理想的な入りにも見えた。初回は立石正広、中野拓夢、森下翔太が三者凡退。裏の守りでは先発・大竹耕太郎が1死から周東佑京に中前打を許し、近藤の二ゴロで2死二塁。栗原陵矢、柳田に連続四球を与えて満塁のピンチを招いたが、廣瀨隆太を三ゴロに仕留め、無失点で切り抜けた。古巣の本拠地での凱旋登板。立ち上がりの苦境をしのいだ左腕に、直後の2回、打線が援護した。
2回表、先頭の佐藤輝明は空振り三振に倒れたが、大山悠輔が四球で出塁。続く前川右京が泳ぎながらも右前へ運び、1死一、三塁と好機を広げた。岡城快生は空振り三振で2死となったが、ここで8番・伏見寅威が仕事を果たした。カウント3-1から中堅へ先制の2点適時二塁打。虎党の待つ左中間方向ではなく、きっちり中堅にはじき返す勝負強い一打で、阪神が2点を先行した。熊谷敬宥は右飛に倒れたものの、試合の流れは一度、阪神に傾いた。
3回にも阪神は先頭の立石が二塁打で出塁。中野が送りバントを決め、1死三塁。森下が四球を選び、一、三塁まで攻め立てた。しかし、ここで佐藤輝は遊飛、大山は空振り三振。追加点を奪えなかった。この場面が、後から重くのしかかった。球界OBの評論でも、連敗の中でクリーンアップの差、佐藤輝と大山の状態を不安視する見方が出た。序盤に突き放すチャンスで中軸が沈黙したことは、単なる1イニングの無得点では済まなかった。
大竹、古巣本拠地で痛恨2被弾 柳田、近藤に流れを持っていかれる
2点リードをもらった大竹は、2回を川瀬晃の遊ゴロ、海野隆司の空振り三振、庄子雄大の三ゴロで三者凡退。3回も正木智也を三ゴロ、周東を二ゴロ、近藤を二ゴロに仕留めた。テンポも戻り、阪神が試合を運べる展開に見えた。だが、ソフトバンク打線は一振りで空気を変える。4回1死、柳田にカウント1-0から右翼席へ8号ソロを浴びた。2-1。反撃の号砲は、あまりにも豪快だった。
それでも、ここで止めていればまだ阪神の流れだった。廣瀨を二飛に打ち取り2死。だが、川瀬に右翼への二塁打、海野に内野安打を許して一、三塁。続く庄子の打球を二塁・中野が後逸し、ソフトバンクが同点に追いついた。記録は中野の失策。今季初失策が、よりによってリードを守りたい場面で出た。2-2。柳田の一発だけで終わるはずだったイニングが、ミスを絡めて振り出しに戻った。
5回表、阪神は熊谷の中前打で無死一塁を作った。だが、立石がワンバウンドの球に空振り三振、中野も空振り三振。森下は右飛に倒れ、走者を進めることすらできなかった。その裏、試合はまた一発で動いた。1死走者なしから近藤。カウント2-2から大竹の球を右翼方向へ運び、勝ち越しの11号ソロ。ソフトバンクが3-2と試合をひっくり返した。近藤は前日も本塁打を放っており、2試合連続弾。この時点で、阪神ベンチには嫌な空気が漂った。
大竹は5回92球、5安打3失点、自責2。四球3、被本塁打2。試合後には「何のために投げているか。やっぱり勝つため」と悔しさをにじませた。内容すべてが悪かったわけではない。本人も攻め方には一定の手応えを口にした。しかし、勝敗を分けたのは長打だった。4回の柳田、5回の近藤。元チームメートでもある相手の主軸に、いずれもソロとはいえ、ゲームの潮目を変える一発を許した。凱旋登板の舞台で刻まれたのは、白星ではなく、今季5敗目だった。
消えた反撃ムード 七回のリクエスト、藤川監督が初退場
阪神打線は中盤以降、松本晴から継投に入ったソフトバンク投手陣を崩し切れなかった。6回表は佐藤輝が二ゴロ、大山が中飛。前川が四球を選んだが、岡城は投飛に倒れた。6回裏は2番手・畠世周が登板。廣瀨を見逃し三振に仕留めた後、川瀬に四球を与えたが、海野を三ゴロ、庄子を空振り三振。1点差のまま終盤へ入った。まだ阪神にはチャンスがあった。
