マジック点灯ならず・・・大野の投球術に封じられる

マジック点灯ならず・・・大野の投球術に封じられる

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勝てば優勝マジック点灯の可能性があった一戦で、阪神の前に立ちはだかったのは中日のベテラン左腕・大野雄大だった。阪神は8月25日、バンテリンドームで中日と対戦し2-4で敗戦。連勝は「2」で止まり、期待された優勝マジック点灯もお預けとなった。

スコアだけを見れば2点差。しかし、阪神に攻める機会がなかったわけではない。むしろ序盤は先に主導権を握れる場面を何度もつくっていた。

初回は近本光司が二ゴロ、中野拓夢が遊飛、森下翔太が二ゴロと三者凡退。それでも二回、先頭の佐藤輝明が外角低めのカットボールを中前へ運んで出塁する。大山悠輔が中飛に倒れた後、伏見寅威が四球を選び一、二塁。ガルシアは空振り三振に倒れたが、熊谷敬宥が右前打を放って二死満塁まで攻め立てた。

ここで打席には先発投手の西勇輝。一打先制の場面だったが、高めの球を捉えた打球は遊撃へのライナーとなり、得点には結びつかなかった。

三回にも好機は訪れた。一死から中野が右前打。森下が四球を選び一、二塁とすると、佐藤輝の二ゴロで二死一、三塁。さらに大山が四球を選んで、2イニング続けて満塁とした。しかし伏見が空振り三振。大野を追い込むところまではいっても、最後の一本を許してもらえない。

この「あと一本」が、この試合ではなかなか出なかった。

四回はガルシアが一飛、熊谷が二ゴロ、西勇が見逃し三振。五回には先頭の近本が遊撃への内野安打で出塁したものの、中野が4-6-3の併殺打。森下も空振り三振に倒れた。

藤川球児監督は試合後、大野について「なかなか連打連打というのは、簡単ではない投手」と、その投球を評価した。37歳の左腕は走者を背負っても崩れない。阪神打線は七回までに5安打、3四球を記録しながら、大野から奪った得点は大山のソロ本塁打による1点だけだった。

象徴的だったのが、二、三回の二死満塁と五回の併殺だ。打線は決して沈黙していたわけではない。出塁し、走者をため、相手にプレッシャーもかけた。それでも得点につながらない。大野の粘りと投球術が阪神の攻撃を寸断した。

藤川監督が「相手が上回った」と振り返った言葉には、この日の攻防が凝縮されていた。

八回にも中野の四球、佐藤輝の右前打で一死一、二塁としたが、大山が6-4-3の併殺打。九回には意地を見せたものの、序盤から繰り返した好機で一本が出なかったことが、最後まで重くのしかかった。

9安打、4四球。それでも2得点。

数字以上に「取れるときに取れなかった」一戦だった。

72日ぶり西勇は5回2失点 1発に泣く結果に

先発を託されたのは、6月14日のオリックス戦以来、72日ぶりの1軍マウンドとなった西勇輝だった。

35歳のベテランは久々の登板にもかかわらず、序盤から落ち着いていた。

初回、福永裕基を遊ゴロ、岡林勇希を投ゴロ。細川成也には四球を与えたが、4番サノーを中飛に仕留めて無失点。二回は上林誠知を一飛、石川昂弥を右飛、土田龍空を二ゴロと三者凡退に片付けた。

三回も石伊雄太を三ゴロ、大野を見逃し三振。福永には左前打を許したものの、岡林を二ゴロに打ち取った。3回まで許した安打はわずか1本。復帰登板として上々の立ち上がりだった。

均衡が崩れたのは四回だ。

先頭の細川に三塁への内野安打を許す。サノーを遊飛に仕留めて一死一塁としたが、5番・上林への2球目だった。カウント0-1から運ばれた打球は右翼スタンドへ。先制の2ラン本塁打被弾となった。

西勇にとって、この一球がこの日の唯一の失点につながる打球となった。

それでも崩れないところがベテランだった。続く石川昂を左飛、土田を中飛。五回には石伊にフェンス直撃の二塁打、大野にも左前打を浴び、無死一、三塁というピンチを迎えた。

