下村の力投見殺し・・・14三振の拙攻で惨敗

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スコアはわずか1点差。それでも、攻撃内容を見れば惨敗と言わざるを得なかった。阪神は10日、甲子園でヤクルトと対戦し、1-2で逆転負け。前夜の巨人戦では12安打10得点と打線が爆発したが、一夜明けた聖地ではヤクルト先発・高橋奎二を攻略できず、散発5安打、14三振。得点は初回に森下翔太が放った適時二塁打による1点だけだった。連勝は「2」で止まり、対ヤクルトは3連敗。カード初戦も3カード連続の黒星となった。

立ち上がりだけを見れば、阪神のペースだった。初回、先頭の岡城快生は遊ゴロに倒れたが、1死から中野拓夢が遊撃への内野安打で出塁。続く森下が2ボール2ストライクから右翼方向へ適時二塁打を放ち、中野が一気に生還した。森下にとっては3年連続となるシーズン20二塁打到達。プロ2度目の先発マウンドに上がった下村海翔へ、幸先よく1点をプレゼントした。

しかし、虎打線の得点シーンはこれが最初で最後だった。なおも1死二塁と追加点の好機だったが、4番・佐藤輝明、5番・大山悠輔が連続空振り三振。ここで高橋を一気に攻め切れなかったことが、結果的に重くのしかかった。

二回は前川右京が二飛、坂本誠志郎が見逃し三振、熊谷敬宥が空振り三振の三者凡退。三回も下村が右邪飛、岡城が三ゴロ、中野が空振り三振に倒れた。四回は森下が一邪飛、佐藤輝が左飛。2死から大山が左翼への二塁打を放ち、ようやく初回以来の走者を得点圏へ進めたが、前川が空振り三振。高橋の前にあと一本が出なかった。

そして五回には、打線の停滞を象徴するような攻撃となった。坂本、熊谷、下村が3者連続の空振り三振。高橋はこの時点で早くも9奪三振を数えた。六回も岡城が遊ゴロ、中野が二ゴロ、森下が左飛。わずか7球で三者凡退に終わり、ヤクルトへ完全に流れを渡した。

七回には先頭の佐藤輝が中前打。阪神にとって四回の大山以来、3イニングぶりの安打だった。しかし大山は空振り三振、前川は二ゴロ併殺打。無死一塁が一瞬で無得点に終わった。ヤクルト・高橋は7回99球、4安打1失点、無四球、10奪三振。阪神打線は毎回となる10三振を奪われ、完全に封じ込まれた。

八回は代わった清水の前に代打・福島圭音が空振り三振。それでも熊谷が左前打を放ち、続けて二盗を決めて2死二塁とした。ところが代打・高寺望夢は遊ゴロ、さらに代打・木浪聖也も空振り三振。ここでもホームは遠かった。

結局、この日の阪神の5安打は、初回の中野の遊撃内野安打と森下の適時二塁打、四回の大山の左翼二塁打、七回の佐藤輝の中前打、八回の熊谷の左前打だけ。5本の安打は四つのイニングに分散し、複数安打が出たのは初回だけだった。5安打のうち長打は2本あったが、適時打は森下の一打だけ。好機をつくっても後続が続かず、ヤクルト投手陣に計14三振を喫した。

一方のヤクルトは10安打。阪神の倍の安打を放ちながら得点は2点だった。阪神投手陣が踏ん張り続けただけに、野手陣にはあまりにも重い「1」の数字がスコアボードに残った。

2失策と野選・・・無安打で同点、下村の初勝利消える

試合が大きく動いたのは五回だった。しかもヤクルトは、この回に一本の安打も打っていない。それでも阪神は、自らのミスによって1点のリードを失った。

先頭の松下歩叶が放った三塁へのゴロ。処理した佐藤輝の一塁送球がそれ、悪送球となった。無死二塁。続く長岡秀樹の右飛で松下は三塁へ進み、1死三塁となる。

ここで打席には投手の高橋。遊撃へのゴロを熊谷がファンブルし、打者走者を生かしてしまった。これで1死一、三塁。さらに下村の暴投で一塁走者が二塁へ進み、1死二、三塁とピンチは拡大した。

続く山野辺翔の遊ゴロを熊谷が処理し、本塁へ送球。いったんはアウトが宣告された。だがヤクルト側がリクエストを要求。リプレー検証の結果、判定はセーフへと覆り、松下が生還した。記録は野選。ヤクルトはこの回、無安打のまま1-1の同点に追いついた。

