七夕の首位攻防、遥人が打たれ痛恨の逆転負け

七夕の首位攻防、遥人が打たれ痛恨の逆転負け

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七夕の夜、東京ドームで行われた同率首位対決は、阪神にとってあまりにも苦い一戦となった。
セ・リーグ12回戦、阪神は巨人に3-4で逆転負け。試合前まで39勝33敗1分けで巨人と並んでいた阪神は、この敗戦で2位に転落した。勝てば首位を守り、巨人との直接対決でさらに勢いをつけられる試合だった。しかもマウンドに立ったのは、開幕から無傷の10連勝を続けていた高橋遥人。今季ここまで負けなしの左腕が、伝統の一戦の初戦を託された。

序盤は、両先発の投げ合いだった。阪神打線は巨人先発・戸郷翔征の前に5回まで無安打。1回表は髙寺望夢が中飛、中野拓夢が右飛、森下翔太が8球粘って四球を選んだが、佐藤輝明は二ゴロ。2回は大山悠輔が左飛、前川右京が一飛、木浪聖也が中飛。3回は梅野隆太郎が空振り三振、高橋が中飛、髙寺が二ゴロに倒れた。4回も中野が遊ゴロ、森下が三飛、佐藤輝が空振り三振。5回は大山が見逃し三振、前川が四球で出たが、木浪が左飛、梅野が捕邪飛。攻撃の形をつくり切れないまま、スコアボードにはゼロが並んだ。

一方の高橋も、立ち上がりから走者を背負いながら粘った。1回裏は1死から浦田俊輔に左翼線二塁打を許したが、キャベッジの打席で浦田の三盗を梅野が阻止。直後にキャベッジを空振り三振に仕留め、先制点を許さなかった。2回はダルベックを右邪飛に打ち取った後、泉口友汰に右安打を浴びたが、大城卓三を見逃し三振、ティマを空振り三振。3回も笹原操希、戸郷を連続三振に斬り、2死から松本剛に三安を許しても浦田を二ゴロに封じた。苦しみながらも要所を締める。無敗左腕らしい立ち上がりだった。

だが、4回裏に均衡が破れた。先頭のキャベッジを見逃し三振に仕留めた直後、4番ダルベックにカウント1-1から左翼スタンドへ先制ソロを運ばれた。巨人が1-0。高橋にとっては痛い一発だったが、ここで大きく崩れないのが今季の強さでもあった。続く泉口を中飛、大城を空振り三振。5回はティマを右飛、笹原を二ゴロ、戸郷を三ゴロで三者凡退。6回裏も木浪の失策で松本を出したが、浦田のバント飛球を処理し、キャベッジを遊併殺に仕留めた。虎が反撃する土台は、確かにできていた。

佐藤輝が一撃で流れを変え、前川が一時は勝利を近づけた

阪神の反撃は6回表に訪れた。5回まで無安打に封じていた戸郷が負傷により降板し、巨人は2番手・船迫大雅を投入。先頭の高橋は一ゴロに倒れたが、1死から髙寺が中前へチーム初安打を放った。続く中野は四球。ここで阪神は1死一、二塁と、この日初めて得点圏に走者を進めた。森下は空振り三振に倒れて2死となったが、打席には4番・佐藤輝。巨人は左腕・高梨雄平へスイッチした。

追い込まれながらも、佐藤輝は粘った。3ボール2ストライクから、左翼へ逆転の2点適時二塁打。5回まで沈黙していた打線が、4番の一振りで試合をひっくり返した。髙寺、中野が生還し、阪神が2-1。続く大山は赤星優志の前に遊ゴロに倒れたが、重苦しかった試合の空気は一変した。

7回表には、さらに前川が続いた。先頭で打席に入ると、1ボール2ストライクから右翼スタンド中段へ4号ソロ。2-1から3-1へ。前川はこの試合、2回に一飛、5回に四球、7回に本塁打、9回に四球。2打数1安打1打点、2四球の内容だった。阪神はこの一発でリードを2点に広げた。無敗の高橋に2点の援護。流れだけを見れば、勝利は阪神へ傾いたようにも見えた。

ただ、終盤の攻撃で取り切れなかったのも痛かった。8回表、阪神は再び好機をつくる。先頭の髙寺が右前打で出塁し、二盗に成功。判定を巡って巨人がリクエストを要求したが、リプレー検証後も判定は変わらなかった。中野が四球を選び、無死一、二塁。打席には森下、佐藤輝、大山と続く中軸。1点差に詰められた後の攻撃としては、絶好の再逆転機だった。

しかし、ここであと1本が出なかった。森下は7球粘った末に外角高めの直球に空振り三振。佐藤輝は左飛。大山は一打同点の場面で投ゴロに倒れた。6回に佐藤輝、7回に前川が見せた反撃の勢いは、8回にもう一度爆発することはなかった。9回表も、前川が四球で出て代走・植田海が送られたが、熊谷敬宥の代打・福島圭音は外角高めのストレートを打って左飛。梅野が右飛、木下里都の代打・嶋村麟士朗が空振り三振に倒れ、最後まで1点は遠かった。

