阪神が、勝てる流れをつかみながら、最後に広島にのみ込まれた。
6月27日、マツダスタジアムで行われた広島戦。4日ぶりの実戦となった一戦は、阪神が二回、四回と2度リードを奪いながら、そのたびに追いつかれ、八回に決勝点を許す2-3の逆転負け。10安打を放ちながら2得点に終わり、拙攻と勝負どころのミスが重くのしかかった。
試合は序盤から阪神が主導権を握りかけた。一回表、先頭の髙寺望夢が右前打で出塁。中野拓夢がきっちり捕犠打を決めて一死二塁としたが、森下翔太は遊ゴロ、佐藤輝明は二直に倒れ、先制機を逃した。それでも二回、攻撃陣は再び床田を攻めた。先頭の大山悠輔が四球で歩き、前川右京が右前打、木浪聖也も右前打で続いて無死満塁。ここで坂本誠志郎の遊ゴロの間に三走・大山が生還。さらに捕手・石原の一塁送球が乱れ、阪神が1点を先制した。
ただ、ここで畳みかけられなかったことが、結果的に最後まで響いた。なおも一死二、三塁。打席には先発投手の村上頌樹。阪神ベンチはスリーバントスクイズを仕掛けたが、村上は空振り三振。さらに三塁走者・木浪も本塁でタッチアウトとなり、一気に加点機がしぼんだ。試合後、藤川球児監督はスクイズなど動いた采配について「それは勝負ですからね」と語り、勝ちにいくための一手だったことを強調した。それでも、1点を取りにいった場面で、逆に流れを完全には引き寄せられなかった事実は残った。
三回表にも阪神は大きなチャンスを作った。先頭の髙寺が左翼線二塁打。中野の二ゴロで三進し、森下が四球を選んで一死一、三塁。続く佐藤輝の一ゴロは一塁・坂倉が三塁へ送球し、いったんは三塁アウトの判定となったが、阪神がリクエスト。判定は覆り、フィルダースチョイスで一死満塁となった。流れが来てもおかしくない場面だった。しかし、大山は空振り三振、前川は三飛。二回に続いて、満塁の絶好機で追加点を奪えなかった。
その裏、広島は一振りで試合を振り出しに戻した。三回裏、先頭の名原典彦が村上のツーシームを捉え、左翼ポール際へ3号ソロ。1-1。阪神にとっては、二回、三回と追加点の機会を逃した直後の同点弾だった。村上は今季、登板3試合連続被弾となったが、試合後には「気にしすぎてボール、ボールになってフォアボール、そういうのが一番良くない。またどんどん攻めたい」と前を向いた。結果として、この言葉通りに腕を振り続けたが、この日は広島の1番・名原を最後まで止められなかった。
髙寺が3安打1打点 若虎の働きも、好機であと一本が出ず
阪神が再び前に出たのは四回だった。先頭の木浪は遊ゴロに倒れたが、坂本が左中間二塁打で出塁。続く村上も中前打で一死一、三塁とした。ここで一番に入った髙寺が一ゴロ。坂倉が本塁へ送球したが、三走・坂本の生還には間に合わず、記録は一野選。阪神が2-1と勝ち越した。髙寺には打点が記録され、打線の起点としても、勝ち越し場面の打者としても存在感を見せた。
髙寺は一回に右前打、三回に左翼線二塁打、九回にも左前打を放ち、5打数3安打1打点。今季2度目の猛打賞で、「1番」としての役割を果たした。藤川監督も試合後、髙寺について「結果も出ていますしね。本人の中で目指すところと言いますか、それはしっかりあると思うので続けてもらって」と評価した。「大山バット」での猛打賞、鯉キラーとしての働きは、敗戦の中でも確かに輝いた。
一方で、打線全体としては流れを突き放すだけの迫力を欠いた。五回表は、広島2番手のターノックの前に佐藤輝が空振り三振、大山が見逃し三振、前川も空振り三振。三者連続三振で、勝ち越した直後の攻撃をあっさり終えた。六回も遠藤に対し、木浪が中飛、坂本が見逃し三振、村上が左飛。七回には髙に対して、一死から中野が遊撃内野安打、森下が左前打で一死一、二塁としたが、佐藤輝が遊ゴロ併殺打。追加点のチャンスは、またも消えた。
特に重かったのは中軸の沈黙だった。佐藤輝は一回二直、三回一野選、五回空振り三振、七回遊併打で4打数無安打。連続試合安打は10で止まった。森下は四球と左前打で出塁したが、得点にはつながらず、大山は二回に四球、八回に右二塁打を放った一方、三回一死満塁では空振り三振、五回には見逃し三振だった。交流戦終盤から復調を見せていた大山も、この試合では三回の満塁機、五回の見逃し三振と、雨天中止を挟んだ影響もあったのか勝負どころで結果を残せなかった。
阪神は10安打。広島も10安打。安打数は同じだった。それでもスコアは2-3。差は、塁上の走者をどう返したか、勝負どころでどう一点を取り切ったかにあった。阪神は二回、三回、七回、八回と、流れをつかみ直す場面を何度も作った。だが、そこであと一本、あと一つの進塁、あと一つの成功が足りなかった。
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村上、粘投も八回力尽く 名原4安打、坂倉に109球目を運ばれる
村上は苦しいながらも粘った。初回、先頭の名原に右前打を許し、菊池涼介の投犠打で一死二塁。野間峻祥を空振り三振に仕留め、坂倉を一ゴロに打ち取って無失点で立ち上がった。二回も小園海斗に中前打、佐藤啓介に右前打を浴び、床田の捕犠打で一死二、三塁のピンチ。しかし石原を三直、矢野雅哉を二ゴロに抑えた。序盤から走者を背負いながらも、決定打は許さなかった。