それでも下村は崩れなかった。なお1死一、三塁で岩田幸宏を二ゴロに打ち取り、三塁走者の高橋を本塁で封殺。続く古賀優大も遊ゴロに仕留め、最少失点で切り抜けた。失策、失策、暴投、野選。若い投手にとっては集中力を切らしても不思議ではない展開だったが、表情を大きく変えることなく後続を断った。

佐藤輝が悪送球の後にマウンドへ向かうと、下村は笑顔で応じた。熊谷の失策後にも動揺を見せず、本塁でのアウト判定がリクエストによってセーフへ覆っても、目の前の打者との勝負に集中した。

この粘りを、解説者の下柳剛氏も高く評価した。守備のミスが重なった中で1点にとどめた下村について「立派」とし、先輩野手が取り返すべきだとの考えを示した。坂本も試合後、五回を1失点でしのいだことを「大きかった」と評価している。

一方、日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏は、逆転負けの大きな要因として五回の二つの失策を挙げた。特に佐藤輝の悪送球について、打球を捕ってから一塁へ送球するまで十分な余裕があったからこそ、下半身を使って丁寧に投げる必要があったと指摘。現役時代の鳥谷敬氏を例に挙げ、余裕のあるプレーほど慎重さが必要だと論じた。

熊谷のファンブルについても難しい打球ではあったが、守備に定評のある選手のミスはチームに与える影響も小さくないと分析。さらに、経験の少ない下村が先発している以上、打線による援護だけでなく、守備でも支える必要があると厳しく指摘した。

試合後、佐藤輝は「しっかり反省して、また明日も頑張る。ただそれだけです」と言葉を残した。熊谷も「下村に申し訳なかった」と率直に口にした。

それでも、誰より苦しいはずの下村は味方を責めなかった。前回登板でも助けられた場面があり、この日も周囲に救われた場面があったと振り返り、その上で五回を無失点に抑えたかったという思いを語った。プロ初勝利の権利が、自身の責任ではない形で消えても、その矛先を仲間には向けなかった。

五回のヤクルトの攻撃は0安打1得点。阪神に記録されたのは2失策。スコアブックに刻まれたこの数字こそ、この日の敗戦を象徴していた。

 

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下村6回自責1の力投も初黒星 悔やまれる赤羽への一球

結果だけを見れば6回6安打2失点。だが自責点はわずか1だった。下村は93球を投げ、4奪三振、無四球。プロ2度目の先発で堂々たる投球を見せながら、味方打線の援護に恵まれず、プロ初黒星を喫した。

初回は岩田を二ゴロ、古賀を左飛、増田珠を見逃し三振。森下から1点の援護をもらった直後の二回は、先頭のサンタナを三ゴロ、赤羽由紘を空振り三振に仕留めた後、松下と長岡に連打を許して2死一、二塁とされたが、投手の高橋を空振り三振。三回は山野辺を三ゴロ、岩田を中飛、古賀を二ゴロと三者凡退。四回も増田を右飛、サンタナを空振り三振、赤羽を三飛と、危なげなくゼロを並べた。

四回まで2安打、無四球、無失点。初回から四回までヤクルト打線に三塁を踏ませなかった。

五回に守備のミスが連続し、1点を失っても踏みとどまった。だからこそ、悔やまれるのは六回の一球だった。

先頭の増田に右前打を許したが、続くサンタナを併殺打に打ち取り、2死走者なし。流れを取り戻しかけた直後、赤羽への2球目だった。カットボールが坂本の構えた位置より高く入り、打球は左翼スタンドへ。今季3号となる勝ち越しソロを浴び、1-2とされた。

「少し抜けたところをホームランにされたので悔いが残る」

下村自身も、その一球を悔やんだ。

さらに松下、長岡に連打を浴びたが、高橋を二ゴロに打ち取り追加点は許さなかった。六回を投げ終えて6安打2失点。自責点は赤羽の本塁打による1点だけだった。

藤川球児監督も若き右腕を責めなかった。サンタナから併殺を奪った後の「もう一つ」を今後の課題としながら、この経験は下村にとって次への糧になるとの考えを示した。

下村自身も、前回登板に比べて打者へ向かっていけた部分があったと手応えを口にした。実際、四球は一つもなく、四回まで得点圏に走者を進めさせなかった。五回に守備が乱れても大崩れせず、六回に勝ち越し本塁打を浴びた後も連打を受けながら追加点は与えなかった。プロ初勝利こそ逃したが、先発投手として試合をつくったことは数字にもはっきりと表れている。

