坂本、8回に値千金の逆転2ランで連敗ストップ

坂本、8回に値千金の逆転2ランで連敗ストップ

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一振りで、重苦しかった空気をひっくり返した。
阪神は8月27日、バンテリンドームで中日と対戦し、4-3で逆転勝利。2連敗で迎えたカード最終戦をものにし、今季セ・リーグでは一度もなかった同一カード3連敗を阻止した。勝利の主役は7番・坂本誠志郎。2-3の八回1死一塁から中日2番手・橋本侑樹の150キロ直球を左翼席へ運び、試合を決める9号2ランを放った。阪神は14安打を放ちながら得点につなげ切れない時間が続いたが、最後は主将の一発がすべてを変えた。

試合は阪神が先手を取った。初回、先頭・近本光司が中前打で出塁すると、中野拓夢が送りバント。森下翔太が四球を選んで1死一、二塁とし、4番・佐藤輝明が中日先発・金丸夢斗から右前へ先制適時打を放った。大山悠輔、前川右京は倒れたものの、理想的な形で1点を奪った。

ところがリードはわずか数分で消えた。先発・下村海翔がその裏、先頭の福永裕基に右中間への本塁打を浴びて同点。上林誠知を遊飛、細川成也を右飛に仕留めた後も、サノーに右翼への二塁打を許したが、ボスラーを遊ゴロに打ち取り、何とか1-1で初回を終えた。

二回は両軍無得点。阪神は坂本が空振り三振、元山飛優が遊ゴロ、下村が空振り三振の三者凡退。下村はその裏、先頭・石川昂弥に右前打を許したものの、山本泰寛を二ゴロ、石伊雄太を空振り三振、金丸を見逃し三振に仕留めた。山本の二ゴロでは一塁アウトの判定を巡って中日がリクエストし、判定が覆る場面もあったが、失点にはつながらなかった。

阪神は三回にも近本が遊撃への内野安打で出塁し、中野がこの日2度目の送りバント。しかし森下が三ゴロ、佐藤輝が空振り三振に倒れ、勝ち越しには至らない。すると直後、下村が中日打線につかまった。

三回裏、先頭・福永の中前打を皮切りに、上林が右前打、細川が左前打。無死満塁からサノーにも右前適時打を浴び、1-2。4連打で勝ち越しを許したところで、藤川球児監督は下村を降板させた。下村は2回0/3を45球、被安打7、3失点。プロ入り後最短となる三回途中での降板だった。

無死満塁でマウンドに上がった2番手・セベリーノは、ボスラーを二ゴロ併殺に仕留める。その間に三塁走者が生還して1-3となったものの、続く石川昂を三ゴロ。大量失点につながりかねない場面を最少限の追加点で切り抜けた。

四回以降は阪神の継投陣が流れを渡さなかった。セベリーノは四回、山本に右前打を許したが、石伊を6-4-3の併殺、金丸を遊ゴロ。五回から登板した岡留英貴は福永を右飛、上林、細川を連続空振り三振。六回もサノー、ボスラー、石川昂を三者凡退に仕留め、2回を無安打4奪三振と完璧に封じた。先発が早々と崩れたゲームを、ブルペン陣がつなぎ直した。

阪神打線は金丸を攻め切れない。四回は大山、前川、坂本が三者凡退。五回は元山が左前打で出たものの、代打・ガルシアが見逃し三振、近本も見逃し三振、中野が一ゴロに倒れた。走者は出す。だが、あと一本が出ない。そんな展開が続いた。

それでも六回、ようやく反撃の糸口をつかむ。先頭・森下が右前打。続く佐藤輝も右前へ運ぶと、右翼・ボスラーが後逸し、無死二、三塁までチャンスが拡大した。大山は遊直に倒れたが、前川の一ゴロの間に森下が生還。2-3と1点差に迫った。ただ、なお2死三塁で坂本は空振り三振。試合をひっくり返すには至らなかった。

この時点で坂本は空振り三振、一ゴロ、空振り三振。本人も試合後、それまでの打席が振るわなかったことを認め、「何とかしたい」という思いで八回の打席へ向かったと振り返っている。

だが、その「八回」が来るまでにも、阪神は何度も中日守備を崩そうとチャレンジを続けてきた。

七回、元山が三ゴロに倒れた後、代打・福島圭音が遊撃への内野安打。山本の悪送球も重なって二塁へ進む。近本も内野安打で続き1死一、二塁。中野は見逃し三振に倒れたが、森下が四球を選び2死満塁。ここで佐藤輝に打席が回った。しかし、一打逆転の場面で遊飛。阪神はまたしても得点圏に走者を置きながら、ホームが遠かった。

