9月のスタートを、首位・阪神が白星で飾った。
1日、神宮で行われたヤクルトとの19回戦。髙橋が6回1/3を6安打2失点にまとめ、打線も計12安打。五回以降に6得点を奪った。6-2で快勝し、今季最長タイの5連勝を飾った。優勝へのマジックは「20」。ヤクルト戦の今季成績も13勝6敗となり、4年連続のカード勝ち越しを決めた。
ただし、最終スコアほど一方的な立ち上がりではなかった。初回、髙橋は長岡を左飛、赤羽を右飛、サンタナを見逃し三振に仕留め、3人で片付けた。サンタナの打席ではファウルが球審の右腕に当たり、髙橋がマウンドを降りて様子を確かめる場面もあった。立ち上がりは無失点でも、二回には最初の難所が来る。
先頭・山田に中前打、続く増田にも左前打を許し、古賀の犠打で1死二、三塁。ここで岩田を一ゴロに打ち取り、三走・山田を本塁との間で挟んで2死とした。なお二、三塁で阪神ベンチは内山を申告敬遠。満塁として投手・吉村との勝負を選び、髙橋が空振り三振に仕留めて無失点で切り抜けた。
四回にも似たような展開になった。古賀に中前打を許し、岩田の遊ゴロで2死二塁。ここでも内山を歩かせ、吉村と勝負する形をつくった。吉村への初球は左翼ポール際へ大きなファウルとなり、神宮がどよめく。直後、安藤優也投手チーフコーチがマウンドへ。藤川球児監督は試合後、このタイミングについて、いったん間を空けて配球などを確認する意図だったと説明している。髙橋本人も油断していたわけではないと振り返り、仕切り直した後は吉村を空振り三振。二回、四回とピンチを、いずれもゼロで封じた。
三回も1死から赤羽に8球粘られて四球を与えたものの、サンタナを右飛、山田を中飛。五回は長岡を見逃し三振、赤羽を空振り三振、サンタナを一直、六回も山田を三ゴロ、増田を二ゴロ、古賀を三ゴロと、2イニング連続の三者凡退。味方が点を取る時間帯と重なるように、髙橋の投球も安定していった。
藤川監督は2度の申告敬遠について、作戦が成立するのは、その後を投手や守備陣がきっちり抑えてこそだと選手を評価した。評論家の西山秀二氏も、髙橋について球威のある球を低めに集め、球持ちの良さによって打者に低い変化球まで振らせていた点を高く評価。伏見とのバッテリーが髙橋の持ち味を引き出したことが、序盤の我慢比べを制する土台になった。
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均衡を破った9番・髙橋 自援護のV打から佐藤輝が31号
阪神打線も序盤は吉村を攻め切れなかった。初回は近本が先頭で右翼への二塁打を放ちながら、中野が左飛、森下が遊飛、佐藤輝が中飛で無得点。二回も大山が先頭で左前打を放ったが、髙寺が4-6-3の併殺に倒れた。四回には中野が左前打で出塁した直後、森下が5-4-3の併殺。走者は出すものの、あと一歩が届かない展開が続いた。
流れを変えたのは五回だった。先頭の大山が右前打、髙寺が四球を選び、無死一、二塁。ところが伏見、元山が連続三振に倒れ、好機は一気に2死までしぼんだ。
ここで打席に入ったのが9番・髙橋だ。カウント0-1から吉村の直球を右前へはじき返し、二走・大山を迎え入れた。投手戦の均衡を、自らのバットで破る先制適時打。髙橋にとっては2021年以来5年ぶりの打点だった。右前へ抜けた一打で大山が生還し、一、三塁。続く近本は中飛に倒れたため、この回の得点は1点だけだったが、それまで4イニング続いた「0」を消した意味は小さくない。先発投手が自分の援護点を自分でたたき出した。
この一打が、停滞していた打線の呼び水になった。六回、先頭の中野が一ゴロで倒れた後、1死から森下が中前打。続く4番・佐藤輝が吉村の初球フォークをすくい上げた。高く上がった打球は左中間スタンドへ。31号2ランで3-0とリードを広げた。
佐藤輝は「いい感じで捉えられた」と手応えを口にし、追加点が欲しい場面での一発を喜んだ。これで本塁打は森下と並ぶ31本。試合後時点で打率.320、86打点となり、シーズン終盤の個人タイトル争いでも存在感を強めた。通算500打点にもあと2と迫ったが、この日の一発で何より大きかったのは、1点差の緊張感を一振りで3点差へ変えたことだった。
四回までの吉村は、走者を背負っても併殺などでしのぎ、阪神に得点を許さなかった。五回に髙橋の適時打で先制を許し、六回には佐藤輝の2ランでリードを広げられた。それだけに、六回の2ランで1-0が一気に3-0となった意味は大きい。髙橋が投げ、髙橋が打って先制し、森下がつなぎ、佐藤輝が返す。投打の中心がきれいにつながった。
一方、森下にとっても大きな一戦だった。8月29日の巨人戦で左前腕部に死球を受け、30日はスタメンを外れていたが、この日は「3番・右翼」で復帰。六回の中前打に加え、七回には12球粘って四球を選び、九回には右翼線二塁打。4打数2安打1四球と結果を残した。藤川監督も「非常に集中力高くやってくれています」と評価。森下自身も「戻らないといけない」と語り、試合に出る以上は全力でやるだけという姿勢を示した。
近本が粘って決めた4号3ラン 高橋が再びバットで魅せる
3-0で迎えた七回、阪神はさらに畳みかけた。先頭の伏見は左飛に倒れたが、1死から元山が右前打。続く髙橋も中前打でつなぎ、一、二塁とした。五回の先制打に続く、この日2本目の安打。投手が1試合2安打を記録するのは髙橋自身6年ぶりで、今度は得点を生み出す走者として打線の中心に入った。
