8試合で4勝2敗ー伊原陸人の進化と修正

8試合で4勝2敗ー伊原陸人の進化と修正

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阪神・伊原陵人が、苦しみながらも一つの答えを示した。8月16日の広島戦(マツダスタジアム)に先発し、5回を投げて2安打1失点。84球でマウンドを降りたものの、チームは8-1で快勝し、伊原には今季4勝目がついた。これで今季の成績は8試合で4勝2敗、防御率3.25。数字だけを見れば順調にも映るが、この白星には、直近の登板で味わった悔しさと、そこからの修正が詰まっていた。

この日は打線が初回から伊原を援護した。佐藤輝明の2ランで2点を先制。リードをもらった伊原は、その裏を三者凡退に抑えて落ち着いたスタートを切った。二回には2死から四球と暴投で得点圏に走者を背負ったものの、後続を打ち取って無失点。三回にも2死から小園海斗に左中間への三塁打を許したが、菊池涼介を内角低めのスライダーで空振り三振に仕留めた。走者を出しても崩れず、要所でアウトを重ねる。伊原らしい粘りが光った。

唯一の失点は五回。先頭のモンテロにソロ本塁打を浴びた。内角中央付近に入った直球を捉えられた一球だった。伊原自身にとっても反省の残る失投だったが、その後に連打を許さなかったことが大きい。1点を失ってなお2-1。試合の主導権を相手に渡すことなく、5回を投げ切った。

前回8日の中日戦では4回1/3を投げ、7安打5失点。自責点は1だったとはいえ、守備のミスをきっかけに流れを止められず、伊原自身も試合を作れなかったことに責任を感じていたという。だからこそ、広島戦では登板までに投球を見直して臨んだ。その成果を示しての4勝目だった。

ただし、本人に満足感はない。5回84球という球数は、先発投手として決して理想的とはいえない。5回1失点という結果だけを見れば十分に役割を果たしたようにも見えるが、より長いイニングを任されるためには、球数を減らし、打者を早いカウントで仕留める必要がある。結果を残した試合だからこそ、次への課題もはっきりした登板だった。

結果だけでは見えない「84球」 伊原が次に越えるべき壁

伊原の広島戦を考えるうえで興味深いのは、「5回2安打1失点」という好結果と「84球」という球数が同時に残っていることだ。被安打はわずか2本。それでも5回までに84球を要した。つまり、打ち込まれたわけではない一方で、打者一人ひとりとの勝負には相応の球数を使っていたことになる。

伊原は力で圧倒するだけの投手ではない。打者の反応を見ながらコースや球種を使い分け、芯を外し、打ち取っていくことに持ち味がある。そのスタイルでは丁寧さが武器になる半面、慎重になりすぎれば球数が増える。先発として六回、七回まで投げるためには、このバランスをどこに置くかが重要になる。

特に広島戦で象徴的だったのが、モンテロに浴びた本塁打だ。打者が得意とするゾーンに直球が入り、一振りで仕留められた。5回2安打という数字だけを見ればほぼ抑えている。それでも、たった一球の甘さが失点につながるのが一軍の打者との勝負だ。裏を返せば、伊原がさらに安定した先発投手になるためには、こうした「打者が待っているところへ投げてしまう一球」をどれだけ減らせるかが鍵になる。

一方で評価すべきなのは、本塁打を浴びた後に崩れなかったことだろう。若い投手の場合、一つの失投から投球のリズムを失い、四球や連打につながることがある。伊原は1点を失ったところで踏みとどまった。前回登板では味方の失策も絡む中で失点を重ねただけに、悪い流れを自分のところで断ち切れたことには意味がある。

阪神の先発陣で生き残るためには、「5回を投げればいい」では足りない。登板間隔やチーム状況にもよるとはいえ、安定して六回、七回を任せられる存在になることが求められる。だからこそ、4勝目という結果以上に、84球で五回降板となった事実を次につなげられるかが重要になる。

伊原自身も、5回1失点という結果だけに満足してはいない。広島戦後には、粘りが十分ではなかったという趣旨の反省を口にし、今後も同様の投球を続けられるようにしたいと語っている。勝ったから終わりではなく、勝った試合から改善点を拾う。その姿勢こそ、今の伊原を支えている。

 