七回からは継投に入った。2番手の津田淳哉は先頭の山野辺に左前打を浴び、岩田の犠打で1死二塁。古賀にも左前打を許して1死一、三塁とされたが、増田を遊ゴロ併殺打に仕留めて無失点。八回の木下里都はサンタナ、赤羽を連続三振。松下に中前打を許したものの、長岡を一ゴロに打ち取った。九回は及川雅貴が無失点。救援陣は3イニングをゼロでつなぎ、打線の反撃を待ち続けた。

投手陣は十分に耐えた。ヤクルトには10安打を許しながら、失点はわずか2。先発の下村は自責1で六回まで投げ、救援陣は無失点だった。敗因を投手陣に求めることはできない。桧山氏も、下村はプロ初勝利を十分見込める内容だったと評価し、次の登板では野手が打撃でも守備でも借りを返す必要があると指摘した。

それほど、この日の下村は「負け投手」という結果だけでは語れない投球を見せていた。

九回2死満塁でもあと一本が出ず

最後の最後、甲子園はこの日一番の熱気に包まれた。1点を追う九回。ヤクルトの守護神・キハダを相手に、阪神は2死満塁まで攻めた。それでも、一本が出なかった。

先頭の中野が三塁・松下の失策で一気に二塁へ。無死二塁という絶好の同点機をつくった。続く森下は遊ゴロに倒れて1死二塁。初回に先制打を放った3番打者も、ここでは走者を進めることができなかった。

4番・佐藤輝は空振り三振。これで2死二塁となった。

ヤクルトベンチは大山を申告敬遠し、2死一、二塁。続く前川が四球を選び、ついに満塁となった。大山に代わって植田海が代走へ。長打が出れば逆転サヨナラ。一打で試合をひっくり返せる場面までたどり着いた。

打席には、八回に坂本の代打として出場していた福島。だが最後は空振り三振。42,635人が詰めかけた甲子園は、大きなため息に包まれた。

九回の阪神は無安打だった。相手の失策、申告敬遠、四球で満塁まで進んだが、最後まで自分たちのバットで走者をかえすことはできなかった。

振り返れば、この日はチャンスのたびに一本が出なかった。初回は森下の先制二塁打後、1死二塁から佐藤輝、大山が連続三振。四回は大山の2死二塁打後に前川が三振。七回は先頭の佐藤輝が安打を放ちながら、大山の三振と前川の併殺で無得点。八回は熊谷が安打と盗塁で二塁まで進んだが、高寺が遊ゴロ、木浪が三振。九回も2死満塁まで迫ってゼロだった。

5安打、2四球、相手失策もありながら、得点は初回の1点のみ。走者を出してもつながらず、14個の三振を喫した。これでは、投手陣にほとんど失点を許さない戦いを求めるしかない。

この敗戦で、阪神の今季1点差試合は10勝16敗、勝率・385。中日と並ぶリーグワーストとなった。僅差の試合をものにできない数字は、無視できるものではない。

藤川監督は試合後、ミスが起こること自体をことさらに責めることはせず、「次へ、次へ」と前を向いた。長いシーズンを、何事も起こらずに戦い抜くことは難しい。だからこそ、起きたことを次にどうつなげるか。その姿勢を示した。

ただし、この日の敗戦で突きつけられた事実は明確だ。守備では五回に二つの失策が絡み、無安打で同点を許した。打線は散発5安打、14三振で、初回の1点以降はゼロを並べた。投手陣が2失点に抑えながら、勝てなかった。

スコアは1-2。表面上は惜敗だった。しかし、下村が六回自責1で踏ん張り、救援陣も無失点でつないだことを考えれば、野手陣の内容は厳しい。前夜に12安打10得点を挙げた打線が一転し、高橋を中心とするヤクルト投手陣の前に沈黙。九回2死満塁の最後まで、決定打は生まれなかった。

それでもシーズンは続く。下村には次の登板があり、佐藤輝にも熊谷にも、そしてこの日14三振を喫した打線にも、取り返す機会はある。

藤川監督の言葉通り、「次へ、次へ」。

だが次へ進むためには、この一敗をただ忘れるのではなく、なぜ1点を守れなかったのか、なぜあと1点を奪えなかったのかを直視する必要がある。散発5安打、14三振。2失策から無安打で同点。プロ2度目の先発で力投した下村に黒星がついた。

首位を走る阪神にとって、決してアンラッキーでは済ませられない敗戦だった。

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