普段は温厚な岡田監督ですが、今シーズン中には何度も感情を露わにしたり、大胆な行動に出るシーンがありました。38年ぶり日本一へとチームを導いてくれた名采配と共に、思い出してみましょう。なかなか面白い場面がてんこ盛りでした。
38年ぶり日本一達成 阪神・岡田監督、2023年“三大パフォーマンス”を振り返る!
(デイリー新潮より)
「佐々木朗希なら投げさせとったけどな」
復帰1年目に18年ぶりのリーグVと38年ぶりの日本一を達成した阪神・岡田彰布監督。シーズン中はチームの快進撃とともに“岡田語録”やファンを共感させるパフォーマンスの数々も連日紙面を賑わせた。“アレ”も流行語大賞の年間大賞に輝くなど、“2023年の主役”の記憶に残るパフォーマンスを振り返ってみよう。
7回までパーフェクトに抑えた投手を交代する非情采配の是非が論議を呼んだのは、4月12日の巨人戦だった。
阪神の先発は、3年目の村上頌樹。今季は中継ぎ要員としてベンチ入りしたが、開幕ローテーション候補の伊藤将司が故障で出遅れたことから、2021年8月28日の広島戦以来、通算3度目の先発のチャンスが巡ってきた。
1軍での実績には乏しいものの、ウエスタンリーグで2年連続防御率&勝率トップに輝いた右腕は、「何も意識せず、無駄なランナーを出さないようにと思って投げた」のが功を奏し、2回に智弁学園の先輩・岡本和真から空振り三振を奪うなど、7回までパーフェクトの快投を演じる。
ところが1対0の8回表、岡田監督はまだ84球しか投げていない村上に代打を送り、その裏、2番手・石井大智を投入した。実は、交代は6回を終えた時点で「7回まで」と決めていた。「全然悩まんかった。6回いってくれたらいいと思ってた。(ロッテの)佐々木朗希なら投げさせとったけどな」。点差はわずか1点。完全試合まで「あと6人」でも、勝利のためにより安全に思える継投策を選んだ形だ。
プロ初勝利は幻と消えるも
だが、皮肉にもこの“石橋采配”が裏目に出る。石井は先頭の岡本にいきなり初球の148キロ直球を左中間席に運ばれてしまう。継投直後のまさかの同点劇で、村上のプロ初勝利は幻と消えた。
もし、これで逆転されていたら、あと味が悪くなるところだったが、1対1の延長10回、近本光司の決勝タイムリーが飛び出し、2対1の勝利。それでも岡田監督は「まあ勝ったからね、良かったようなものの、頭の中でずうっとね、完全試合いけたんかなあっていうね」と複雑な胸中をのぞかせた。
ネット上でも8回の継投をめぐり、「村上交代、流石にあり得なさすぎるだろ」「交代はやむを得ない」など賛否両論が飛び交ったが、この日の“7回パーフェクト”をステップに、村上は大きく飛躍する。4月22日の中日戦でプロ初勝利を完封で挙げると、開幕から31イニング連続無失点のセ・リーグタイ記録も樹立し、10勝6敗、防御率1.75の好成績でチームの日本一に貢献。セ・リーグでは史上初の新人王とMVPの同時受賞の快挙を実現した。
もし、巨人戦で村上が8回以降も続投していたら、どうなっていたかは“神のみぞ知る”だが、シーズンが終わってから振り返ると、結果オーライの継投だったと言えるだろう。
「高津がおらんかってん」
岡田監督の“越権行為”が話題になったのが、7月19日のオールスター第1戦である。
4点をリードされた2回、近藤健介(ソフトバンク)の左翼フェンス直撃の打球を、ノイジー(阪神)がクッションボールをうまく処理して二塁に送球。タイミングはアウトに見えたが、二塁に滑り込んだ近藤はセーフになった。直後、村上、梅野隆太郎のバッテリーも含めて阪神勢で固めた内野陣全員がアウトを確信し、ベンチにリクエストをアピールした。
すると、ベンチを飛び出してきたのは、全セの高津臣吾監督ではなく、なんと、コーチの岡田監督だった「高津がおらんかってん。インタビューか何かしてたんちゃう?みんながアウト、アウト言うから。高津がいてなかったんや。だから、しょうがなしにオレが」。
にもかかわらず、場内放送では「高津監督よりリクエストがありましたので」と事実と異なる説明があったため、スタンドからどよめきと笑いが起きた。
検証の結果、判定が覆ってアウトになり、見事リクエスト成功。リクエスト時にブルペンを見に行って不在だった高津監督も「モニターを見ていたら、何か岡田さんがやってるよって。あれっつって。オレの仕事……て思って」と苦笑いだった。
今季のVにより、来年の全セは岡田監督になるが、今にして思えば、あの“越権リクエスト”は予告編だったのかも?
「オレは引かん!」
ふだんは温厚な岡田監督が、鬼の形相で猛抗議を繰り広げたのが、8月18日のDeNA戦である。
問題の場面は、1点を追う阪神が9回1死一塁、打者・木浪聖也のカウント2-1からの4球目に一塁走者・熊谷敬宥が二盗を試みた際のタッチプレー。
ショート・京田陽太が二塁ベース手前で、ベースを足で塞ぐようにして熊谷にぶつかる形でタッチした。小林和公二塁塁審は「セーフ」をコールしたが、DeNA・三浦大輔監督がリクエストすると、検証の結果、責任審判の敷田直人三塁塁審は「故意とかではなく、お互い精一杯のプレーをして、偶然あのような形になって、ベースに届かなかった。そこでアウトにするしかないと判断した。走塁妨害というふうには見ていない」と判定を覆した。
直後、岡田監督が怒りもあらわにベンチを飛び出し、「オレは引かん!」と激しく抗議したが、走塁妨害は認められず、結局、阪神はそのまま1対2で敗れた。
だが、岡田監督の抗議は無駄にならなかった。阪神がNPBに意見書を提出したことを受け、9月5日、ブロッキングベースのルールが採用されたのだ。「不可抗力なので(走塁)妨害ではないのですが、走者の不利益を取り除くというところで進塁を認める」(森健次郎審判長)というもので、今後同様のケースではセーフになる。
事実上、新ルールの生みの親となった岡田監督は「そら当然やろ」とコメント。優勝を争う重要な試合で、ひとつの判定が結果的に勝敗に影響したことも考慮されたのだろうが、勢いに乗ったチームは、ルールをも変えてしまうようだ。
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