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壁を乗り越えた4勝目 プロ初のマルチ安打でも勝利に貢献

広島戦の伊原には、もう一つ印象的な場面があった。投手として5回1失点にまとめただけでなく、打者としても2安打を記録したのだ。

三回の先頭打者として迎えた第1打席で左前打。さらに五回1死で迎えた打席でも左前へ運び、プロ入り後初となる1試合複数安打を記録した。投手の打席は、セ・リーグでは攻撃の切れ目になりやすい。しかし、この日の伊原は自ら出塁することで相手先発の森翔平にプレッシャーをかけた。

最終的に阪神は8得点を挙げて快勝したが、試合中盤までは決して楽な展開ではなかった。初回に2点を奪った後、五回にモンテロの本塁打で1点差。追加点を奪えない時間が続いた。それだけに、投手である伊原が簡単にアウトにならず、打線につなげたことにも価値があった。

もちろん、伊原に最も求められているのは投球だ。ただ、投手自身が打席でも粘り、出塁することは、自らを助けることにもなる。特に僅差の試合では、投手の一本の安打が攻撃の流れを変えることもある。2年目で記録した初のマルチ安打は、単なる珍しい記録として片付けるには惜しい働きだった。

そして、この日の伊原の投球と打撃には共通する部分がある。それは、派手さよりも「目の前の勝負を一つずつ取る」という姿勢だ。

投球では走者を背負っても粘り、三振や凡打で切り抜ける。打席では投手だからと簡単に終わらず、相手投手の球を捉える。圧倒的な球速や豪快な長打で観客を沸かせるタイプではなくても、試合の中で自分のできる仕事を積み重ねる。それが伊原という選手の持ち味になりつつある。

プロ2年目。登板数はまだ多くない。それでも4勝を積み上げた事実は、伊原が一軍の戦力として結果を残し始めていることを示している。今後、投球回を伸ばすことができれば、阪神先発陣における存在感はさらに大きくなるはずだ。

「同じ高校生とは思えなかった」時代からプロへ

現在は阪神の一軍マウンドに立つ伊原だが、学生時代から常に注目を集めるスターだったわけではない。智弁学園高時代、同世代には大阪桐蔭の根尾昂ら全国的に注目された選手たちがいた。伊原自身、当時の大阪桐蔭の選手たちを見て、自分たちと同じ高校生とは思えないほどの差を感じていたという。

高校時代に感じた大きな差。それでも野球を続け、大学、社会人を経てプロの世界までたどり着いた。早い段階から世代の中心を走ってきた選手とは異なり、一つずつ段階を上がってきたからこそ、伊原には「今の結果だけで満足しない」という感覚が根付いているのかもしれない。

4勝目を挙げた広島戦も、それを象徴するような試合だった。

5回2安打1失点。数字としては十分に好投と言える。チームも8-1で勝った。自身は2安打まで放った。それでも本人の視線は、できたことより、できなかったことへ向いていた。五回に浴びた本塁打、84球を要したこと、五回でマウンドを降りたこと。勝利の中に残った課題を見逃してはいない。

今季8試合で4勝2敗、防御率3.25。36イニングで34奪三振を記録しており、奪三振数はほぼ投球回数と同じ水準にある。決して三振を奪えない投手ではない。一方で15四球を与えており、より少ない球数で長いイニングを投げるためには、制球面を含めて改善できる余地も残されている。

ここから先、重要になるのはいかに進化を続けられるか、という点だろう。

相手打線も伊原の特徴を研究してくる。登板を重ねれば、どの球種を狙うのか、どのカウントで勝負してくるのかという対策も進む。その中で伊原自身も投球を変え続けなければならない。広島戦のように悪かった前回登板を振り返り、修正して次の試合へ持ち込めるか。その積み重ねが、ローテーション投手として定着できるかどうかを左右する。

4勝目は、まだまだ満足できる数ではない。むしろ、伊原が先発投手としてさらに上を目指すための課題がはっきり見えた一勝だった。五回まで84球を要した悔しさも、モンテロに浴びた一発も、次の登板で生かせる材料になる。

かつて同世代のスターを見上げ、その差の大きさを感じていた左腕は、今では阪神のユニホームを着て一軍のマウンドに立っている。それでも、まだ追う側の感覚は失っていない。

4勝目を通過点にできるか。より少ない球数で、より長いイニングを投げ、試合を任される先発へ――。広島戦で見せた粘りと、その内容に満足しない姿勢を持ち続けることができれば、伊原陵人の2年目は、ここからさらに大きく動いていきそうだ。

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