中日先発・金丸は7回113球を投げ、8安打2失点、8奪三振。阪神は毎回のように走者を出しながら、決定打を欠いた。だが、その左腕が七回限りでマウンドを降りたことが、試合の景色を変えた。デイリースポーツ評論家の佐藤義則氏も、金丸が七回で降板したことは阪神にとって大きかったと指摘している。

そして八回。ついに虎が牙をむいた。

「海くんのおかげ」植田の存在が生んだ150キロ撃ち

中日のマウンドには2番手の左腕・橋本。先頭・大山は空振り三振に倒れ、1死となった。

ここで6番・前川が、たたきつける打球で内野安打。一塁へ生きた。藤川監督はすぐに動く。一塁走者・前川に代えて、俊足の植田海を送り込んだ。

この交代が、次の打席に影響を与えた。

打席には坂本。橋本は植田に対して一塁へ二度の牽制を入れた。走らせたくない――。その攻防を、捕手でもある坂本は打席から見ていた。カウントは1ボール。2球目、橋本が投じた150キロの直球を坂本が振り抜いた。打球は左翼席へ一直線。2-3から4-3。値千金の逆転9号2ランだった。

坂本が試合後、真っ先に感謝したのは植田だった。

「海くんが重圧をかけてくれたおかげ」

植田が走る可能性を相手バッテリーに意識させた。1球目がボールとなり、打者有利のカウントになったことで坂本は振りやすくなったと説明している。速球が増える状況の中、甘く入った150キロを逃さなかった。

偶然の一発ではない。8月の坂本はこれが7本目の本塁打。阪神捕手が月間7本以上を放つのは1978年8月の田淵幸一以来、48年ぶり2人目という記録だった。しかも、この一発で今季9号。すでに自身のキャリアハイを大きく更新している。

さらに興味深いデータもある。この日の先発は下村。坂本はこれで下村が先発した試合では4試合連続、計5本目のアーチとなった。下村自身は三回途中でマウンドを降りていたが、そのゲームを女房役のバットが救った格好になった。

佐藤義則氏は、最近の坂本について左投手への強さに注目している。右投手に対して苦戦する一方、左投手には外から入ってくる球がよく見えており、甘い球を仕留められていると分析。この日の橋本も左腕だった。佐藤氏が「自信を持って打席に立っている」と評した通り、勝負どころで迷いなく振った一撃だった。

日刊スポーツ評論家の谷繁元信氏も、この本塁打を「起死回生」の一振りとして高く評価した。阪神はこのカードで失策やバント失敗なども絡んで2連敗。巨人がヤクルトに3連勝していたこともあり、この日まで落とせば首位争いの空気が大きく変わりかねない状況だった。だからこそ、八回の一発には単なる2得点以上の価値があった。

逆転後も阪神打線は攻撃を緩めなかった。元山が左前打。代打・髙寺望夢のところで中日は橋本から森博人へスイッチし、髙寺は空振り三振となったが、近本が右前打で一、三塁。近本は中野の打席で二盗にも成功し、二、三塁とした。中野は空振り三振に倒れて追加点こそ奪えなかったが、この日4安打の近本を中心に、最後まで相手に圧力をかけ続けた。

近本は5打数4安打1得点1盗塁。森下は3打数2安打2四球、佐藤輝は5打数3安打1打点。阪神は計14安打を放った。大量得点にはならなかったが、上位打線が何度も好機をつくり、その積み重ねを最後に坂本が一振りで勝利へ結びつけた。佐藤義則氏も、近本の4安打と中野の2犠打を、打線に見え始めた好材料として挙げている。


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木下、ドリス、工藤・・・ブルペン総動員で1点を死守

坂本の一発だけでは、この勝利は完成しなかった。

下村が三回途中で降板した後、阪神はセベリーノ、岡留、木下里都、ドリス、工藤泰成と5人のリリーフを投入。下村を含めて計6投手の継投で、中日の反撃を封じ込んだ。

特に大きかったのが、五、六回を任された岡留だった。2回27球、打者6人に対して無安打無四球、4奪三振。1人の走者も許さなかった。1-3から六回に1点を返し、阪神が反撃態勢を整える時間をつくった。

七回は木下。先頭・山本に9球粘られて四球を与えると、石伊が送りバント。さらに代打・阿部寿樹を敬遠し、1死一、二塁となった。福永の遊ゴロで2死一、三塁。ここで上林を一ゴロに仕留めた。逆転直前の1イニングを無失点でしのいだ木下に、今季4勝目がついた。

坂本の本塁打で4-3とした直後の八回はドリス。先頭・細川に中前打を許し、代走・樋口に二盗を決められる。岡林には四球。1死一、二塁と一打同点のピンチを招いた。

それでも石川昂を二ゴロに打ち取り2死二、三塁。最後は山本を右飛。逆転直後、最も失点したくないイニングを無失点で切り抜けた。

九回表には阪神がもう一度チャンスをつくる。森下が左前打、佐藤輝が右前打で無死一、三塁。しかし大山の三ゴロで三塁走者・森下が走塁死。代打・木浪聖也が二ゴロに倒れ、2死二、三塁から坂本も空振り三振。追加点を奪えず、1点差のまま九回裏へ向かった。坂本は決勝弾を放った一方、この日は5打数1安打3三振。その唯一の安打が、勝敗を決める2ランだった。