暗転の七回、106球目を坂本に運ばれた

勝負の分岐点は、やはり7回裏だった。3-1。阪神が2点をリードし、マウンドには高橋。ここまで6回を投げて1失点。ダルベックのソロこそ浴びていたが、要所で踏ん張ってきた。だが、先頭のダルベックに中堅への二塁打を許したところから、空気が変わった。続く泉口には四球。無死一、二塁。高橋自身も試合後、この四球を悔やんだ。1本の長打と1つの四球が、首位攻防の流れを一気に揺らした。

ここで巨人は代打・岸田行倫を送る。阪神ベンチからはコーチがマウンドへ向かった。高橋は内角高めのスライダーで岸田を遊直に打ち取り、まず1アウト。続くティマも低めの直球で中飛に仕留めた。無死一、二塁から2死一、二塁。2点リードの高橋なら、このまま切り抜ける。そう思わせるだけの流れを、左腕は一度は引き戻しかけた。

しかし、ここで巨人が切ったカードが代打・知念大成だった。左腕の高橋に対し、左打者の知念。評論家はこの場面を、伝統の一戦の“ミソ”と評した。知念は2死一、二塁から遊撃への内野安打。打球は外野へ抜けなかったが、走者を進めるには十分だった。2死満塁。抑え切ったはずのピンチが、もう一度最大化した。

そして、代打・坂本勇人が登場した。赤星の代打として送られた背番号6に、東京ドームの歓声は一気に膨らんだ。坂本は試合後、積極的に仕掛ける気持ちで打席に入ったことを明かしている。高橋と、この日今季初バッテリーを組んだ梅野が選んだのは初球のツーシーム。梅野は「最後は遥人のベストな球」と受け止めた。考え抜いた末の勝負球だった。

だが、その1球を坂本は逃さなかった。2死満塁から中堅への走者一掃の適時二塁打。スコアは3-4。阪神は一気に逆転を許した。高橋はここで降板。6回2/3、106球、打者27人、被安打7、被本塁打1、奪三振7、与四球1、4失点4自責点。今季初黒星がつき、開幕から続いた連勝は10で止まった。昨季最終登板以来、290日ぶりの黒星でもあった。

直後、2番手・工藤泰成が松本を二ゴロに打ち取って7回裏を終えた。8回裏は木下が浦田、キャベッジに連続四球を与えたが、ダルベックを空振り三振、泉口を右飛、岸田を一ゴロに封じ、追加点は許さなかった。救援陣は傷口を広げなかった。それでも、7回裏の3点が最後まで重くのしかかった。

 

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高橋は責めを背負い、藤川監督は信頼を崩さず

試合後の高橋は、言葉を選びながらも、責任を自分に向けた。坂本に打たれた場面については、相手が上だったと受け止めた。満塁に至るまでの過程では、泉口への四球、知念への内野安打、ダルベックへの本塁打と二塁打を挙げ、どの場面でも梅野と最善のボールを選んだとしながら、最後は力不足だったと話した。連勝についても、自分一人のものではなく、チームに作ってもらったものだという思いをにじませた。

この日の高橋は、決して序盤から快投一直線ではなかった。1回に浦田へ二塁打、2回に泉口へ右安打、3回に松本へ三安。4回にはダルベックに先制ソロを浴びた。それでも6回まで1失点にまとめ、味方の反撃を待った。佐藤輝の逆転打、前川のソロで3-1とリードをもらった後も、7回に2死までこぎつけていた。だからこそ、最後の1球の重さが際立った。高橋自身も、ただ悔しいという思いを口にした。

梅野もまた、バッテリーとして敗戦を受け止めた。坂本への初球については、高橋にとってのベストな球だったと振り返り、勝負の世界である以上、次に勝てるようにやっていくしかないと前を向いた。登板前後、試合中も高橋とコミュニケーションを取り、手応えを感じた部分と悔しさの両方があったという。開幕からの連勝は止まったが、積み上げてきたものが消えるわけではない。梅野の言葉には、バッテリーとしてやり直す覚悟があった。

藤川球児監督も、信頼を崩さなかった。7回の代打・知念のところから勝負が大きく動いたと見つつ、高橋と梅野については十分にやってくれたと評価した。高橋はこれまで、ああいう場面できっちりイニングを終わらせてきた投手。次も同じような場面で投げ切ってくれるはずだと、指揮官は言葉を重ねた。痛恨の敗戦であっても、無敗左腕を責める空気はなかった。

もちろん、負けは負けだ。巨人との同率首位対決に敗れ、阪神は39勝34敗1分け。巨人は40勝33敗2分けで単独首位に立った。上位争いの中で、1点差ゲームを落とした痛みは小さくない。巨人が坂本、知念らを勝負どころで送り込み、必死さを見せた一方で、阪神にとっては嫌な負け方になった。ただし、力負けではない。佐藤輝は打った。前川も打った。梅野も序盤に浦田の三盗を刺した。勝てる要素は確かにあった。

だからこそ、この敗戦をどう受け止めるかが問われる。高橋の連勝は10で止まり、球団79年ぶりとなる開幕11連勝の快挙はならなかった。それでも、シーズンは続く。七夕の首位攻防で突きつけられたのは、無敗左腕にも敗れる夜があるという現実と、勝ち切るために必要な最後の1本、最後の1球の重みだった。痛恨の3-4。だが、ここで沈むわけにはいかない。高橋の悔しさ、梅野の覚悟、藤川監督の信頼。そのすべてを次の1勝につなげられるか。首位奪回へ、阪神の真価が問われる。

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