だが、三回に名原に同点ソロを浴びた。四回は小園を中飛、佐藤啓を見逃し三振、代打・ファビアンを一ゴロで三者凡退。勝ち越した直後の五回裏には、先頭・石原に左前打を許した。矢野は送りバント失敗の捕ゴロとなったが、名原にこの日3本目となる右前打を浴び、一死一、三塁。ここで菊池に中犠飛を許し、広島が2-2の同点に追いついた。阪神は二度目のリードも守り切れなかった。
それでも村上は六回を三者凡退。坂倉を見逃し三振、小園を二ゴロ、佐藤啓を遊ゴロに封じた。七回は先頭の大盛穂を右飛、石原に左前打を許したが、矢野を空振り三振。さらに石原の二盗を坂本が刺し、結果的にこの回も無失点で切り抜けた。捕手の坂本は試合後、村上について「8回どうこうより、頑張って粘り強く投げてくれている」とねぎらい、「8回にまだマウンドに上げてもらえるのは、これまで積み上げてきたものがあるから」と語った。藤川監督も「粘り強くやってくれましたし、十分な投球になっていたと思います」と評価した。
問題は八回だった。2-2のまま迎えた裏の広島の攻撃。先頭の名原がフルカウントから右前打。これで名原は4打数4安打。菊池がこの日2本目の投犠打を決め、一死二塁。野間が左前打で続き、一死一、三塁。ここで打席に坂倉。村上の109球目、内角球を右前へ運ばれた。三走・名原が生還し、2-3。これが決勝点となった。
坂本はこの場面について「あそこで勝ち越されたのはバッテリーとして悔しい」と話した。一方で、狙い通りに差し込んだボールが右前へ落ちた内容でもあった。村上はここで降板。7回1/3、109球、10安打3失点。被安打10は今季ワーストとなり、5敗目を喫した。デーゲーム初黒星。しかし村上自身は「また来週もある。しっかり注意したい」と前を向いた。
広島の名原は、右前打、左本、右前打、右前打の4安打1打点。プロ初の4安打で、三回の同点弾、五回の同点犠飛につながる出塁、八回の決勝ホームインと、試合の流れを何度も動かした。藤川監督は名原に4安打を許したバッテリーについて問われ、「それはミスではないですけどね。相手の打者が素晴らしい状態であるということ」としたうえで、バッテリーとしてのアプローチは考えていかなければならないと語った。メディアの報道でも同じ打者に4安打された点に触れ、コースと緩急で的を絞らせないことの重要性が示されている。
八回のバント失敗、九回の三振ゲッツー 最後まで流れをつかめず
この試合を象徴したのは、八回表から八回裏にかけての攻防だった。2-2の八回表、阪神は先頭の大山が右翼線二塁打。勝ち越しの走者がいきなり得点圏に進んだ。ここで藤川監督は、前川の代打に熊谷敬宥を送った。狙いは明確だった。走者を三塁へ進め、1点を取りにいく。しかし、初球はバントをファウル。続く2球目、投前に転がした打球で二走・大山が三塁を狙ったがアウト。阪神はリクエストを要求したが、判定は覆らなかった。
一死一塁となり、チャンスは縮小した。木浪は左飛、坂本は空振り三振。この回、阪神は勝ち越しの絶好機を逃した。その直後の八回裏、広島は名原の右前打、菊池の投犠打、野間の左前打、坂倉の右前適時打で勝ち越し。野球の流れとは、かくも残酷だ。阪神が送れなかった直後、広島は送って、つなぎ、決めた。
熊谷は試合後、自身のミスが敗因だと語った。「あそこで決めると決めないとでは流れが全然違う。その後に点を取られているので。悪い流れをつくったと思っています」。さらに「単純に僕のバントがヘタで、チームに迷惑をかけました」と反省の言葉を口にした。この日は自己最長の連続スタメンが14試合で止まり、15試合ぶりのベンチスタート。代打で与えられた大事な場面だったが、結果は痛恨の犠打失敗となった。
九回表、阪神はなおも粘ろうとした。広島は森浦大輔がマウンドへ。先頭の代打・濱田太貴は中飛に倒れたが、髙寺が左前打で出塁。一死一塁で中野に打席が回った。29歳最後の打席。中野は空振り三振に倒れ、同時に一走・髙寺も二盗失敗。三振ゲッツーで試合終了となった。中野は試合後、「実力不足です。もう、やるべきことをやるだけなので。自分たちの野球をすることだけを考えてやっていく」と悔しさをにじませた。
阪神はこの敗戦で首位陥落。巨人と同率首位で迎えた一日だったが、巨人戦が雨天中止となったため、試合を落とした阪神が順位を下げる形となった。さらに藤川政権では初の月間負け越し。広島戦はこれで4勝4敗1分けの五分となった。10安打2得点、9残塁。数字だけを見ても、拙攻の色は濃い。だが、単なる「打てなかった試合」ではない。二回のスリーバントスクイズ失敗、三回一死満塁での無得点、七回の一死一、二塁からの併殺、八回無死二塁からの犠打失敗、九回の三振ゲッツー。勝負どころがいくつもあり、そのたびに流れを完全にはつかめなかった試合だった。
それでも藤川監督は前を向いた。「床田投手を攻めていきながら。いい攻めはできていたんですけど、そこで流れが一転二転していたというところでもつれたかなと思いますけどね」。そして「しっかりまた明日、切り替えてやっていかなければ」と話した。勝負に出た采配は実らなかった。エースは粘ったが、最後に踏ん張り切れなかった。若虎・髙寺は輝いたが、打線全体では決め切れなかった。2度リードしながら追いつかれ、最後に突き放された2-3。阪神にとっては、痛みの残る一敗となった。

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