虎の若き大砲2人が、同じ日に「30号」の大台へ駆け上がった。
阪神は21日、横浜スタジアムでDeNAを4-1で破り、首位の座を守った。主役となったのは3番・森下翔太と4番・佐藤輝明だ。まず号砲を鳴らしたのは森下だった。0-1で迎えた四回1死。DeNA先発・平良拳太郎の2球目、129キロのスライダーを捉えた。打球は左翼スタンド中段へ。打球速度176・9キロ、飛距離121メートル、打球角度36度を記録した、自身初の30号同点ソロだった。森下は初回の第1打席では空振り三振。だが第2打席で一発回答を見せた。その後は六回に見逃し三振、八回は三ゴロで、この日は4打数1安打1打点。その1安打が、試合の流れを変える節目の一撃となった。
森下自身も、両チームにとって次の1点が重要な場面だったとした上で、まず同点にできたことを喜んだ。入団4年目。毎年本塁打数を伸ばし、自ら今季の目標として掲げていた30発に110試合目で到達した。球団の日本人右打者による30本塁打は、1985年の岡田彰布、真弓明信以来41年ぶり。それを生まれ育った横浜で成し遂げた。しかも相手の平良は、阪神にとって今季ここまで2戦2敗、計11回1/3でわずか1得点に抑え込まれていた難敵。その右腕から、森下の一発を突破口に一気に試合をひっくり返した。
続く佐藤輝は空振り三振に倒れたが、2死から5番・大山悠輔が中堅への二塁打。6番・前川右京が低めのシンカーを右前へ運び、大山が生還した。前川は平良とは初対戦で、独特のリリースポイントに戸惑ったという。それでも打席の中で修正し、「先輩方が作ってくれた勢い」に乗った一打で2-1。結果的にこれが決勝点となった。前川は六回にも右への二塁打を放ち4打数2安打1打点。派手な30号の陰で、23歳がきっちり勝利を引き寄せた。六回は大山が佐野の悪送球で出塁し、前川の二塁打で二、三塁まで進んだものの、坂本誠志郎が空振り三振。七回も代打・中野拓夢が中越え二塁打を放ちながら無得点と、追加点を奪いきれない時間が続いた。それでも1点のリードを保てたからこそ、終盤の2発が効いた。
森下に続き佐藤輝も!規格外30号で歴史的そろい踏み
1点差の緊張を吹き飛ばしたのが佐藤輝だった。八回、DeNAは平良、中川虎大とつないで3番手・伊勢大夢を投入。先頭の森下は三ゴロに倒れ、1死走者なしで4番が打席へ向かった。佐藤輝はこの日、一ゴロ、空振り三振、空振り三振。最初の3打席は快音がなかった。だが第4打席は違った。カウント2-2から伊勢の低めのフォークに体勢を崩されながらも、すくい上げるように振り抜いた。打球は右翼席へ到達。打球速度174・9キロ、角度43度、飛距離116・1メートル。2-1から3-1へとリードを広げる30号ソロとなった。これで佐藤輝は2年連続30本塁打。球団では2004、05年の金本知憲以来、生え抜き選手に限れば1982年から85年まで4年連続で30本を超えた掛布雅之以来41年ぶりとなった。
さらに、この日は四回に森下も30号へ到達している。同一シーズンに阪神で複数選手が30本塁打を記録するのは、バース、掛布、岡田、真弓がそろった1985年以来。しかも森下と佐藤輝はそろってリーグ最速の30号に到達した。同じ球団の2選手が同じ日に「リーグ30号一番乗り」を果たしたのは史上初という記録までついてきた。佐藤輝は18日のヤクルト戦で29号を放ち、先行していた森下に並んでいた。そしてこの日、森下が先に30号を打つと、約4イニング後に佐藤輝も追いついた。
試合後、佐藤輝は互いにいい刺激を与え合えていると話し、本塁打王争いを続ける後輩との関係を前向きに捉えた。一方、初めて30本に乗せた森下は、目標は達成するために設定しているとして、節目にも浮かれない姿勢を見せた。元阪神の桧山進次郎氏は森下について、昨季途中から内角球をさばく技術が向上した点を成長の理由に挙げている。以前は内角の速球に詰まらされる場面があったが、バットを指1本分短く持つなど試行錯誤を重ね、より鋭く振れるようになったと分析。もともと外角への対応力を備えていた打者が、内角への自信とパワーを加えたことが本塁打増につながっているとの見立てだ。
そして佐藤輝という同じチームの強打者と本塁打王を争える環境も、互いにとって大きな刺激になっていると指摘した。ただし、この日の2人の仕事は「一発」だけを切り取れば対照的でもあった。森下は第2打席で同点弾を放った後は2打席連続で凡退。一方の佐藤輝は3打席凡退のあと、最後の打席で一発を仕留めた。4打数1安打1本塁打ずつ。それでも必要な場面で、それぞれが試合を動かす30号を放った。3番、4番が同じ30本で並ぶ。数字そのもの以上に、相手投手に休む暇を与えない並びが、この日の4-1というスコアにくっきり表れた。
Tiktok動画はこちら
4カ月ぶりルーカスが粘って来日初勝利
