被安打13、被本塁打6で悪夢の10失点大敗・・・

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悪夢の幕開けは、攻撃の失敗からだった。阪神は2026年6月9日、みずほPayPayドームでソフトバンクと対戦し、4-10で大敗した。数字だけを見れば、6本塁打を浴びた投手陣の炎上が最大の敗因であることは疑いようがない。ただ、この夜の流れを決定づけた場面をたどれば、初回表の攻撃を避けては通れない。

 阪神は先頭のドラフト1位・立石正広が中前打で出塁した。続く中野拓夢がきっちり投前犠打を決めて1死二塁。3番・森下翔太も右前打で続き、1死一、三塁と先制機をつくった。立ち上がりのソフトバンク先発・大津亮介をいきなり捉えかけた場面だった。しかし、4番・佐藤輝明が空振り三振。5番・大山悠輔も中飛に倒れ、絶好機は無得点に終わった。

 初回の攻防については、評論家の視点でも「4番が打つか打たないか」が明暗を分けたとされた。阪神は立石、森下の安打で好機をつくりながら、中軸が返せなかった。一方のソフトバンクは、その裏に4番・栗原陵矢が仕留めた。まさに同じ「4番」の差が、序盤の空気を決定的に変えた。

 その裏、阪神先発の才木浩人は1死から周東佑京に左翼線二塁打を浴びた。近藤健介を投ゴロに打ち取り、2死二塁。ここで栗原を迎えた。試合前から警戒すべき相手であり、パ・リーグ屈指の長打力を誇る打者。その栗原に右翼席へ18号2ランを運ばれた。阪神が先制機を逃した直後、ソフトバンクは一振りで2点を奪った。

 この一発で、試合の景色は変わった。阪神にとっては、攻め切れなかった直後の被弾。ソフトバンクにとっては、好投手・才木から主砲が先制弾を放ったことで、ベンチにも球場にも一気に勢いが広がった。初回表に先に圧をかけたのは阪神だった。だが、スコアボードに刻まれたのは「0」と「2」。この差が、以後の展開を重たくした。

 阪神打線は2回、髙寺望夢が見逃し三振に倒れた後、前川右京が四球で出塁した。しかし梅野隆太郎は三直、熊谷敬宥は遊ゴロ。走者を出しながらも、反撃の糸口にはならなかった。3回は立石が三ゴロ、中野が中飛、森下が空振り三振。4回も佐藤輝が中飛、大山が空振り三振、髙寺が二ゴロ。初回に見せた鋭さは、大津の多彩な変化球の前にしぼんでいった。

 大津はチェンジアップ、スライダー、シュート、フォークなどを操る技巧派右腕。その引き出しの多さに阪神打線は的を絞り切れなかった。初回の好機を逃した後は、5回2死まで無得点。結果的に、初回の1死一、三塁で一本が出なかったことが、最後まで響いた。大差の試合であっても、勝負の分岐点は序盤にあった。

才木3被弾、椎葉も3被弾 5イニング連続6発の歴史的屈辱

 この日の阪神投手陣は、ソフトバンク打線の一発攻勢を止められなかった。浴びた本塁打は計6本。初回から5回まで毎回被弾し、5イニング連続被本塁打は球団史上初の屈辱となった。1試合6被弾は2010年8月1日の中日戦以来16年ぶり。ただし、その試合は阪神が8-7で勝利していた。6本以上を浴びて敗れたとなると、7本を打たれて1-15で敗れた2000年8月31日の巨人戦以来、実に26年ぶりの惨敗劇だった。

 先発の才木は、2日連続のスライド登板だった。7日、8日の楽天戦が中止となり、登板予定がずれ込んで迎えたこの一戦。しかし本人は、その影響を言い訳にしなかった。「ただ日がずれただけなので、難しいとかはない。スライドしたっていうのはただの言い訳」と受け止めた。それでも結果は厳しかった。3回50球、打者14人に対し5安打、3被本塁打、4奪三振、無四球、5失点。3敗目を喫した。

 初回に栗原へ先制2ランを浴びた才木は、2回にも長打を許した。1死走者なしから、野村勇に左越えソロを被弾。野村はこの日、久々のスタメン起用に一発回答する形で、今季1号を初球で仕留めた。昨年の日本シリーズでも阪神に痛打を浴びせた打者に、またしても一発を許した格好となった。

