サトテル&大山、球団史上初の連発劇的サヨナラ勝利!

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あと二つアウトを取られれば敗戦だった。
1-2で迎えた九回裏。八回を星知弥に三者凡退で封じられた阪神は、ヤクルト3番手・清水昇と向き合った。先頭は3番・森下翔太。ワンバウンドした球に空振り三振を喫し、1死走者なし。初回に1点を奪って以降、二回から八回までスコアボードには「0」が並び続けていた。36,195人が詰めかけた京セラドーム大阪で、敗戦まで残されたアウトは二つ。

そこから、わずか2人で試合がひっくり返った。まずは4番・佐藤輝明。カウント1-1から清水のフォークを捉えた打球は右中間スタンドへ一直線。29号ソロで2-2。土壇場で試合を振り出しに戻した。「しっかり強い打球を意識していきました」。この日の佐藤輝は、一回の第1打席で右前へ先制適時打。四回の第2打席は空振り三振、六回の第3打席は左飛。そして最後の第4打席で、この日2本目の安打を最も必要な場面で放った。4打数2安打2打点。29本塁打は森下に並ぶリーグトップとなった。

だが、ドラマは同点のままでは終わらない。大歓声がまだ収まらない中、5番・大山悠輔が打席へ入った。大山は一回の第1打席で6-4-3の併殺打、四回は空振り三振、六回は右飛。3打席凡退で迎えた第4打席だった。清水に対してカウント2-2。内角のフォークを振り抜くと、白球は高々と舞い上がった。「ファウルになるな、と思って見ていました」。打球は切れることなく左翼ポール際のスタンドへ飛び込んだ。14号ソロ。2-2から3-2。サヨナラだ。打球の行方を確認した大山はバットを掲げ、歓喜のダイヤモンドを一周した。清水が九回に対した打者は3人。森下から三振を奪った後、佐藤輝、大山に連続本塁打を浴び、0回1/3、13球、2安打、2被本塁打、2失点で敗戦投手となった。佐藤輝が負けを消し、大山がサヨナラアーチを叩き込んだ。2者連続本塁打によるサヨナラ勝ちは阪神球団史上初。大山にとっては2021年9月4日の巨人戦以来となる自身4本目のサヨナラ弾でもあった。八回までわずか1得点だった試合が、九回1死からの二振りで完全に反転した。

藤川球児監督は試合後、佐藤輝の高い集中力が勝負どころで表れたと評価し、大山についてもその勝負強さを称賛。「本当に素晴らしいクリーンナップ」とたたえた。文字通り、4番と5番だけで「同点」と「サヨナラ」を連続で決めた、あまりにも鮮烈なフィナーレだった。

佐藤輝が先制も追加点を奪えず 村上は6回2失点で粘った

劇的な九回に至るまでの八イニングは、むしろ我慢の連続だった。
先発・村上頌樹は一回、先頭の長岡秀樹に中前打、続く岩田幸宏に右前打を許し、無死一、三塁。いきなり先制の危機を背負った。宮本丈の打席では一塁走者・岩田へのけん制を巡り、当初はセーフ判定。阪神がリクエストすると判定が覆り、岩田は戻り切れずタッチアウトとなった。村上は宮本を右飛、増田珠も右飛に抑え、2安打を浴びながら無失点。その裏、阪神は近本光司が遊ゴロに倒れた後、中野拓夢が右前打で出塁。森下が8球粘って四球を選び、一死一、二塁と好機を広げた。ここで佐藤輝が1-0から右前へ先制適時打。「しっかり仕事ができてよかった」と、主砲が最初の仕事を果たした。しかし、大山が6-4-3の併殺打に倒れ、追加点までは奪えない。この「あと一本」が、その後も重くのしかかった。