豪快なアーチ競演を勝利につなげたのは、4カ月ぶりに1軍マウンドへ戻ってきた左腕イーストン・ルーカスだった。腰部の疲労骨折で離脱し、1軍登板は4月16日以来。開幕ローテーションに入ったものの、離脱前は3試合で0勝2敗。この日の登板は、待ち続けてきた来日初白星への再挑戦でもあった。決して楽な5イニングではない。初回は1死から牧秀悟に中前打を許し、2死後にはエンカーナシオンに左翼への二塁打を浴びて二、三塁。それでも宮﨑敏郎を三ゴロに仕留めて無失点で切り抜けた。二回は先頭・佐野恵太を空振り三振に取った直後、宮下朝陽に右中間への7号ソロを浴びて先制された。三回には2死から度会隆輝、エンカーナシオンに連続四球を与え一、二塁。ここも宮﨑を二ゴロに打ち取った。四回は佐野に中前打を許しながら後続を封じ、五回は牧にフェンス直撃の二塁打を浴びても度会、エンカーナシオンを中飛に仕留めた。
結果は5回76球、打者22人、被安打5、2四球、2奪三振、1失点。許した得点は宮下のソロだけだった。ルーカス自身は復帰戦について、一球一球、一瞬一瞬を大事に投げたと振り返り、再び1軍で投げられた喜びを口にした。150キロを超える直球と大きく曲がるスイーパーを軸に、走者を背負っても大量失点へつなげなかったことが、この試合では何より大きかった。藤川球児監督は当初、3~4回程度を想定していたと明かしている。それでも打線が四回に逆転し、試合展開が阪神側へ傾いたことで続投。指揮官は5回まで投げ切った内容を評価すると同時に、予定していた時期に戦列へ戻ってきたこと自体を「非常に大きい」と受け止めた。
六回からは救援陣が仕事を完遂する。木下里都が宮﨑を三ゴロ、佐野を空振り三振、宮下を右飛の3人で片づけ、七回は及川雅貴が戸柱恭孝、代打・松尾汐恩、勝又温史をすべて内野ゴロ。八回のドリスは1死から度会に中越え二塁打を許したが、エンカーナシオンを投直、宮﨑を二ゴロに仕留めた。木下、及川、ドリスはいずれもホールド。九回は工藤泰成が登板し、佐野を二ゴロ、宮下と戸柱を連続空振り三振に仕留めて3セーブ目を挙げた。4人の救援陣が4イニングを1安打無失点。先発ルーカスから工藤まで、DeNA打線に許したのは計6安打、1得点だけだった。DeNAは初回の二、三塁、三回の一、二塁、五回の牧の二塁打、八回の度会の二塁打と得点圏に走者を置いたが、あと一本が出なかった。ルーカスが粘り、ブルペンが逃げ切る。その土台があったからこそ、森下と佐藤輝の30号は「記録」だけではなく、白星を呼ぶアーチになった。
坂本まで飛び出した!3本塁打で仕上げた「4-1」、大砲2人だけではない虎の厚み
そして最後を飾ったのは、3番でも4番でもなかった。3-1で迎えた九回表。DeNAは伊勢から左腕・坂本裕哉へスイッチした。その初球から始まった7番・坂本誠志郎の打席で、またも打球がスタンドへ消えた。右中間への8号ソロ。森下、佐藤輝に続く、この日チーム3本目の本塁打だった。坂本はこれで2試合連発。シーズン最多が2本だった過去を大きく更新し、8月だけで6本目となった。
中継で解説した佐々木主浩氏も、逆方向の深い位置まで運んだ打球に驚き、坂本の好調ぶりに言及した。捕手としてルーカスから木下、及川、ドリス、工藤まで5投手をリードしながら、最後は自らのバットでもリードを3点に広げた。阪神は38打数8安打。四球も死球も犠打もなく、11三振を喫した。相手先発・平良には6回で10三振を奪われた。DeNAが3失策を記録した一方、阪神は三回に元山飛優が牧の落球で二塁まで進んでも得点できず、五回もルーカスが牧のファンブルで出塁したが無得点。六回には大山が佐野の悪送球で出塁し、前川の二塁打で二、三塁まで攻めながら追加点を逃した。七回には代打・中野が中越え二塁打を放っても得点には結びつかなかった。
決して毎回相手を圧倒した打線ではない。だからこそ、四回に森下が1球で同点にし、大山、前川で勝ち越し、八回に佐藤輝、九回に坂本がソロ本塁打で1点ずつ積み重ねた攻撃が際立つ。1-0と先行された試合を4-1へ。3本の本塁打はすべてソロだったが、その間に挟まった前川の適時打が決勝点だった。森下30号、佐藤輝30号、坂本8号。4得点中3点をアーチで奪いながら、最も重要な勝ち越し点は大山の二塁打と前川の右前打で作った。上位の長打力だけに頼らず、6番、7番までが得点に絡んだ形だ。試合後の数字にはさらに歴史が刻まれた。森下の30号は自身初、佐藤輝は2年連続。1シーズンに30本塁打以上の打者を複数抱える阪神は1985年以来となった。そして同じ日に同一球団の2人がリーグ最速30号へ到達するのは史上初。そこへ、8月だけで6本塁打と打棒が急上昇した坂本まで加わった。
最終回は工藤が14球で三者凡退。最後の2人を連続三振に仕留め、3時間12分のゲームを締めた。スコアは阪神4-1DeNA。阪神8安打、DeNA6安打。勝ち投手は5回1失点のルーカスで来日初勝利、敗戦投手は6回2失点の平良、工藤が3セーブ目。観衆3万3372人の前で、しっかり勝ち切った。記録の主役は30号をそろって放った森下と佐藤輝。しかし、その2発を勝利へ変えたのは前川の決勝打であり、4カ月ぶりのルーカスの粘投であり、無失点でつないだ救援陣であり、最後にダメ押し弾を放った坂本だった。阪神打線の「怖さ」が3番、4番だけでは終わらないことを示した試合でもあった。
