東京ドームで行われた巨人-阪神、伝統の一戦は、序盤の静かな立ち上がりからは想像もできない大逆転劇となった。阪神は4回表にまずリズムを作る。先発した巨人の山﨑投手から、大山悠輔が放った先制の2ランホームランが、猛虎打線の勢いを象徴するように右翼ポール際へ飛び込んだ。これが今季7号となる一撃で、打者としての存在感、そしてチームの勢いを押し上げる働きを見せた。まさにタイガースが主導権を握ったかのような立ち上がりだった。スタンドはもちろん、選手もコーチも“よっしゃ!”という感覚を抱いたに違いない。
5回には阪神の攻撃が続き、大山はこの回にもヒットを放ち、四球も選んで全打席での出塁を達成。主力としての信頼感と粘り強さを数字にも表した。ここでの安打、フォアボールは単なる数字以上のものがあり、打線の中軸としてしっかり機能してくれた。
リードは4点。しかし、セの伝統の一戦における「リードは魔の入り口」、その言葉通り、6回裏に流れが変わる。巨人は先発の伊藤将司を打ち崩せずにいたが、6回に入り代打で登場した坂本勇人が、ツーシームを捉え、スタンド上段まで届く逆転の3ランホームラン。球場の空気もひときわ熱を帯び、あっという間に4点差がわずか1点差に。虎ファンには凍りつき、ジャイアンツ側には歓喜が広がった。
さらに7回裏、巨人は続けて代打から中山礼都を起用。こちらも2ランホームランで同点に追いつくという、まさにエネルギー溢れる攻撃を見せた。阪神ベンチはたまらずマウンドへ向かい、不穏な空気へと変わっていく。代打起用という選択が二度にわたり的中したこの展開は、試合のターニングポイントであった。
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巨人は8回裏にも1点を追加し、ついに勝ち越しに成功。送りバントでチャンスを広げた丸の機転、犠牲フライで勝利への執念を見せる。阪神は再び追い込まれたが、9回の反撃も及ばず。試合は5対6で巨人が劇的な逆転勝ち──金縛りにかかったかのようなタイガースは痛恨の敗戦を受け入れるしかなかった。
この試合時間は3時間17分、観客は42337人。阪神の先発・伊藤将司は5回2/3を投げ、4安打4失点(自責3)という内容。一方の勝ち投手となった巨人の大勢は1回を無失点に抑え、マルティネスがセーブを記録した。リードを保てず逆転されたタイガースの悔しさは、個々の表情やベンチの沈黙からも伺えた。
試合全体を通して言えば、タイガースにとっては序盤に理想的な展開を作り、打線の勢いも見られた。しかし、一発攻勢に弱いという懸念は、まさにそのまま現実となった。巨人の代打2人─坂本、そして中山─が放った逆転弾は、勝負の怖さを十分に見せつけた。タイガースにとっては痛恨、しかしプロ野球の醍醐味が凝縮された一戦でもあった。
大山は試合後、「あの一発があったからこその流れだった。先制できたのは良かったけれど…悔しさを次に生かしたい」と振り返り、敗戦の悔しさを押し殺す姿勢を見せた。対する巨人の指揮官は、ベンチワークと代打起用の精度を称え、「選手たちが最後まであきらめなかった」と胸を撫で下ろしていた。
この一戦は、阪神が一時は主導権を握ったにもかかわらず、巨人が鮮やかに逆転した、劇的な内容となった。打線のつながり、投手の粘り、代打の包囲──すべてが短時間に凝縮された熱闘は、東京ドームを訪れたファンひとりひとりの記憶に長く刻まれるであろう。そして、勝敗の紙一重を思い知らされたタイガースは、この敗戦をどのように力に変えるのかが、今後の鍵となる。
