猛虎の勢いが止まらない。阪神は12日、東京ドームで行われた巨人との19回戦に5-1で快勝した。前夜は4本塁打を含む9得点で宿敵を圧倒。この日も森下翔太が28号、佐藤輝明が25、26号と中軸から3発が飛び出し、2日間で計7本塁打。首位攻防戦で巨人投手陣に強烈な一発攻勢を浴びせ、3連勝を飾った。阪神は57勝44敗1分けとし、55勝46敗2分けの2位・巨人とのゲーム差を「2」に拡大。3カードぶりのカード勝ち越しも決めた。
前日の9-1という大勝の余韻を、そのまま持ち込んだような立ち上がりだった。初回、先頭の近本光司は遊ゴロに倒れたものの、続く中野拓夢がストレートの四球を選ぶ。1死一塁から3番・森下が中前打を放ち、一、二塁。ここで4番・佐藤輝が左前へ先制適時打を運んだ。前日に本塁打を放った主軸2人が、今度は連打で試合を動かした。なお1死一、三塁から大山悠輔が左翼へ犠飛を打ち上げて2点目。前川右京も四球を選び攻撃を続け、伏見寅威の三ゴロで攻撃を終えたものの、相手先発・井上温大に初回から計7人を送り込み、2点を奪った。
そして、この2点では終わらない。3回だ。先頭の中野が中飛に倒れ、1死走者なし。打席には森下。井上の3球目の変化球を捉えた打球はバックスクリーン右へ飛び込んだ。前日は26、27号を放っており、これで2試合連続、2日間で3本目となる28号ソロ。井上に対してはこの試合前まで通算22打数11安打、2本塁打、9打点と好相性を示していたが、その数字をさらに伸ばした。東京ドームの巨人戦でも試合前時点で打率・351、5本塁打、9打点。敵地でまたしても豪快な一発をたたき込んだ。
さらに驚くべきは、その余韻が消えないうちに次の一撃が飛び出したことだった。4番・佐藤輝が初球を振り抜き、右翼スタンドへ25号ソロ。森下、佐藤輝による2者連続本塁打となり、スコアは一気に4-0。ともに前日から2試合連続アーチで、巨人戦では2戦連続のアベック弾となった。前夜4発で東京ドームを沈黙させた阪神が、翌日も同じ場所で長打力を見せつけた。宮本慎也氏も、この首位攻防2試合で阪神が7本塁打、そのうち森下と佐藤輝だけで6本を放った点に着目。阪神打線が力で巨人投手陣を上回ったとの見方を示した。
4回にも阪神は2死から近本が四球、中野が左前打、森下が死球で満塁と井上を攻めた。佐藤輝は遊ゴロに倒れて追加点こそならなかったが、巨人バッテリーは休まる暇がなかった。特に森下は前夜から3本塁打。この死球が両リーグ最多となる14個目だったことからも、相手側が中軸への攻めに神経を使っていたことがうかがえる。ただし、この打席はあくまで死球であり、本塁打後の第3打席。森下のこの日の打席は中前打、中越え本塁打、死球、遊ゴロ、四球という内容だった。
佐藤輝が先制打、2発で3安打3打点 節目の通算150号
この日の主役を一人挙げるなら、やはり佐藤輝だった。初回の先制打、3回の25号、そして7回の26号。4打数3安打3打点に1四球という内容で、阪神の5得点のうち3点をそのバットでたたき出した。初回1死一、二塁では左前へ運ぶ先制適時打。本人も試合後、この打席について積極的に仕掛けて捉えられたことを振り返った。そして3回。森下の28号を目の前で見届けると、その直後の初球を仕留めて右翼席へ。クリーンアップ2人の連続アーチは、首位攻防戦の流れを決定的に阪神へ引き寄せた。
4回2死満塁では遊ゴロに倒れたが、まだ仕事は終わっていなかった。6回裏に巨人・ダルベックのソロで4-1と3点差に迫られた直後の7回表。巨人は赤星優志から船迫大雅へ継投した。その船迫がマウンドに上がった直後、先頭打者として佐藤輝が打席へ入る。カウント0-1からの一球を捉えると、打球は右中間スタンドへ一直線。巨人が一発で1点を返した直後、その裏返しとなる攻撃ですぐさま一発を返した。試合の流れを相手へ渡さない、あまりにも大きな26号ソロだった。