ここで1番・近本が打席へ。2球で追い込まれながらも、ファウルで粘って簡単には終わらない。2-2から8球目の内角高め直球を振り抜くと、打球は右翼スタンドへ飛び込んだ。4号3ラン。3-0から6-0へ、試合を大きく決定づける一撃だった。
初回には右翼二塁打を放っており、近本は4打数2安打3打点1四球。吉村から阪神は七回までに10安打を浴びせ、右腕を7回130球、10安打2本塁打、6失点で降板させた。
近本は本塁打の打席について、前の打者がつないでくれたため、自分も後ろにつなぐ意識で入ったと振り返った。ホームランだけを狙うのではなく、追い込まれてから粘った末の8球目。その結果が3ランになったところに、この日の阪神打線の強さが凝縮されていた。この日の2安打でシーズン安打数は77。残り25試合で100安打まで23本となり、入団から8年連続100安打という球団記録も視界に入った。それでも本人が口にしたのは、自身の数字よりチームの得点につながったことだった。
五回は大山、髙寺がつくった好機を髙橋がものにし、六回は森下の一打を佐藤輝が本塁打につなげ、七回は元山と髙橋の連打を近本が3ランにした。得点した3イニングはいずれも、出塁した走者を後続が返す形だった。単発の長打だけに頼った6点ではない。前半に吉村の前で得点できなくても、打線が途切れず攻め続けたことで、五、六、七回と「1点、2点、3点」を重ねていった。
評論家の西山氏は、五回無死一、二塁で伏見に送りバントではなく打たせた采配にも注目した。髙橋ほどの投手が先発する試合なら「まず1点」を取りにいく選択もある中、強攻したことを打線へのメッセージとみて、その後の佐藤輝の一発などにつながった可能性を指摘した。これは評論家としての見立てだが、少なくともベンチが消極策一辺倒ではなかったことは、この日の攻撃からも見て取れる。
大量リード後も攻撃は止まらない。八回は大山がこの日3本目となる左前打で出塁し、髙寺がきっちり投前犠打。伏見の一ゴロで2死三塁となり、元山も四球を選んだ。得点には結びつかなかったが、九回も近本が四球。盗塁を試みてアウトになった後、中野が遊飛、2死から森下が右翼線二塁打を放った。佐藤輝の二直で得点こそならなかったものの、6点を取り終えた後も走者を出し続け、最終的に12安打を記録した。
岡留が2球火消し、髙橋13勝でM20へ
6点の援護を受けた髙橋だったが、最後まで簡単には終わらなかった。七回、先頭の岩田に投手強襲の内野安打、続く内山にも遊撃内野安打を許す。代打・伊藤を遊ゴロに打ち取って1死二、三塁としたものの、長岡の遊ゴロを元山がファンブルし、三走が生還。さらに1死一、二塁から赤羽に中前適時打を浴び、2点目を失った。
ここで藤川監督は髙橋から岡留へスイッチ。なお1死一、二塁だったが、岡留はサンタナを遊ゴロ併殺に仕留め、一気に攻撃を終わらせた。わずか2球で2アウトを奪う火消しだった。
八回は及川が武岡を空振り三振、増田を投ゴロ、古賀を右飛。九回は木下が岩田に内野安打を許したものの、内山を一邪飛、代打・西村を空振り三振、最後は長岡を一直に打ち取った。木下は試合後、九回を任されたことを「ちょっと楽しみにしてたっす」と振り返った。4点差とはいえ、神宮での最終回を任された右腕が落ち着いて締め、リードをそのまま勝利へ運んだ。
岡留は2/3回を無失点。及川は12球で三者凡退、木下は15球で1安打1奪三振無失点。髙橋が残した走者を岡留が即座に消し、八、九回を2人が無失点でつないだことで、ヤクルトの反撃は七回の2点だけに終わった。
髙橋の最終成績は6回1/3、109球、打者29人、6安打、5奪三振、3四球、2失点。これで今季13勝2敗となり、勝利数は両リーグ単独トップ。最高勝率のタイトル条件となる13勝にも到達した。打っても3打数2安打1打点。
ヒーローインタビューでは、投球内容について「全然ダメだった」と厳しく自己評価する一方、先制打には「めっちゃ良い感触」と笑顔も見せた。白星についても野手やリリーフ陣への感謝を忘れなかった。今季通算では19試合で13勝2敗、防御率1.90。132回2/3を投げて123奪三振、勝率は.867。本人の自己評価とは対照的に、数字は先発陣の柱として積み上げてきた仕事をはっきり示している。
藤川監督は髙橋について、伏見とのコンビで低めにボールを集めながら粘ったことを評価した。実際、ヤクルトは二回、四回と得点圏まで走者を進めながら先制できず、六回までゼロ。ヤクルトの池山監督も試合後、二回の好機で先取点を奪えなかったことを痛かったと振り返っている。試合の分岐点は、阪神が大量点を奪った場面だけではない。序盤に相手の先制機を消し続けたことが、五回以降の攻勢へつながった。
阪神はこれで68勝49敗1分け。今季最長タイの5連勝で、9月初戦を快勝した。2位・巨人も勝ったためゲーム差は4.5のままだが、マジックは21から20へ。
投げては髙橋、打っても髙橋。そこへ佐藤輝、近本の一発、復帰した森下のマルチ安打、岡留以下の継投がかみ合った。序盤のピンチでは申告敬遠も含めて1点を防ぎ、均衡を破ると五回から3イニング連続得点。七回に追い上げられても、継投でそこで流れを止めた。
先発、主軸、ベンチワーク、救援陣がそれぞれの仕事を果たした一戦だった。連覇を目指す阪神が、勝負の9月を力強く踏み出した。