二回表、村上は古賀優大を二直、西村瑠伊斗を中飛に打ち取って二死としたものの、伊藤琉偉に四球。投手の吉村貢司郎にも右前打を許して一、二塁とされ、9番・武岡龍世に中前適時打を浴びて1-1。三回は宮本に左翼への二塁打、古賀に四球を与えて二死一、二塁となったが、西村を左飛に打ち取った。四回は伊藤の右前打、吉村の送りバントで一死二塁。それでも武岡を二ゴロ、長岡をワンバウンドする球で空振り三振に仕留める。五回は岩田を捕ゴロ、宮本を空振り三振、増田を右飛と三者凡退。走者を背負いながらも試合を壊さなかった。

しかし六回、先頭・古賀に右翼への三塁打を許す。無死三塁から西村に中犠飛を打たれ、ヤクルトに1-2と勝ち越された。村上は後続の伊藤を右飛、吉村を見逃し三振に抑え、この回限りで降板。6回97球、打者26人、7安打2失点、3奪三振2四球だった。今季21試合目の先発で20度目のクオリティースタートを達成したものの、目前だった2年連続2桁勝利は持ち越し。藤川監督は坂本誠志郎とのバッテリーを含め、その粘りを「エースの働き」と評価した。

一方の打線は、二回に元山飛優が右前打を放つも村上が空振り三振。三回は近本が左飛、中野が二ゴロ、森下が遊ゴロと三者凡退。四回は佐藤輝、大山が連続三振の後に髙寺望夢が左前打を放ったが、坂本が空振り三振に倒れた。四回の守備から中野に代わって熊谷敬宥が二塁に入り、五回は元山が左飛、村上が空振り三振、近本が左邪飛。六回には熊谷が右飛に倒れた後、森下が中前打で出塁したものの、佐藤輝は左飛、大山も右飛。七回は髙寺、坂本、元山が三者凡退、八回も吉村から代わった星に対し、代打・福島圭音が空振り三振、近本が三ゴロ、熊谷が遊ゴロと三者凡退に終わった。吉村には7回106球、5安打1失点、7奪三振。阪神が二回以降に放った安打は元山、髙寺、森下の3本だけで、いずれも得点につながらなかった。初回に佐藤輝が作った「1」のまま迎えた終盤。打線が苦しんだからこそ、1点差を保ち続けることが試合をつなぐ唯一の道になっていた。

 

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逆転の舞台を消さず 及川、湯浅、桐敷が守った「1点差」

九回の2発だけを切り取れば、4番と5番の力で勝った試合に見える。だが、逆転できる条件を最後まで残したのはブルペンだった。1-2の七回、村上からバトンを受けた及川雅貴は先頭の武岡を左飛。長岡を空振り三振、岩田を二ゴロに仕留め、10球で三者凡退に片づけた。八回は湯浅京己。先頭の赤羽由紘に左前打を許して無死一塁となったものの、増田を4-6-3の併殺打。二死から古賀に右前打を浴びても、西村を二ゴロに打ち取ってホームは踏ませなかった。そして九回は桐敷拓馬。先頭の伊藤に8球粘られて四球を与え、代打・山野辺翔には送りバントを決められて一死二塁。武岡の二ゴロで伊藤は三塁へ進み、さらに長岡に死球を与えて二死一、三塁となった。ここで1点を失えば、勝負の趨勢は決まってしまう。桐敷は岩田を0-2と追い込み、最後は見逃し三振。苦しみながら、最後まで「1-2」を守り切った。

及川は1回10球、無安打1奪三振。湯浅は1回12球、2安打無失点。桐敷は1回21球、無安打1奪三振、1四球1死球で無失点。3人が七回から九回まで一度もヤクルトに追加点を許さなかった。捕手・坂本も先発の村上から及川、湯浅、桐敷まで4投手を受け、最後まで1点差のゲームをつないだ。直後に佐藤輝と大山が連続本塁打を放ったことで、桐敷には今季初勝利が記録された。それでも本人は「野手陣に感謝です」と話す一方、先頭打者への四球を反省。次は先頭を抑え、3人で終えることを課題に挙げた。勝ち星に浮かれるだけではなかった。鳥谷敬氏がこの試合で強く評価したのも、まさに及川、湯浅、桐敷の無失点リレーだった。優勝した2023年や昨季の阪神には、ビハインドでも救援陣が失点を止め、最後に打線がひっくり返す試合があったと指摘。この日の3投手も優勝を経験しているメンバーであり、1点差のまま最後までつないだことを高く評価した。赤星憲広氏も、劇勝を呼び込んだ及川、湯浅、桐敷の零封リレーに着目し、実績のある3投手が仕事を果たしたことを「価値ある勝利」の重要な要素として挙げている。