そして、この一発にはさらに大きな意味があった。佐藤輝にとってプロ通算150本塁打。プロ6年目、27歳4カ月で到達し、球団では掛布雅之の25歳1カ月に次ぐ若さでの節目となった。ダイヤモンドを一周した佐藤輝をベンチの仲間たちが笑顔で迎え、最後には同学年の元山飛優から150号の記念ボードを手渡された。試合後には、ここまで多くの人に支えてもらったことへの感謝を口にし、これからも一本ずつ積み重ねていく意欲を示した。
数字以上に印象深いのは、打席ごとに違う形で結果を出したことだ。第1打席は左方向への適時打、第2打席は右翼への本塁打、第3打席は満塁で遊ゴロ、第4打席は右中間への本塁打。そして9回の第5打席では、無死一塁から右翼ポール際への打球がファウルと判定され、阪神がリクエスト。リプレー検証でも判定は変わらなかった。その後、田和廉の暴投で森下が二塁へ進み、佐藤輝は四球を選んで一、二塁。この打席で一発が出れば1試合3本塁打だったが、結果は四球。続く大山が4-6-3の併殺打、代打・木浪聖也が空振り三振に倒れ、追加点は生まれなかった。
佐藤輝自身は「何より勝てた」ことを最も喜んだ。個人記録の150号より先にチームの勝利を口にしたところにも、首位攻防戦の重みがにじんだ。前日の一発に続いてこの日は2発。森下も前日の2発に続いて28号を放った。この2人が3、4番に並び、2試合続けてアーチを共演したことが、巨人に与えた圧力は小さくない。宮本氏は、巨人がこの2人を抑えるには外中心の勝負だけでは難しく、厳しい内角攻めが不可欠との見方を示した。それほどまでに現在の森下、佐藤輝の長打力が相手にとって大きな脅威になっている。
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髙橋遥人が復調の12勝目 6回5安打1失点
豪快な3本塁打の裏で、試合を崩さなかった左腕の働きも大きかった。阪神先発・髙橋遥人は6回90球、打者24人に対して5安打、6奪三振、1四球、1失点。今季12勝目を挙げた。前回登板では4回6失点と苦しんでいただけに、首位を争う巨人との直接対決で示した修正力には価値があった。試合後は最近の登板でチームに迷惑をかけていたとの思いを明かし、まずは試合を作れたことを安堵した。村上頌樹、才木浩人が先発陣を引っ張っていることにも触れ、自身も乗り遅れないようにしたいと語った。
初回は2死から泉口友汰に右翼への二塁打を許し、ダルベックを四球で歩かせて一、二塁。それでも石塚裕惺を空振り三振に仕留め、無失点で切り抜けた。2回は笹原操希を二ゴロ、岸田行倫を遊ゴロ、知念大成を二ゴロ。3回も井上を空振り三振、浦田俊輔、松本剛をともに二ゴロに打ち取り、2イニング連続の三者凡退。阪神打線が3回表に2本塁打で4-0とした直後にも、相手に反撃のきっかけを与えなかった。
4回には先頭の泉口にこの日2本目となる二塁打を許した。無死二塁。それでもここからが髙橋の真骨頂だった。4番ダルベックを見逃し三振、5番石塚も見逃し三振。笹原を二ゴロに打ち取り、得点圏に走者を背負いながら無失点。5回も岸田を捕ゴロ、知念を投ゴロと簡単に2死を奪う。代打・小濱佑斗には中前打を許したものの、浦田を投ゴロに仕留めた。走者を出しても連打を許さず、巨人打線に攻撃の流れを作らせなかった。
唯一の失点は6回だった。松本を空振り三振、泉口も空振り三振に仕留め、簡単に2死。ここでダルベックに1-0からバックスクリーン左へソロを浴びた。前日も村上から本塁打を放っていた巨人の4番に2試合連続の一発を許し、髙橋自身はこれで6試合連続被弾。それでも崩れなかった。続く石塚に右前打を許したものの、笹原を遊ゴロ。失点をその1点だけにとどめ、6回を投げ切った。