 3回も才木は踏ん張れなかった。先頭の正木智也を投ゴロに仕留めたが、周東に右前打を許す。近藤は空振り三振に取って2死一塁。ここで再び栗原を迎えた。初回に一発を浴びた相手に、今度も右翼席へ19号2ラン。栗原には2打席連続被弾となった。才木はこの時点で3回5失点。4回のマウンドには上がらず、早期降板となった。

 流れを止める役目を託されたのは2番手・椎葉剛だった。だが、悪夢は終わらなかった。4回1死から野村に左越えソロを浴びる。野村にとっても2打席連発。阪神にとっては4イニング連続被弾となった。5回にはさらに傷口が広がる。先頭の周東が右前打で出塁し、二盗に成功。無死二塁から近藤に右中間へ10号2ランを浴びた。続く栗原には左翼線二塁打。なお無死二塁から牧原大成にも右翼席へ1号2ランを運ばれた。

 椎葉は2回を投げて30球、打者12人、6安打、3被本塁打、1奪三振、5失点。才木と椎葉がそれぞれ3本塁打を浴びる形となり、5回終了時点でスコアは2-10。阪神投手陣は、5回までの前半だけで6本塁打、10失点を喫した。

 藤川球児監督は、才木の状態を問われても「状態どうこうはないと思います」と言い切った。カウントを取りにいくところ、勝負にいくところでどうアウトを取るか。それがプロである理由であり、言い訳を探してはいけない、という厳しい言葉だった。また、ソフトバンク打線に「気持ち良く相手にスイングをされている」とも表現し、それをどう崩すかはバッテリーでやっていかなければならないと課題を示した。

 ソフトバンク側から見れば、初回の栗原、2回の野村、3回の栗原、4回の野村、5回の近藤、そして牧原大。まさに息つく間もないアーチ攻勢だった。栗原は3打数3安打4打点、2本塁打。野村も2本塁打。近藤、牧原大にも一発が飛び出し、チームは13安打10得点。王貞治球団会長が「ホームラン攻勢だったね」と振り返ったのも当然の内容だった。

立石2ラン、森下15号 大敗の中で見せた若虎と主軸の反発力

 試合は大差で進んだが、阪神打線が完全に沈黙したわけではない。反撃の口火を切ったのは、ルーキーの立石だった。0-6で迎えた5回表、2死走者なしから熊谷が中前打で出塁。ここで1番・立石が打席に入った。大津の球を捉えると、打球は左翼席へ。2号2ランで、阪神がようやくスコアを動かした。

 立石は初回にも中前打を放っており、この日は3打数2安打2打点1四球。初回の先頭打者安打、5回の2ラン、8回の四球と、1番として3度出塁した。チームが大敗する中でも、存在感は確かに残した。評論家の見方でも、立石は少しずつ1軍の投手に慣れてきていると評価された。大津のチェンジアップを捉えた本塁打は、本人にとっても今後につながる一打になった。

 6回には森下が意地を見せた。無死走者なしから右翼席へ15号ソロ。前の打席まで、初回は右前打、3回は空振り三振。第3打席で大津を捉えた。森下はこの日4打数3安打2打点。初回の好機を演出し、6回には本塁打、8回には適時打を放った。大敗の中で、主軸として最後までバットで抵抗した。

 5回の立石2ランで2-6とした直後、阪神はその裏に4点を失った。ここが試合の反撃ムードを断ち切る最大の痛手だった。立石の一発で少しでも流れを引き寄せたいところで、近藤の2ラン、牧原大の2ランを浴びて2-10。せっかくの反撃弾が、すぐにかき消された。

 それでも8回、阪神はもう一度得点した。無死から立石が四球で出塁し、中野も四球を選ぶ。無死一、二塁で森下が中前適時打。立石が生還し、4点目を奪った。ただし、この場面で中野は走塁死となり、なお続く好機は広がらなかった。佐藤輝は空振り三振、大山は遊ゴロ。得点は1点にとどまった。

 佐藤輝は4打数無安打3三振。初回1死一、三塁では空振り三振、6回、8回も空振り三振だった。大山も4打数無安打。初回は中飛、4回は空振り三振、6回は右飛、8回は遊ゴロ。大差の原因は投手陣の被弾にあるが、序盤の好機で中軸が返せなかった点も、試合の流れを考えれば重い。