7回表、ソフトバンクはオスナを投入。先頭の伏見は遊ゴロに倒れたが、熊谷が中前打で出塁した。1死一塁。ここで立石の打席中、熊谷が二盗を試みた。判定はアウト。熊谷はベンチにアピールし、藤川球児監督がリクエストを要求したが、リプレー検証後も判定は変わらなかった。直後、指揮官は審判に詰め寄り、退場処分を受けた。藤川監督にとって、NPBでは選手時代を通じても初の退場。リクエスト後の異議は認められておらず、敵地は一気に騒然となった。
試合後、藤川監督は「勝負ですから」と語った。冷静さを失っただけの行動ではなく、全力で戦う選手を束ねる立場として黙っていられなかったという思いがにじんだ場面だった。熊谷自身も、際どいプレーだったとの感触を口にした。だが、結果はアウト。立石は内角の直球を打って三直に倒れ、7回表の攻撃は無得点に終わった。反撃ムードを作りかけた場面で、走者を失い、監督も退場。阪神にとっては、流れを呼び込むどころか、逆に重苦しさが増す攻撃になった。
その直後の7回裏が、試合を決定づけた。3番手・及川雅貴がマウンドへ。先頭の正木に四球を与えると、代走・牧原大成。周東がきっちり送りバントを決め、1死二塁。ここで近藤に対し、カウント0-1から右翼席へ2ランを浴びた。スコアは5-2。近藤のこの日2本目、12号2ランだった。さらに栗原に死球、柳田に左前打を許して一、三塁。廣瀨の右犠飛で6点目を失った。川瀬にも四球を与え、海野を空振り三振に仕留めるまで、阪神バッテリーは完全にソフトバンク打線の圧力に押し込まれた。
Tiktok動画はこちら
3本塁打に屈した現実 反撃も及ばず
阪神にも材料がなかったわけではない。伏見は2回に先制の2点二塁打を放ち、バットで試合を動かした。前川は2回に右前打を放って好機を作り、昇格後の存在感を示した。熊谷は5回、7回と中前打を放って2安打。8回には中野が中前打で出塁し、森下は中飛に倒れたものの、佐藤輝が中前打を放った。佐藤輝にとっては13打席ぶりの安打。本人も「最後まで前を向いてプレーをすることが大事」と受け止めた一打だった。
だが、打線としてはつながらなかった。8回表、無死一塁から森下が中飛。1死一塁で佐藤輝が中前打を放ち、一、二塁としたものの、大山が併殺打。最大の反撃機は一瞬でしぼんだ。9回は前川が三飛、代打・髙寺望夢が左飛、代打・嶋村麟士朗が空振り三振。2回の伏見の一打以降、阪神は最後まで本塁を踏めなかった。7安打を放ちながら2得点。ソフトバンクは9安打で6得点。効率の差、そして長打力の差が、そのままスコアに表れた。
ソフトバンクは近藤が5打数3安打3打点、2本塁打。5回の勝ち越しソロ、7回の2ラン、8回の右前打と、試合の核心をすべてさらった。近藤は自身の打撃について「しっかりタイミングが取れている証拠」と笑みを見せた。柳田も4回に反撃の8号ソロ、7回には左前打で追加点の流れを作った。王貞治球団会長は、近藤の2打席連発を含む3発の勝利に「華々しかったね」と評した。まさに、ソフトバンクにとっては花火大会。阪神にとっては、前夜から続く悪夢の延長だった。
阪神はこの敗戦で2連敗。前日10失点、この日6失点。2戦合計16失点、9被弾。交流戦でソフトバンクにはまたも勝ち越せず、重い現実を突きつけられた。マスメディアからは2戦9被弾、首位陥落、交流戦優勝消滅まで含めた“三重苦”が強調され、評論の視点でもバッテリーの攻め方や中軸の状態に厳しい目が向けられた。藤川監督は試合後、「また前向きに明日、戦う」と話した。怒りも、悔しさも、飲み込んで次へ進むしかない。だが、同じ相手に同じように長打で沈む敗戦を繰り返した事実は、簡単には消えない。虎がもう一度立て直すには、被弾の連鎖を止め、序盤の好機を確実に仕留めること。それ以外にない。

https://shorturl.fm/BgK57