九回表にもう1点を失っていれば、このサヨナラ勝利は生まれなかった。桐敷は二死一、三塁まで走者を背負ったが、決して三塁走者を生還させなかった。その「0」があったから、佐藤輝の一振りで追いつき、大山の一振りで試合を終えられた。派手な2本のアーチを成立させたのは、スコアボードに三つの「0」を刻んだ救援陣だった。

歴史的勝利で60勝一番乗り 藤川監督が抱き寄せた4番と5番

劇的な決着のあと、歓喜の輪の中心に佐藤輝と大山がいた。
大山にとってサヨナラ本塁打は2021年9月4日の巨人戦以来、自身5年ぶり、通算4本目。球団では田尾安志、新庄剛志、福留孝介に並ぶ歴代3位タイとなった。京セラドーム大阪では自身2本目のサヨナラアーチだ。「勝った瞬間だったので、一番うれしかった」。ウオーターシャワーを浴びた大山は、直前に同点弾を放った佐藤輝について、いつも目の前で驚くような本塁打を打つ存在だと語り、それを見たからこそ自分は力まないよう打席に入ったことを明かした。佐藤輝も大山を頼れる存在として語り、後ろにつなぐ意識を口にした。4番が何とかし、5番が続く。その関係が最も劇的な形で表れた九回だった。

藤川監督も興奮を隠さなかった。佐藤輝については、毎試合の高い集中力が大事な場面で結果になったと評価し、大山には勝負強さを認めた。試合後には、ウオーターシャワーでびしょぬれになった2人をそろって抱き寄せた。さらに、スタンドから最後まで送られた声援にも触れ、「ファンの方が打たせてくれたと思います」と感謝した。別の取材では、この試合を象徴するように「我慢していればいいことがある」と語っている。この日の阪神は7安打。ヤクルトは9安打で、失策は両軍とも0。打線は二回から八回まで7イニング連続無得点だった。それでも村上が6回2失点で踏みとどまり、及川、湯浅、桐敷が無失点でつなぎ、最後に4、5番が1打席ずつで勝敗を変えた。結果だけを見れば3-2。しかし、その「3」のうち2点が九回1死から生まれた。

今季の阪神はこれが5度目のサヨナラ勝ち。本塁打によるサヨナラは3度目で、5月20日と6月30日の中日戦ではいずれも森下が決めていた。そして今回は、大山のサヨナラ弾の直前に佐藤輝の同点弾が飛び出したことで、球団史上初の「2者連続本塁打によるサヨナラ勝ち」という新たな記録になった。佐藤輝はこの日4打数2安打2打点。打率は.316となり、29本塁打は森下と並ぶリーグトップ、打点は80。打撃3部門でリーグトップに立つ形となり、残り36試合で三冠王争いにも名を連ねる数字となった。一方、大山はそれまで3打席無安打でも、最後の一打で勝利を決めた。

チームはこの勝利でリーグ最速の60勝に到達。60勝46敗1分けで貯金14とし、DeNAに3-4でサヨナラ負けした2位・巨人との差を3ゲームに広げた。条件次第では20日にも優勝マジック29が点灯する。試合時間は3時間4分。九回1死、1-2。敗戦まで残されたアウトは二つだった。そこから4番が追いつき、5番が勝利を決めた。佐藤輝の29号、大山の14号。その裏側では、先発も救援も最後まで試合を手放さなかった。8月18日のゲームは、二つのアーチだけでなく、藤川監督が口にした「我慢」を最後まで続けた末にたどり着いた、阪神の劇的な60勝目となった。

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