最後を託されたのは工藤。先頭・石伊を空振り三振、代打・福元悠真を三ゴロに仕留め、簡単に2死を取った。

だが、そこから福永に中越え二塁打。上林は一塁が空いていたため敬遠し、2死一、二塁。一打同点、一発なら逆転サヨナラという場面で、打席には樋口が入った。

樋口の打球は力のない投手前へのゴロ。工藤が自ら処理し、一塁の大山へトスした。

アウト――。

阪神ナインは勝利を確信した。ところが、中日ベンチが一塁の判定を巡ってリクエストを要求。ゲームセットと思われた瞬間から、判定を待つ時間へと変わった。

それでも阪神側には確信があった。選手たちはマウンド付近で、正式な判定を待つ前から控えめに喜び始めたという。やがて判定は変わらずアウト。今度こそゲームセットとなった。

工藤は1回16球、1安打1四球1奪三振で無失点。今季5セーブ目を挙げた。勝ち投手は七回を無失点でしのいだ木下で4勝目。ドリスにホールドが記録され、坂本の逆転弾をブルペン陣が守り抜いた。

先発が3回を持たず、打線も14安打で4得点。それでも、試合を壊さずにつないだ投手陣がいたからこそ、坂本に逆転するチャンスが巡ってきた。

「束になって」甲子園へ いよいよ巨人との首位攻防戦へ

この1勝の意味は大きい。

阪神は中日との3連戦を1勝2敗で終え、連敗を2でストップ。セ・リーグ相手では今季初となる同一カード3連敗を免れた。同日に2位・巨人も勝ったためゲーム差は1・5のままだが、もし敗れていれば0・5差で直接対決を迎えるところだった。谷繁氏が坂本の一発を「大きな意味がある一打」と評価した背景もそこにある。

長期ロードもこれで終了した。阪神は23試合を14勝9敗で乗り切り、バンテリンドームでの今季成績も7勝5敗。2023年以来3年ぶりに同球場でシーズン勝ち越しを決めた。かつて「鬼門」と呼ばれた敵地で、2023年から4シーズン連続で勝率5割以上を確保したことになる。

そして28日からは甲子園に戻り、2位・巨人との直接対決3連戦を迎える。

坂本はその戦いを前に、チーム全員が試合の意味を理解しているとした上で、「束になって」目の前の一戦を取りにいく姿勢を示した。

首位攻防を前に、打線にも明るい材料はある。この日は近本が4安打。中野は無安打ながら序盤に2度の犠打を成功させ、森下が2安打2四球、佐藤輝が3安打。大山は5打数無安打だったが、チーム全体では14安打を記録した。

一方で課題も明確だ。14安打を放ちながら4得点にとどまり、七回2死満塁、九回無死一、三塁など追加点を奪えなかった場面もある。佐藤義則氏もクリーンアップには当たりが出ている一方、得点力そのものは十分ではないと指摘している。近本の復調や中野の犠打を好材料としながらも、上位から中軸へどう走者をつないでいくかは巨人戦でも重要になる。

それでも、この日は勝ち切った。

先発・下村が早期降板。1-3と追う展開。七回には満塁を逃し、八回を迎えた時点でも1点ビハインド。それを前川が内野安打でつなぎ、植田が足で相手に圧力をかけ、坂本が仕留めた。リードを奪えば木下、ドリス、工藤ら救援陣が守り抜く。藤川阪神が「一人の力」ではなく、いくつもの役割をつないで手にした1勝だった。

そして何より、この日の象徴は坂本だ。

五回まで3打席で快音なし。六回には同点機で空振り三振。それでも次のチャンスで仕留めた。5打数1安打。その「1」が、9号2ランだった。

八回1死一塁。植田を意識した橋本が投じた150キロ。坂本は逃さなかった。

左翼席へ消えた白球が、2-3を4-3に変えた。

中日・井上監督は試合後、八回に橋本を起用したことについて、勝利をもぎ取るための選択だったと説明した。中日も5連勝中で、勝ち切るために送り込んだ左腕だった。その勝負手を、坂本が一振りで打ち砕いた。

8月だけで7本塁打。主将として投手陣を引っ張るだけではない。いまやバットでも試合を決める存在になった。

阪神はこれで64勝49敗1分。巨人との1・5ゲーム差を守った。

連敗を止め、長期ロードを白星で締め、首位のまま甲子園へ帰る。

重苦しい一戦を救ったのは、坂本誠志郎の一振りだった。

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