追加点を許せば試合の流れが一気に中日へ傾きかねない場面。ここで西勇は福永を空振り三振に仕留める。続く岡林を一ゴロに打ち取り、その間に三塁走者・石伊が走塁死。無死一、三塁を無失点で切り抜けた。

5回77球、打者20人、被安打5、奪三振2、与四球1。失点、自責点はいずれも2。結果的には上林の2ランだけだった。

試合後、藤川監督も「先発としての役割を十分に、ゲームをつくってやってくれた」と評価。球数が77球だったことから五回での交代について問われても「まあ十分な仕事だと思っています」と語った。

西勇自身の受け止めは、より厳しかった。無失点で切り抜けられればよかったとした上で、敗戦につながった上林の本塁打を悔やんだ。

登板前には、久々の1軍について「楽しみしかない」と語っていた右腕。勝利こそつかなかったが、約2カ月ぶりの1軍登板で試合を壊すことなく、五回まで先発の役割を果たした。

問題は、その2失点を阪神打線が取り返せなかったことだった。

西勇が五回のピンチをしのいだ直後、六回にようやく虎打線が反撃する。だが、その直後にもう一本の2ランが飛び出す。

2-4という最終スコアを決定づけた二つのアーチ。その一本目が、上林の一発だった。


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大山15号で1点差も…直後に神宮がプロ初被弾

反撃の一発は、頼れる5番のバットから生まれた。

0-2で迎えた六回。先頭の佐藤輝は大野のツーシームを打って右飛。続く大山悠輔が打席に入った。

カウント1-2。大野のツーシームを捉えた打球は左中間へ伸び、そのままスタンドへ飛び込んだ。

今季15号ソロ。大山にとって2023年以来、3年ぶりとなるシーズン15本塁打到達だった。

これで1-2。試合は再び1点差となった。

大山はこの日、二回の第1打席が中飛、三回の第2打席は四球。そして六回の第3打席で本塁打。ベテラン左腕の大野から、ようやく得点をもぎ取った。

だが、虎がつかみかけた流れは、その裏に再び遠ざかった。

阪神は六回から西勇に代えて神宮僚介をマウンドへ送った。同時に左翼には髙寺望夢が入った。

先頭は細川。神宮は四球を与え、無死一塁で4番サノーを迎える。

ここが試合の大きな分岐点になった。

カウント1-1からの一球をサノーに捉えられ、打球は左翼スタンドへ。19号2ラン。スコアは一気に4-1となった。

大山の一発で縮めた1点差が、わずか半イニングで3点差に戻った。

神宮にとってはプロ8試合目で初めて浴びた本塁打であり、初失点でもあった。それまで右打者には安打を許していなかった右腕だったが、サノーの一振りに沈んだ。

試合後、神宮は「あの1球が全て」と振り返った。

藤川監督が指摘したのは、本塁打だけではない。その前にあった先頭打者への四球だった。

「相手の投手も(先頭の)四球が出ていますから、きっかけは何かはありますね」

藤川監督はそう語り、四球が試合を動かすきっかけになり得ることに触れた。一方で、若い右腕のミスを必要以上に責めることはしなかった。「どれだけ経験があってもそれは起こること」と受け止め、次につなげる姿勢を示した。

神宮もサノーに被弾した後は崩れなかった。上林を三飛、石川昂を投ゴロ、土田を見逃し三振。追加点は許さず、1回17球、被安打1、1奪三振、1四球、2失点で登板を終えた。

七回はセベリーノが登板。石伊を二飛に打ち取り、代打・福元悠真に中前打を許したものの、福永を4-6-3の併殺打に仕留めて無失点。八回を任された津田淳哉は先頭・岡林に四球を与えたが、細川を6-4-3の併殺打、サノーを8球粘られながら空振り三振に仕留めた。

