広岡達朗氏、球児新監督の船出に物申す!

広岡達朗氏、球児新監督の船出に物申す!

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かつて西武ライオンズを常勝軍団に仕上げた名将・広岡氏の目には、藤川タイガースの動向が気になるようです。監督経験がない中での船出には、色々課題もあるでしょう。それらを乗り越えて強いチームを作ってくれるはず!球児監督の采配に期待「大」です。

“球界のご意見番”広岡達朗が「新阪神監督・藤川球児」に賛成できない2つの理由
DIAMOND onlineより)

連覇を逃した昨年の岡田阪神
今年の問題点は新監督・藤川球児?

 前季優勝の阪神は2024年、首位・巨人に3.5ゲーム差の2位に終わった。チーム打率.242はリーグ5位と振るわなかったが、防御率2.50は巨人の2.49に次ぐリーグ2位だった。

 阪神は5月末まで首位を守ることが多かったが、その後は一進一退で、広島と巨人の首位攻防を追いかける展開になった。

 9月に入ってからは猛追を続け、12日に急降下の広島に代わって2位になったが、この日広島に3連勝して首位固めに成功した巨人に追いつくことはできなかった。

 では、昨季に続き健闘した岡田彰布監督がなぜ退任したのか。スポーツマスコミは意外なニュースとして大騒ぎしたが、旧知の新聞記者の情報によると、阪神のフロントは岡田監督と関係が悪く、以前から辞めさせる意向を持っていたらしい。岡田監督就任の際、後ろ盾の阪急阪神ホールディングス・角和夫会長が球団に「2年間」という期間を示していたと見られ、球団も阪急側が監督人事に介入するのは今回だけと認識しているという。結果がどうであれ、約束通り2年で退任というわけだ。

 私は財界の複雑な関係や監督退任の経緯は知らないが、岡田の任期が2年なら2年で交代したらいいではないか。そんなことより、阪神で立派な実績を残した岡田はまだ60代。また縁があったら弱いチームに行って、強くして優勝したら立派だ。そうすれば、岡田はひと回り大きな指導者になるだろう。

 それより問題は、藤川球児が次期監督になったことだ。

野球の勝負は
7割がた投手で決まる

 彼は投手としては立派な実績を残しているOBだが、私はもともと投手出身の監督には賛成できない。監督に適しているポジションは、野球の複雑な動きや勝負について勉強し、経験を積んでいる捕手か内野手出身がいい。

 さらに藤川の不安は、二軍監督やコーチなど指導者の経験がないことだ。岡田はもちろん、巨人の阿部慎之助やヤクルトの高津臣吾、DeNAの三浦大輔、ソフトバンクの小久保裕紀、オリックスの中嶋聡、楽天の今江敏晃、ロッテの吉井理人など、ほとんどの監督は二軍監督やコーチを経験している。

それだけに、投手出身の藤川が監督なら、阪神が誰をヘッドコーチにつけるかが興味深い。野球の広い知識と経験を持つ優秀なヘッドをつけないとうまくいかないのではないか。

 野球の勝負は7割がた投手で決まる。セ・パ両リーグで監督を務め、3度日本一になった私の経験でも、同じことがいえる。

 2023年の阪神も、チーム防御率はリーグトップの2.66。先発陣はリーグナンバーワンの安定感を誇り、村上頌樹、大竹耕太郎、伊藤将司の10勝トリオを生んだ。また島本浩也、加治屋蓮、桐敷拓馬、石井大智など、それほど知られていなかった投手たちをうまく使って救援陣を構築し、最後は35セーブ、防御率1.77の左腕、岩崎優で締めた。

 なかでも16年ぶりの10連勝で突っ走った8月は、先発投手を除く救援防御率が1.58だった。

 層の厚い投手陣を構築し、それぞれの個性を生かした継投策を展開した岡田の采配は見事だったが、打線や守備位置を固定したのも球界最年長監督らしい戦略だった。

 

「ショートは8番。打たんでええ」
だが木浪大活躍の嬉しい誤算

 報道によると、岡田は就任直後の秋季キャンプで「ショートは8番。打たんでええ」と語ったという。「打たんでええ」はジョークだろうが、まずは守りの要であるショートを固め、投手の前でなんとか出塁して1番・近本近本光司、2番・中野拓夢につないでほしいという計算があったのだろう。

 実際に公式戦が始まると、岡田は外野の大砲・佐藤輝明を本来の三塁に固定し、前季ショートで135試合に出場し、打率.276を残した3年目の中野を二塁に移し、前季41試合で打率.204の5年目の強肩、木浪聖也を8番・ショートに定着させた。