捕手・伏見は、前回登板で髙橋が短いイニングで本塁打を浴びて失点していたことを踏まえ、本人にも不安があると考えていたという。そこで立ち上がりは丁寧に入ろうと話し合い、この日は普段とは違う配球も取り入れたと説明。最少失点でまとめた左腕を「ナイスピッチング」と評価した。
7回以降も阪神投手陣は隙を見せなかった。7回は木下里都が登板し、代打・岡田悠希を見逃し三振、知念を二ゴロ、小濱を左飛の三者凡退。8回は及川雅貴が増田大輝を空振り三振、松本を左飛。泉口には四球を許したものの、ダルベックを遊ゴロに打ち取った。9回は工藤泰成。石塚を二ゴロ、笹原を3球三振とし、2死から代打・佐々木俊輔に左前打を許したが、最後は代打・大城卓三を三ゴロ。髙橋から木下、及川、工藤へつないだ4投手で巨人を6安打1得点に封じ、守備も無失策だった。
2夜7発、巨人を力で圧倒 首位攻防に会心の2連勝
前夜の9-1に続いて5-1。スコア以上に鮮烈だったのは、2日続けて同じ勝ち方を巨人に見せつけたことだ。11日は近本、森下2本、佐藤輝の計4本塁打。そして12日は森下、佐藤輝2本の計3発。首位を争う直接対決で阪神は2日間に計7本塁打を放ち、そのうち6本を3番・森下と4番・佐藤輝が記録した。巨人からすれば、前日やられた中軸を翌日も止められなかった。宮本氏が「まともに勝負したら」という表現で巨人側の苦しさを指摘したのも、この数字を見れば理解できる。
ただし、この日の阪神を「3本塁打だけのチーム」と見るのは正確ではない。11安打を放ち、四球5、死球1。初回の2点は本塁打ではなく、中野の四球から森下、佐藤輝の連打、大山の犠飛とつないで奪った。5回には前川、伏見の連打で一、二塁。得点には結びつかなかったが、井上を5回107球まで投げさせた。6回は近本が中前打、8回は熊谷敬宥が右前打。9回には森下、佐藤輝が連続四球で無死一、二塁とした。得点したイニング以外でも繰り返し走者を出し続けたことが、巨人投手陣への圧力となった。阪神打線のこの日の合計は35打数11安打5打点、5四球、1死球、3本塁打だった。
森下は3打数2安打1打点、1四球1死球。中前打、28号ソロ、死球、遊ゴロ、四球と5度出塁機会のうち4度塁に出た。佐藤輝は4打数3安打3打点、1四球。大山は安打こそなかったが初回に犠飛で1打点。前川は3打数2安打1四球、伏見と熊谷も1安打を記録した。全員が派手な数字を残したわけではない。それでも3、4番の長打力を軸に、前後の打者が走者をためることで相手に休む場所を与えない。この並びこそ、現在の阪神打線の強さだった。
そして何より大きいのが、この連勝が首位攻防戦の最中だという事実だ。試合前まで1ゲーム差だった2位巨人を直接たたき、差は2へ。阪神は57勝44敗1分け。巨人は55勝46敗2分けとなった。まだシーズンは続く。それでも、前日に9点、この日に5点を奪い、首位を追う最大のライバルを同じ東京ドームで連日押し切ったのは大きい。
森下は2日間で3発。佐藤輝も2日間で3発。その佐藤輝は150号という節目まで同じ夜に刻んだ。投げては村上に続き髙橋が試合を作り、若い救援陣が残り3イニングを無失点で締めた。前日は「4発9得点」、この日は「3発5得点」。本塁打攻勢という最も派手な形で巨人を圧倒しながら、先発、救援、つなぎの攻撃も崩れない。佐藤輝は試合後、3連勝が懸かる次戦へ「明日も勝つもり」で立ち向かう姿勢を示した。
首位攻防第2ラウンドも阪神が取った。宿敵の本拠地に響いたのは、またしても猛虎の快音だった。