リリーフ陣が許した得点は、神宮が浴びたサノーの2ランだけ。

西勇が上林に浴びた2ラン。そして神宮がサノーに浴びた2ラン。

中日の4得点は、すべてこの2本の本塁打によるものだった。

阪神投手陣が大量に打ち込まれたわけではない。それでも、二度の一振りで4点を失った。その重さが、最後まで虎を苦しめた。

九回に髙寺が意地の適時打、マジック点灯は最短27日

3点を追う阪神は、最後まで試合を捨てなかった。

七回は熊谷が中飛、髙寺が中飛、近本が投ゴロと三者凡退。大野に七回まで抑え込まれた。

中日は八回から吉田聖弥を投入。阪神は先頭の中野が四球を選び、反撃への足場をつくった。森下は内角のスライダーを捉えきれず右飛に倒れたが、佐藤輝が右前打。一死一、二塁と好機を広げる。

この日、佐藤輝は二回の中前打と合わせて4打数2安打。今季34度目のマルチ安打を記録した。

ここで打席には、六回に本塁打を放っている大山。長打が出れば一気に同点まで見える場面だった。

しかし結果は6-4-3の併殺打。八回も得点を奪えなかった。

それでも九回、阪神は中日の守護神・松山晋也に食らいついた。

先頭は伏見に代わる代打・元山飛優。左前へのポテンヒットで出塁する。続いて津田の代打・福島圭音。詰まった打球は遊ゴロとなったが、元山が二塁へ進んで一死二塁となる。

熊谷に代わる代打・前川右京は三飛。二死。

あと一人まで追い込まれた。

ここで打席に入ったのが髙寺だった。

カウント1-1から中前へ運ぶ適時打。二塁走者の元山が生還し、4-2。土壇場で2点差まで詰め寄った。

さらに近本が松山のグラブを襲う内野安打。一、二塁となり、一発が出れば逆転というところまで中日を追い詰めた。

打席には中野。

しかし最後は二ゴロ。ゲームセットとなった。

九回は元山、髙寺、近本の3安打で1点。途中出場の選手がつないで守護神を攻めたことについて、藤川監督も肯定的に受け止めた。「一人ひとりがやるべきことをきっちりやってますので、続けることですね」と話し、点差が開いた後も役割を果たした野手陣を評価した。

一方で、敗戦の要因もはっきりしていた。

阪神は9安打を放ち、4四球を選んだ。佐藤輝は2安打、大山は15号ソロ、近本も2安打。九回には代打・元山の安打から髙寺の適時打につなげた。

それでも得点は2。

二回二死満塁、三回二死満塁、五回無死一塁、八回一死一、二塁。得点につなげられなかった好機が積み重なった。

対する中日は7安打。阪神より2本少ない。それでも上林とサノーの2ラン2本で4得点を奪った。

「一本」の価値が、これほど明確に勝敗へ表れた試合もない。

阪神はこの敗戦で連勝が2でストップし、63勝48敗1分け。2位・巨人とのゲーム差は2・5に縮まった。勝つか引き分ければ点灯する可能性があった優勝マジックは持ち越され、最短点灯は27日となった。

それでも藤川監督は、敗戦を必要以上に引きずる様子を見せなかった。

大野の投球を認め、西勇の仕事を評価し、神宮の失敗も経験の一つとして受け止めた。そして九回まで攻め続けた打線についても、やるべきことはやっているとした。

大山も節目の15号が勝利につながらなかった試合後、「明日また頑張ります」と前を向いた。

勝負を分けたのは二つの2ランだった。

72日ぶりに先発した西勇は試合をつくった。佐藤輝はマルチ安打を記録し、大山には一発が出た。リリーフも神宮以外は無失点。九回には途中出場組を中心に守護神・松山を攻め、あと一発で逆転というところまで迫った。

それでも勝てなかった。

好機で一本を許さなかった大野と、得点機を2本の本塁打でものにした中日。藤川監督の言葉通り、この日は相手が一枚上だった。

優勝マジックはまだ灯らない。

だが、シーズンは続く。大山が放った15号も、佐藤輝の2安打も、西勇の復帰登板も、九回二死から見せた粘りも消えるわけではない。

4-2。2発のホームランに泣いた。

マジック点灯を目前に足踏みした阪神は、この一敗を切り替え、再び目の前の一勝を取りにいく。

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