勝つべくして勝つ。そんな磐石の試合運びを見せ続けてくれた23年シーズン。タイガースは見事に38年ぶり日本一という大目標を達成してくれました。連覇の期待がかかる来季も、土台のしっかりしたチーム作りを行い、期待以上のパフォーマンスを見せてくれることでしょう!
岡田阪神はリーグ連覇できるのか…話題の“タイガース本”著者が明かす「こりゃ、強いぞ」と断言できる根拠
(デイリー新潮より)
“阪神の面倒くさい部分”
2023年4月、私は6冊目の著書となる『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』(光文社新書)を上梓させて頂いた。内容は、その題そのままです。その時点でも、2005年以来、リーグ優勝から遠ざかり、1985年にまで遡る日本一にいたっては、1935年に球団発足という戦前から脈々と続く長き歴史の中で、その1回しかなかった。
日本一翌年の1986年から、その次のリーグ制覇となる2003年の前年、2002年までの計17シーズンで、最下位10度を含む、Bクラス15度。1990年代には「ダメ虎」「大阪の恥」とまで呼ばれたことすらあった。
ちょっと勝てば、選手はちやほやされる。スポーツ紙は、ほぼ毎日1面で、劇的な勝利でもしようものなら、1面から2面、3面は当然、4面あたりにもあふれ、最終面と1面とが連結してのカラー面で大展開。
打てばヒーローだが、その翌日にチャンスで凡退すれば、いきなり非難の的。上げては、すぐに落とされる……のエキセントリックな環境で、阪神で主力を張り続け、成績を出し続ける困難さは、それこそ計り知れない重圧だ。そういう“阪神の面倒くさい部分”を描かせてもらった。
なのに、そうした種々の問題点をあぶり出した本を出した途端に38年ぶりの日本一。完全に“逆張り”したかのような題名は、皮肉どころか、もはや私の見る目のなさの証明です。
本を書いた球団が“3連覇”
仕事抜きでは阪神ファン。だから、嬉しいんです。でも、この題の本、書いたときに、なにも日本一にならんでええやん……。
つい、ぼやきたくなる。それが阪神タイガースなのです。
だから? なのだろうか。
「『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや』の著者である喜瀬さんだからこそ、あえてお聞きしたいのですが、来年の阪神をどう見ていらっしゃいますか?」
今回、デイリー新潮の編集サイドから、こんな要望が届いた。しかもこの質問、だいぶ“含み”があるようです(笑)。
私の著書『ホークス3軍はなぜ成功したのか』(光文社新書)は2020年4月に出版されたのですが、その年、ソフトバンクは4年連続日本一を達成。続いて『オリックスはなぜ優勝できたのか』(光文社新書)は2021年12月出版ですが、当初のテーマは、四半世紀も優勝から遠ざかっているオリックスの“なぜ”を追う内容。ところが、取材を進めていた2021年夏を過ぎた頃から「これは優勝かも」と取材内容を修正、原稿の締め切り直前に優勝が決定すると、増ページの許可まで出て、どんとボリュームアップした次第です。
そして、今回の阪神です。つまり、書いた球団が“3連覇”しているのです。そりゃ、もちろん偶然のタイミングなのですが、取材先では、こうした背景を知る複数の球団関係者から「次はウチ、書いて下さい」「次はどこですか?」と聞かれることもたびたびです。
ちなみに、2024年は「中日」をテーマに、7冊目の著書を出版する予定です。立浪和義監督にも取材する機会がありまして、この“流れ”を説明しますと「それは、ありがとうございます」。
最下位からのV奪回、やる気満々でした(笑)
岡田監督のチーム作りの根本は、全く変わっていない
前振りが、長くなりました。
「中日V」かと思わせて? ちょっとなんですが、2024年の阪神、私の見立てでは「連覇濃厚」です。
阪神・岡田彰布監督がオリックス監督を務めたその3年間、番記者だった経験を踏まえ、2023年の阪神快進撃のさなか、よく「何がオリックス時代と変わったのですか?」というご質問を頂きました。そうした“変化の分析”を本にしませんかという、ありがたいオファーもありました。
ただ、いつもこう答えていました。
岡田監督のチーム作りの根本は、全く変わっていません――。
オリックス監督就任直後の2009年秋季キャンプで「こんなええの、おったんか」と素質を見いだし、4番に据えたのが2010年の本塁打王・T―岡田。先発投手陣の頭数が足りない台所事情でありながら「平野はリリーフよ」と、ブルペン強化の切り札として平野佳寿をリリーバーに転向させ、2009年のシーズン後半にはストッパーを務めていた金子千尋も「なんで、一番完投能力のあるピッチャーが、後ろをやっとるんよ?」と先発の柱に“再転換”したのも、すべて岡田監督の手腕です。
チームの中心を固め、さらに主力のポジションも固定し、個々の役割を明確にする。2023年の阪神には、1番・近本光司、不動の4番・大山悠輔、5番・佐藤輝明ら、その“岡田の考え”を体現できるだけの『力』を備えたタレントがそろっていました。中野拓夢を遊撃から二塁へコンバートするなど適性を見抜き、新たな役割を与えるというのも、オリックス時代の平野のケースと同様です。
ここ数年は“進化”が続く気配
また、過去2年は1軍未勝利だった村上頌樹、ソフトバンクから現役ドラフトで移籍の大竹耕太郎といった、過去の実績がほぼないともいえる“未知の戦力”を抜擢。村上は最優秀防御率、新人王にセ・リーグMVP、大竹も自身初の2桁勝利となる12勝。こうして「信じて使い続ける」のも、T―岡田のケースと同じです。
この『岡田式』のチーム作りを、オリックス時代もやろうとしたのですが、それだけの「力と経験」を積ませることができず、指揮官の狙いが浸透し切れずに、3年連続Bクラスという屈辱の結果に終わったわけです。一方、2023年の阪神には、選手個々の力が高いレベルでそろい、そこに岡田監督の指揮や考え方がズバッとはまった結果でもあるのです。
だから、2024年、さらに阪神は進化します。
日本一という結果によって、選手たちはますます、岡田監督の考えや意図を理解できれば「勝てる」という確信が生まれたはずなのです。連覇を目指す2024年も、近本と大山が30歳、佐藤輝は25歳。投手陣でも村上と才木浩人が26歳、今季10勝の左腕・伊藤将司も28歳。その年齢を見ても、ちょうどええ頃合い。主力陣は現状維持どころか、ますますパワーアップする期待大です。どうも、ここ数年間、その『進化』は続く気配すら漂っています。
こりゃ、強いぞ――。
『阪神タイガースは、なんで連覇できたんやろか?』
その分析を書いて下さいという“新オファー”が来ても困らぬよう、2024年、私も取材にいそしみたいと思います。
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