CSファイナスS開幕!“主役”が甲子園で取るべき勝ち筋とは

CSファイナスS開幕!“主役”が甲子園で取るべき勝ち筋とは

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いよいよ10月15日、クライマックスシリーズ・ファイナルステージが甲子園で火ぶたを切る。対戦相手は1stステージを勝ち上がった横浜DeNAベイスターズ。阪神はアドバンテージの1勝を背に、ペナントの強さを“短期決戦の勝ち方”へと変換する必要がある。相手は勢いに乗る挑戦者、こちらは地の利と総合力を備える王者。シリーズは「立ち上がり」「継投」「一発と小技の共存」という三つの軸で揺れるはずだ。

ファイナルSの初戦で阪神が最初にやるべきことは、いつもの“投手力の再現”だ。村上頌樹が先発すれば、持ち味はストライク先行と緩急使い分けるピッチング。DeNAは牧秀悟、筒香嘉智、佐野恵太という長打とコンタクトを併せ持つ中軸で押し込んでくる。村上が恐れるべきは被弾そのものよりも「牧や筒香の前の無駄な走者」だ。四球や先頭打者出塁からの長打だけは避けたい。配球の焦点は、牧のインサイド攻めをどこまで見せ球に使えるか、外の変化でストライクを拾えるか。甲子園の外野の広さは、低め徹底の勇気を後押しする。初回をゼロで帰ってくる。それだけでスタンドの空気は阪神側に傾く。

一方のDeNAの柱は左腕・東克樹だ。球威、制球、投球設計の三拍子が揃い、球数を使わせないと終盤までスイスイと運ばれてしまう。阪神打線が勝機を掴むためには、なんといっても「出塁」である。近本光司は追い込まれてからもファウルで粘れる。中野拓夢は一球で送るだけが役割ではなく、東の最初のゾーン設定を測る“物差し”になれる打者だ。ここで見切った球筋を、3番・森下、4番・佐藤輝が仕留める。芯でとらえるスイングと同じ比重で大事なのは、東に初回から15~20球を投げさせること。四球でも内野安打でも構わない。球数が積み上がれば、6回手前でベイスターズの継投が動く。そこが阪神の勝ち筋へ直結する“入口”だ。

そして短期決戦を決めるのは、往々にして派手なホームランではなく、均衡を破る単打一本だ。森下翔太はまさにその役を担える。カウント不利からの対応力、逆方向への強い打球、ランナーがいる場面での犠飛――チームにとって“得点の再現性”を上げる打者である。4番に入る佐藤輝明は、甘く入る変化球、あるいはインサイドの速球を見逃さないこと。四球も含めて塁上を動かし、代走とバント、小技で一歩前へ出る。CSは1点が試合の空気全体を変えるゲームだ。

気になる阪神救援陣の鍵は「いつ」「誰から」投入するかだ。先発が5回を投げ切った段階で、相手の打順・左右・ベンチの代打カードを逆算して継投の順番を決める。6回の頭に一番の山を作らせないこと。たとえば牧―筒香に対しては、低めに集められる右の強いボールか、外へ逃がす左のシンカー・スライダー系でゴロを打たせたい。回跨ぎの是非は“次の回の先頭打者”で判断し、無理な跨ぎで四球→長打の最悪パターンだけは避ける。9回の抑えを固定することも大事だが、このシリーズに限っていえば「8回の男」の役割が勝敗を分ける。そこを最も強い投手で蓋をする。9回は流れで締める。その柔軟性こそ短期決戦の正解だ。

DeNAは長打力だけのチームではない。関根大気の嫌らしい粘り、二死からの佐野の単打、筒香の四球選球力は、投手の球数と守備の負担をじわりと上げてくる。阪神がすべきは、内外野のポジショニングを打者ごとに詰め、ワンプレーで流れを渡さないことだ。内野は前で弾かず深すぎない位置からの一歩目、外野は長打ラインを切る角度。守備でマイナスを作らなければ、打線の“1点を取りに行く野球”が活きる。走塁では、三塁コーチの腕の振りとスタートの質を徹底し、外野が捕ってからホームに返す“甲子園の距離”を最大限使う。セーフティ気味のプッシュバント、初球のエンドラン、内角さばきのゴロ進塁――細部の積み重ねが、強打線の圧に対する最良の防波堤になる。

