ドラフト1位・立石正広、甲子園に吹く“新世代の風”

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10月17日、東京都内で行われたプロ野球ドラフト会議。静寂を切り裂いたのは、藤川球児監督が力強く引いた一本のくじだった。白地に赤い文字で「交渉権確定」。その瞬間、会場の空気が一変し、阪神関係者の拍手と歓声が一斉に弾けた。ドラフト1位、立石正広。走攻守三拍子そろった外野手で、今年の高校・大学・社会人を通じた“即戦力ナンバーワン野手”との呼び声も高かった逸材だ。藤川監督は壇上で深呼吸を一つ置き、笑顔を浮かべながら言った。「縁があった。うちのチームにぴったりの選手です」。

球団関係者によると、阪神は最初から立石を「唯一の1位候補」としてリストアップしていた。スカウト会議の段階で「打撃フォームの再現性が高く、選球眼が良い」「プロ1年目から1軍で代打・代走・守備固めいずれでも貢献できる」と高く評価。特に藤川監督が重視する“走塁の積極性”と“試合を動かす一歩目の速さ”を兼ね備えた点が決め手となった。監督は「スピードと意識の高さ。この2つがある選手は、どんな時代でも生き残る」と語る。

立石は右投げ左打ちの外野手。大学リーグでは通算打率.328、本塁打11、盗塁27。打席での粘りと広角に打ち分ける技術が持ち味で、3年時にはリーグMVPを獲得。守備では50メートル5秒8の俊足を生かした広い守備範囲を誇り、センターだけでなくライト・レフトもこなせる万能型だ。特に昨秋の全国大会では、強肩から繰り出したノーバウンド送球で二塁走者を刺した場面が映像として全国に流れ、一躍注目を浴びた。

マスコミ各紙は「阪神に新たな風。若虎の象徴になる可能性」と評し、立石のキャラクター性にも触れている。練習では常に笑顔を絶やさず、取材の受け答えも冷静で的確。チームのムードメーカーとなれる気質があるという。大学監督も「勝ち気だが決して自分勝手ではない。空気を読んで動けるタイプ」と語るなど、阪神が求める“チームを活かす選手像”と一致する。

技術面においては「立石の最大の魅力はバットコントロール。芯を外しても飛ばせるラインドライブ系の打球が多く、プロの投手の速球にもついていける」と評し、阪神の課題だった“左打者の厚み不足”を補える存在とみている。また、「守備では近本の後継候補として、将来のセンター定着を見据えられる逸材」と位置づけた。

 

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また、関係者は「藤川監督が求めるのは“瞬間で勝つチーム”。立石のスピードと判断力は、代走・守備固めといった局面でも使える。来季開幕1軍スタートも十分ある」とし、「新しい阪神の象徴になる可能性」として期待を寄せる。藤川監督が“勝ちにいく若手”を積極的に登用する姿勢を明確にしている点からも、ルーキーイヤーからチャンスが与えられることは間違いない。

立石の特筆すべきは、打席での間の取り方。緊張する場面ほど間を置けるメンタルがある。高校時代から“無表情で勝負する男”と呼ばれてきた。精神面の成熟度が高く、短期決戦やビジターの大歓声の中でも崩れにくいタイプと分析している。これは甲子園のプレッシャーを考えれば、何より重要な資質だろう。

藤川監督は会見の中で「立石は、阪神の未来を背負う存在になる。近本、中野のように“自分で勝負を決められる選手”がもう一人加わることで、打線が立体的になる」と明言した。チームの未来像としては、1番近本、2番中野、3番森下、4番佐藤輝、5番大山に続く“6番立石”という構想が早くも囁かれている。足でチャンスを広げ、粘りで得点を奪う姿勢が今季の藤川阪神の野球と噛み合う。

立石自身も、入団会見で「藤川監督の下で成長したい。1年目から1軍のグラウンドに立ち、ファンに名前を覚えてもらえる選手になりたい」と抱負を語った。言葉の端々に“即戦力”としての自覚がにじむ。すでに藤川監督はキャンプでの起用プランを明かしており、「まずは外野全ポジションを守らせる。その中で最も輝く場所を見つけたい」と語っている。阪神では近本がチームの中心として確立しているが、立石がレフトまたはライトを守る可能性も十分ある。

また、守備走塁コーチ陣も早くも惚れ込んでいる。大学時代の映像を確認した担当コーチは「トップスピードに乗るのが早い。走塁判断も正確。内野ゴロでも常に全力疾走する姿勢がある」と高く評価。藤川監督の理想とする“意識の高い守備・走塁”を体現する存在として、練習初日から重点的に見られるだろう。

もちろん、課題もある。大学レベルでは内角の速球への対応に波があり、ボールゾーンの変化球を追ってしまう場面もあった。プロの一線級投手を相手にすれば、より厳しい配球が待っている。それでも、阪神の育成方針は明快だ。焦らせず、長所を伸ばしながら試合経験を積ませる。藤川監督は「打撃で悩んでも、守備と走塁で試合を助けられる選手になればいい」と語り、“総合力で一軍に残る野球”を教え込む構えだ。

阪神の現状では外野陣、内野陣共に層が厚いが、世代交代の波は確実に来る。藤川監督が描く「スピードと守備で勝つチーム」を実現する上で、立石の加入は大きなピースになるだろう。将来的には近本の後継センター、あるいはリードオフマン候補としての期待が高い。

今年の阪神はリーグ制覇、そしてクライマックスシリーズ突破を果たした。だが藤川監督は「常勝には“次”を見据える目が必要」と語る。立石正広はまさにその“次”を担う存在。スピード・意識・冷静さを兼ね備えた新世代の象徴として、来季のキャンプから注目を浴びるのは間違いない。ファンが心待ちにする“新しい風”が、もうすぐ甲子園を吹き抜ける。

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