阪神が4月26日、甲子園球場で広島と対戦し、1―0の接戦を制した。たったの1得点。それでも内容は濃かった。4回、佐藤輝明が右中間へ運ぶ6号ソロを放ち、それが決勝点に。打線はわずか2安打に終わったが、その虎の子の1点を先発・大竹耕太郎、8回の桐敷拓馬、9回のドリスが守り抜いた。阪神は連敗を2で止め、首位に再浮上。さらに藤川球児監督は、球団指揮官として節目の通算100勝に到達した。派手な打ち合いではない。だが、こういう1点をめぐる試合を取り切ったことに、この日の白星の価値がある。大竹は7回4安打無失点、6奪三振、無四死球。広島打線に得点を許さず、今季初勝利をつかんだ。広島戦に強い“鯉キラー”として知られる左腕が、またしても甲子園でその看板通りの働きを見せた。
“鯉キラー”大竹、七回の絶叫 数字以上に際立った支配力
この試合の主役が誰だったかと問われれば、まず大竹の名が挙がる。7回105球、被安打4、奪三振6、無四死球、無失点。スコアブックに並ぶ数字だけでも十分に見事だが、本当の凄みは、その内容にあった。大竹は立ち上がりからテンポよくアウトを重ね、広島打線に二塁すら踏ませない時間を長く続けた。毎回のように三振を奪う力押しの投手ではない。それでも、この日は6つの三振を奪い、その決め球はすべて直球だった。変化球を意識させながら、最後は真っすぐで仕留める。いわば“柔”で相手の目線を外し、“剛”で仕留める投球だった。大竹と坂本のバッテリーが広島打線を完全に手玉に取ったのだ。広島側も打線を入れ替え、大竹対策を施して臨んだが、得点圏に走者を置いた場面は7回の一度だけ。新井監督も「ずっとやられている」と認めるしかない内容だった。
最大の山場は、やはり7回だった。1―0で迎えた終盤、1死からモンテロを迎えた場面では、あわや本塁打かという大きなファウルを打たれた。それでも大竹は慌てない。カウントを整えたあと、クイックから真っすぐを投げ込み、見逃し三振。さらに2死後、菊池と大盛に連打を許して一、二塁とされ、この日初めて本格的なピンチを背負ったが、最後は勝田を二ゴロに打ち取った。打たれた瞬間に終わったかと思わせるような空気を飲み込み、1―0のままイニングを終わらせる。その直後にマウンド上で感情をむき出しにして雄たけびを上げた姿は、この日の大竹を象徴するシーンだった。本人も「ピンチの場面でも勝負を怖がらずに投げることができた」と振り返っている。甲子園での広島戦は無傷の6連勝。マスコミは試合前の時点で、広島戦通算15勝2敗という抜群の相性に触れていたが、その数字にまた1つ白星が積み上がった。鯉キラーという言葉は、とかくオーバーな表現となりがちだが、この日の大竹に関しては決して大げさではない。広島が対策を施しても、最後は大竹の間合い、配球、制球、そして胆力が上回った。
2安打でも勝てる 佐藤輝の6号ソロが持った決定的な意味
打線は決して爆発したわけではない。阪神の安打は、初回の近本光司の中前打と、4回の佐藤輝の本塁打の2本だけ。数字だけを見れば、苦しい攻撃だったことは明らかだ。それでも勝てたのは、大竹の好投があったからだ。初回、阪神は近本が出塁し、中野拓夢が犠打を決めて得点圏へ走者を進めた。2死三塁まで持ち込み、先制の形はつくった。しかし、ここで佐藤輝は一ゴロに倒れ、得点にはつながらない。重い空気が流れかけた試合を、次に動かしたのもまたサトテルだった。4回裏、先頭で打席に立つと、栗林良吏の高めのボール気味の球を鋭く振り抜き、右中間スタンドへ運んだ。広島の新井監督も、あの一球について「相手が上だったと思うしかない」と認めている。栗林は7回を投げて被安打2、失点1。つまり広島先発もほとんど完璧に近い内容だった。その中で、たった一球を仕留めてゼロを1に変えたサトテルのあのホームランの価値は非常に大きい。1点を争う投手戦では、一振りで流れを奪う打者が勝負を決める。この日はまさにその典型だった。
もっとも、打線全体として見れば課題も残った。2安打1得点で勝ったことは事実だが、裏を返せば、最後まで追加点を奪えなかったということでもある。相手先発の栗林が良かったとはいえ、1点で逃げ切る展開は継投陣への負担も大きい。特に終盤に入れば、四球や失策ひとつで流れが傾く。だからこそ、この日の阪神にとっては、サトテルの一発が「決勝弾」であると同時に、「唯一の得点」であった点もまた印象深い。派手な複数得点ではなく、たった1発で試合を決める。ある意味これ以上なく4番らしい決着のつけ方だった。サトテルの6号ソロは、ただのホームランではない。大竹の快投を勝ち星に変える、極めて重い一打だった。
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桐敷、ドリスで締めた完封リレー 最後まで張り詰めた甲子園
大竹が7回を投げ切ったあとも、試合は少しも緩まなかった。8回は桐敷が登板し、1安打を許しながらも無失点。1点差のまま最終回へつないだ。9回はドリス。先頭打者を出すような展開になれば一気に同点の危険が高まる場面だったが、最後まで広島にホームを踏ませなかった。9回表には小幡竜平の失策で走者を許す場面もあった。それでも阪神は崩れない。最後はドリスが締め、ゼロを並べきって試合終了。1―0というスコアが示す通り、ほんのわずかなほころびで結果がひっくり返ってもおかしくないゲームだった。それを完封リレーで押し切ったのだから、投手陣全体の集中力は高かったと言っていい。スコアだけを見ればロースコアゲームだが、中身はひりつき続けた。初回から最終回まで、どちらかに一振りが出れば流れが変わる。そんな緊張のなかで、大竹が先発の仕事をやり切り、桐敷とドリスが受け継ぎ、佐藤輝の一発を守り切った。これがこの日の勝因の核心だった。
振り返れば、この白星は阪神にとって多くの意味を持っている。連敗を止めたこと。首位に再浮上したこと。藤川監督が通算100勝に到達したこと。そして何より、大竹が今季初勝利を手にし、“鯉キラー”ぶりを改めて証明したことだ。広島戦で強い投手、というだけでは片付かない。相手が対策を打ってきても、試合の中で配球とテンポ、直球と変化球の見せ方、打者との間合いで上回る。その技術と落ち着きが、この日の1―0を生んだ。勝負を分けたのはサトテルの本塁打だが、試合そのものを支配していたのは大竹だった。鯉キラー健在、大竹で勝った――。それが、この甲子園の1勝を最も端的に表す言葉だろう。