仮にDeNAが東克樹の試合を“取りに来る”計算であれば、阪神は二つの視点が要る。第一に、東が投げる試合をロースコアゲームで進ませないこと。最低でも1点差でリードを奪い、相手のリリーフを早出しさせる消耗戦に持ち込む。第二に、東以外の投手からしっかり追加点を奪う事。初球から振りにいくのではなく、球種・高さ・配球の“地図”を一巡で描き、二巡目から主軸で刺す。シリーズ全体を俯瞰すれば、阪神は「東の試合で負けない」「東以外の試合で勝ち切る」という現実解に収斂する。先に3勝へ届く道は、その足し算の精度にかかっている。

打では大山悠輔がシリーズの温度を決める。初戦の第一打席、見送り三振でも空振り三振でもない“強い凡打”を打てるかが肝だ。芯でとらえたファウル、ファールで稼ぐ球数、低めを一度見切る我慢──それが二打席目の決定打へとつながる。佐藤輝明はポイントを前に置きすぎない。引っ張りの長打はもちろん、逆方向へのライナーを一本打てばDeNAはストレートの割合を上げざるを得ず、以後の変化球が甘くなる。森下翔太には土壇場での勝負強さを発揮したい。一打でシリーズを動かす打者だ。近本光司と中野拓夢は、出塁と初球攻撃のメリハリで東のテンポに楔を打ち込む。守では坂本誠志郎のリードが要。牧・筒香の長所を踏まえ、内角の見せ球と外角の見せ球を分ける“見せ方の二段構え”が効いてくる。

 

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DeNAの牧はコンタクトの質が高く、甘い球を逃さない。配球は真っ直ぐでストライクを取りにいく構図を捨て、ボール先行でも低めに徹する勇気を持つ。筒香には高め速球の見せ球と、外の変化でバレない“同トンネル”を通すこと。四球を恐れてストライクを欲しがると、一振りで持っていかれる。佐野は二死からの単打製造機でもある。そこを許しても致命傷にしないため、次打者の初球に注意し、走者一塁での長打だけは消す守備位置と配球を噛み合わせたい。関根の粘りには“決め球の決め切り”を。三球勝負の決断力が、球数セーブと終盤の継投余力を生む。

このシリーズ、阪神の最大の武器はなんといっても『甲子園球場』だ。外野フェンスまでの距離、ファウルゾーンの広さ、打球が失速する重さ、そして何よりスタンドの空気。先頭打者の出塁、チャンスを逃したとしても、その直後のゼロ封、外野スタンド付近への大飛球――いずれもスタンドの呼吸がプレーに干渉する。阪神はその空気を“先に”つかむべきだ。マウンドへ向かう一歩、打席へ入るルーティン、守備位置に着く速度。細部の所作が「準備できているチーム」の印象を作り、相手ベンチにプレッシャーをかける。短期決戦では、その圧力が得点差となり得る。

勝ちゲームの終盤像は明確にしておきたい。7回までにリードしていれば、8回、9回をゼロ封リレーで締める。これが阪神の“勝ちの形”だ。相手の中軸と8回の頭の相性が悪ければ、回またぎではなく“最強カード”をためらわず切る。 9回はシンプルに。四球で走者を出さない、先頭打者に変化球から入らない、そしてバッテリーが首を振り過ぎない。迷いは棒球を生む。采配は大胆に、投球は保守的に。これが甲子園で最後のアウトを取り切る特効薬である。

レギュラーシーズンで示した投打のバランス、失点の少なさ、守備と走塁の丁寧さ――そのすべてを、この短期決戦に圧縮して再現するだけでいい。相手は勢いを持つ挑戦者だが、シリーズは勢いだけでは越えられない設計がある。東の試合で負けないこと。東以外の試合で勝ち切ること。キーマンは大山悠輔、佐藤輝明、森下翔太、近本光司、中野拓夢、そして村上頌樹。これだけ役者が揃えば、勝ち切るための準備は万全であるはずだ。あとはこの主役たちが甲子園のフィールドで、ペナントレースで磨いた“王者の野球”を演じ切るだけだ。4万超の虎キチの声が背中を押す。勝ち方を知るチームの秋が、ここから始まる。

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