 一方、優勝決定までの打順を見ると、1・2番は近本・中野、4番は不動の大山悠輔、5番は佐藤。8番は7戦目から最後までほとんど木浪を起用し、「打たんでええ」ショートは打率.267、1本塁打で期待に応えた。

 そして木浪は、セ・リーグのCSでも打率5割の大暴れでMVPを勝ち取った。阪神は選手たちが監督の描いた戦略に沿って「守り勝つ野球」を実践したのに対し、他チームが勝手につまずいて“漁夫の利”を得た形だ。

 まずヤクルトは前年の三冠王・村上宗隆の不振が最大の敗因。加えて2年連続優勝に酔った選手たちに貪欲さがなかった。巨人も阪神に何ゲームも差をつけて独走してもおかしくない戦力を持ちながら4位に終わり、2年連続でCS進出に失敗したのは、ビジョンのない原辰徳監督の責任だ。

 DeNAは今永昇太、東克樹といった好投手と、宮崎敏郎、牧秀悟という好打者がいて戦力的には整っているが、長年の負け癖が染みついているのか、大事なところで勝ち切る地力が足りない。中日は最下位に終わったが、大切なのは勝ち負けではない。この選手を育てているな、という雰囲気がなかったことだ。

侍ジャパン・井端監督の
“逆シングル”推奨に異議あり

 プロ野球のテレビ中継を見ていると、いろいろなOB評論家が登場して解説する。私に言わせると、ほとんどの解説者が現役時代の体験論を語るだけで内容が乏しく、勉強不足というほかない。

 選手としてはそこそこの実績を残して人気があっても、監督経験がないために内容に根拠と説得力が乏しく、最近の目が肥えたファンよりレベルの低い解説者が多い。つまり解説者としての資格がない評論家が多いということだ。評論家はもっと勉強して、結果論や見たままの解説をしたり、球団や選手、コミッショナーに忖度するのではなく、ファンではわからない野球の本質を語ってほしい。

 それだけに、自信たっぷりの解説を聞きながら「それは違うだろう」と驚くようなことがある。

 たとえば2023年6月18日、東京ドームで行われた交流戦、巨人-楽天がそうだった。この日は巨人の交流戦の最終戦で、菅野智之が敗戦投手になって巨人のV逸が決まった試合だが、工藤公康、福留孝介とともに解説していた井端弘和(現・侍ジャパン監督)が内野手の守備について「逆シングルのすすめ」を力説したのには驚いた。

 現役時代を巨人のショートとして過ごし、生涯「理想の守備とは何か」を追究してきた私には看過できない発言だった。

 逆シングルで行っても吉川(尚輝)は足が速いので打球の正面に入ろうとしちゃう。

 正面に入らなくてもいいので、とにかく投げやすいほうは逆シングルで入って振り向いてそのまま投げたほうがいい。とにかく逆シングルでもいいから左足で合わせたほうがいい。

 ツーアウトランナー二塁とか、状況によって1点もやれないとき、後ろに逸らしたらいけないというようなときにはあえて正面に入って確実にアウトにすることもあるかもしれないけど、ほとんどアウトにするというところでは、(右側は)逆シングルはどんどんやっていくべきだなと思う。
(日本テレビ「プロ野球セ・パ交流戦 巨人-楽天」2023年6月18日)

人工芝になったことで
信じられないエラーが増えた

 侍ジャパン(野球日本代表)の井端監督は現役時代、中日で落合博満監督に鍛えられて荒木雅博二塁手と二遊間を組んだ。その後、2016年から2018年までは巨人の内野守備走塁コーチを務めたが、「内野手は逆シングルで捕れ」というのは間違っている。

 たとえばショートが三遊間のゴロを追うとき、打った瞬間に予測して打球の正面に入るのが守備の基本だ。そのほうが確実に捕球し、素早く正確な送球ができる。私も巨人時代、ショートの守備で逆シングルで捕ったことはある。

 しかしそれは打球が速く、正面に入れないときの非常手段だった。

 常に正面での捕球を心がけるということは、それだけ早く打球に反応しなければいけないということだ。結果として、少しずつ守備範囲は広くなる。逆に三遊間や二遊間の打球をショートやセカンドが安易に逆シングルで捕るクセがつくと、反応が遅れ、守備範囲が知らぬ間に狭くなるのだ。

 安易な逆シングルを助長したのは人工芝だ。雑なプレーや信じられないようなエラーが増えたのは、イレギュラーバウンドのない人工芝に安心しきって基本プレーを怠っているからだ。

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