阪神は2026年4月25日、甲子園球場で広島と対戦し、延長12回の末に2―2で引き分けた。4時間58分に及ぶ両リーグ今季最長の死闘だった。スコアだけ見れば痛み分けだが、阪神にとっては「勝てた試合を逃した」という色合いの濃い一戦になった。初回に先制を許しながら、その裏に大山悠輔の犠飛ですぐ追いつく。さらに8回には森下翔太の二塁打を起点に、小幡竜平が押し出し四球をもぎ取って2―1と勝ち越し。7回1失点の村上頌樹がつくった流れを受け取り、あとは9回を締めれば勝利だった。ところが、守護神・岩崎優が先頭の代打・菊池涼介に四球を与え、代走・辰見蓮の盗塁と犠打で1死三塁。代打・中村奨成を空振り三振に仕留めてなお2死三塁までこぎ着けながら、最後は代打モンテロの投手強襲の打球を止め切れず、同点の適時内野安打となった。阪神は10安打を放ちながら2得点、広島も10安打で2得点。数字の上では互角でも、阪神には8回の勝ち越し、9回の逃げ切り機、さらに延長でのサヨナラ機があり、それを取り切れなかった重みが残った。勝ち切れなかった要因を突き詰めれば、終盤の1点の守り切れなさと、再三の好機で追加点を奪えなかった攻撃の細さ、その二つに尽きる試合だった。
村上が踏ん張り、大山が追いついた 序盤は阪神が試合を立て直した
立ち上がりは決して楽ではなかった。村上は1回表、2死二塁から4番・坂倉将吾に先制適時打を浴び、いきなり0―1。だが、ここで崩れず最少失点で踏みとどまったことが、試合全体を見れば大きかった。その裏、阪神は近本光司の中前打を足場に、森下の死球、佐藤輝明の四球で1死満塁とし、大山が左翼へ犠飛を放ってすぐさま1―1の同点。大山はこの打点で4試合連続打点となり、「まずは同点に」と役割を果たした形になった。以降の村上は、2回から4回まで毎回のように得点圏へ走者を背負いながらも粘投。球数は増えても、走者を置いた場面で粘り切り、広島打線に追加点を許さなかった。5、6、7回はいずれも三者凡退。最終的に7回121球、被安打7、失点1で先発の役割を果たし、試合の土台をしっかり築いた。エキサイティングプレーヤーに選ばれたのも当然の内容だった。
阪神としては、直近の試合で投手陣が大量失点していた流れを考えても、村上がゲームを壊さず、しかも尻上がりに状態を上げていったことは大きい。だからこそ、なおさらこの日の結末は惜しまれる。村上が7回を1失点でまとめ、打線も初回に追いついた以上、本来なら勝利に結びつけなければいけない試合だった。
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8回勝ち越し、それでも1点止まり 決め切れなかった攻撃が響いた
阪神がこの試合を勝ち切れなかった要因の一つは、8回裏の攻撃を「1点だけ」で終わらせてしまったことにある。1―1で迎えた8回、先頭の森下が右翼線へ二塁打を放ち、まず無死二塁。ここで広島は佐藤輝を申告敬遠し、大山との勝負を選んだ。大山は中飛に倒れたが、その打球で走者は進み1死二、三塁。続く髙寺望夢も申告敬遠で満塁となり、阪神は絶好の勝ち越し機を迎えた。ところが、ここで代打・前川右京が二ゴロに倒れ、なおも2死満塁。最終的には小幡が3ボール1ストライクから押し出し四球を選んで勝ち越したものの、なおも満塁で代打・木浪聖也が続く場面を生かし切れず、畳みかける点にはならなかった。結果だけ見れば、小幡がよく選んで奪った貴重な1点であり、勝負強さは光った。ただ、無死二塁から始まった攻撃で、相手が2度の敬遠を絡めてまでしのぎに来ていた以上、阪神にはもう1点、できれば2点目まで欲しかった。実際、この日阪神は10安打を放ちながら2得点にとどまり、残塁は15。初回も1死満塁から大山の犠飛による1点止まりで、8回も押し出しの1点止まり。攻め込んではいるが、長打や適時打で相手に致命傷を与える形まで持ち込めなかった。大山は5打数1安打1打点、佐藤輝は4打数2安打2四球、近本は6打数2安打、森下も8回に値千金の二塁打を放った。それでも試合を決定づける追加点が奪えない。勝ち切れなかった要因を攻撃面から見るなら、終盤の好機で「押し出しの1点」しか取れなかったこと、そして試合を通して10安打を2点にしか結び付けられなかったことが、はっきりした敗因ならぬ“引き分け因”として浮かび上がる。
あと1人から追いつかれ、延長でも決め手を欠いた
そして、最大の痛恨はやはり9回表だろう。阪神は7回を村上、8回を桐敷拓馬が無失点でつなぎ、1点リードで守護神・岩崎を送り出した。しかし先頭の代打・菊池に四球。これがまず重かった。続く場面で代走・辰見に初球から二盗を許し、送りバントで1死三塁。代打・中村奨を空振り三振に仕留め、「あと1人」までこぎ着けたが、代打・モンテロの強いゴロに対応し切れず、投手強襲の同点適時内野安打となった。岩崎が「全部自分でやっちゃったんで」と振り返った通り、先頭四球から盗塁、犠打、最後の打球処理まで、1点を失う流れを断ち切れなかったことが、そのまま試合を延長へ押しやった。藤川球児監督は試合後、岩崎への信頼について「もちろんそうです。また明日ですね」と語っており、ベンチが守護神への信頼を失っていないことは明確だが、試合単体で見ればここが最大の分岐点だった。延長に入ってからドリス、モレッタ、工藤が無失点でつないだのは収穫だったものの、打線は10回裏に小幡の安打と盗塁で一打サヨナラの形をつくりながら代打・濱田太貴が空振り三振、11回裏は先頭の近本が安打で出ながら中野の送りバントが併殺、12回裏も先頭の佐藤輝の安打から1死一、二塁まで進めながら梅野隆太郎が見逃し三振、小幡が左飛で試合終了。勝ち越されたわけではない。しかし、勝ち越せる場面を何度も逃し、最後は引き分けに持ち込まれた。総括するなら、阪神は「逃げ切れず、押し切れず、あと1点を奪い切れなかった」。村上の力投、大山の先制点を消した同点打ではなく同点犠飛、小幡の執念の押し出し四球――勝ちに値する材料は十分にあった。それでも白星にならなかったのは、8回に仕留め切れず、9回に守り切れず、延長で決め切れなかったからだ。接戦の末の引き分けというより、勝利の入り口に何度も立ちながら、最後の一歩を踏み切れなかった一戦だった。