 前川は2打数無安打ながら2四球。2回と9回に出塁したが、得点にはつながらなかった。梅野は三直、一ゴロの2打数無安打で、7回からは嶋村がマスクをかぶった。嶋村は7回に左飛、9回に空振り三振。熊谷は4打数1安打で、5回に立石の2ランにつながる中前打を放った。

 阪神は6安打4得点。立石と森下で計5安打4打点を挙げた一方、佐藤輝、大山、髙寺、梅野、嶋村は無安打。打線全体としては、大津から5安打3点を奪ったものの、決定的な場面で畳みかけることはできなかった。大津は6回85球、5安打2本塁打、7奪三振、1四球、3失点で今季7勝目。阪神にとっては、序盤の好機を逃し、中盤の反撃もすぐに失点で押し戻される苦しい展開だった。

 

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言い訳なし、切り替えしかない 交流戦終盤へ突きつけられた課題

 藤川監督は試合後、投手陣の状態そのものではなく、勝負どころでアウトを取る力に言及した。カウントを整えにいくところで長打を浴びている。相手に気持ちよくスイングされている。それをどう崩すか。言葉は冷静だったが、内容は厳しかった。

 才木も責任を背負った。2日連続スライド登板を言い訳にはしない姿勢を見せ、「今年はチームにすごく迷惑をかけている。いい結果を出せるようにしっかりやっていきたい」と受け止めた。火曜日のマウンドを任される意味も理解しているからこそ、3回5失点、3被弾という結果は重い。エース級の役割を期待される右腕にとって、簡単に流せる一敗ではない。

 椎葉にとっても厳しい登板となった。4回から流れを止めるはずが、野村、近藤、牧原大に被弾。本人も「打たれてるんで、良くはない」と悔やんだ。4回の野村の一発で6点目、5回の近藤と牧原大の2ランで一気に10点目。中継ぎとして試合を立て直す役割を果たせなかった。

 一方で、門別啓人と工藤泰成は試合後半を無失点でつないだ。門別は6回から2イニングを投げ、1安打、1四球、2奪三振、無失点。6回には周東に一塁内野安打を許し、大山の悪送球で二塁まで進まれたが、近藤を空振り三振に仕留めた。7回は栗原に四球を与えたものの、牧原大を二ゴロ、廣瀨隆太を空振り三振、野村を遊飛。暴投で三塁まで進まれながらもゼロで切り抜けた。8回の工藤も、海野隆司を右飛、庄子雄大を一ゴロ、正木に中前打を許した後、代打・川村友斗を空振り三振に仕留めた。

 大敗の中でも、立石と森下の打撃、門別と工藤の無失点リレーは数少ない好材料だった。立石は先頭打者として出塁し、反撃の2ランも放った。森下は15号ソロを含む3安打2打点。チームが押し込まれる中で、バットで意地を示した。藤川監督も立石については、次の日に向けてしっかりやってほしいと前を向かせた。

 ただ、チームとしての大敗の事実は消えない。5回まで毎回被弾。6本塁打を許して10失点。しかも、才木と椎葉がそれぞれ3発ずつ浴びた。打たれた相手も、栗原に2本、野村に2本、近藤、牧原大に各1本。主砲だけでなく、スタメン起用された野村にも、牧原大にも、広く長打を許した。バッテリーが相手打線の狙いを外せず、球場の空気を一方的に持っていかれた。

 ソフトバンクは交流戦首位を走るチームらしく、序盤から長打で畳みかけた。阪神はその勢いを止める術を持てなかった。初回の逸機、直後の先制被弾、毎回のように飛び出したアーチ。試合の中で反撃の瞬間はあったが、流れを変えるところまでは届かなかった。

 4-10。数字以上に、内容の厳しい敗戦だった。だが、シーズンは続く。交流戦の敵地6連戦はまだ始まったばかり。藤川監督が示した通り、言い訳を探す段階ではない。カウント球で痛打される課題、勝負どころでの配球、長打を浴びた後の立て直し。すべてを次に持ち越さず、次の試合でどう修正するかが問われる。

 歴史的屈辱の夜を、ただの大敗で終わらせるのか。それとも、投手陣再整備のきっかけに変えるのか。阪神に突きつけられたのは、このままでは永遠に日本一にはなれない、という事実だった。

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