近本1号ソロが決勝点に!執念の完封リレー

近本1号ソロが決勝点に!執念の完封リレー

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10安打を浴びた阪神が、わずか2安打で勝った。
スコアは1-0。数字だけを見れば、中日が何度も塁上をにぎわせ、阪神は柳裕也の前でほとんど攻撃の形を作れなかった。それでも最後に残ったのはタイガースの白星だった。連敗を2で止め、巨人と同率首位をキープ。負ければ単独首位の座を譲る一戦で踏みとどまった。そのすべてを決めたのが、六回1死から飛び出した近本光司の今季1号ソロだった。

序盤から柳を打ちあぐねた。一回、近本は二ゴロ、元山飛優も二ゴロ。2死から森下翔太が中越え二塁打を放ち、いきなり先制機をつくったが、佐藤輝明は中飛に倒れた。これが五回まで唯一の安打だった。二回は大山悠輔が遊ゴロ、前川右京が三邪飛、髙寺望夢が二ゴロ。三回も坂本誠志郎が空振り三振、伊藤将司が見逃し三振、近本が遊飛と三者凡退。四回は先頭の元山が四球を選んだものの、森下が空振り三振、佐藤輝、大山がともに中飛。五回も前川の二ゴロ、髙寺の左飛、坂本の遊ゴロで終わった。柳の前に、二回から五回までは安打すら出なかった。

重苦しい展開を、近本が一振りでひっくり返した。六回、先頭の中野拓夢が左飛に倒れ、1死走者なし。カウント2-1から柳が投じた内角のカットボールをとらえた打球は、右翼スタンドへ一直線に飛び込んだ。今季47試合目、213打席目でようやく生まれた1号。これで11試合連続安打、14試合連続出塁となった。近本は「とにかく塁に出て後ろにつなぐ」ことを意識していたと振り返った。長打を狙ったというより、出塁とコンタクトを求めた打席。その一打が、この試合で唯一スコアボードを動かした。

柳は六回91球、21打者に2安打1四球、4奪三振。許した得点は、この一発による1点だけだった。ホームランの直後、元山は遊ゴロ、森下は空振り三振。七回は佐藤輝が一ゴロ、大山が三ゴロ、熊谷敬宥がセーフティーバントを試みるも投ゴロ。八回も髙寺が一ゴロ、坂本が四球、中野が中飛、近本が左邪飛に倒れた。阪神は近本の本塁打以降も追加点を奪えなかった。最終的な打撃成績は26打数2安打。森下の二塁打と近本の本塁打、その2本だけである。

それでも、近本は試合後にこの白星を「今日勝つのと負けるので全然違う」と表現した。阪神にとってシーズン100試合目。試合後の成績は55勝44敗1分で、巨人と勝率で並ぶ首位。DeNA、中日と2カード続けて負け越したものの、11日から東京ドームで始まる巨人との直接対決を前に、3連敗だけは阻止した。大量点でも、打線爆発でもない。苦しい夜に必要な一本を、リードオフマンが届けた。

伊藤将司、走者を背負っても本塁を踏ませず

近本の一発が決勝点になったのは、その前に伊藤将が五回まで「0」を並べ続けたからだ。内容は決して楽ではない。一回から1死後に村松開人、細川成也の連打で一、二塁。それでもサノーを空振り三振、石川昂弥を中飛に打ち取り、最初のピンチを切り抜けた。二回は石伊雄太を一邪飛、鵜飼航丞を投ゴロ、岡林勇希を遊ゴロ。この日唯一と言っていい、静かなイニングを三者凡退で終えた。

三回も簡単ではなかった。柳を三ゴロに打ち取った後、福永裕基に三塁内野安打、村松に中前打を許して1死一、二塁。細川の打席で二塁走者・福永がスタートしたが、坂本が三盗を阻止した。その間に一塁走者・村松は二塁へ進んだものの、2死となったことで状況は大きく変わる。伊藤将は細川を二ゴロに仕留めた。中日が連打でつくった好機を、坂本とのバッテリーで消した。

四回には、さらに大きなプレーがあった。サノーを中飛に仕留めた後、石川昂に四球、石伊に左前打を浴びて1死一、二塁。鵜飼の打席で二塁走者・石川昂へのけん制は当初セーフと判定されたが、阪神がリクエスト。リプレー検証で判定が覆り、石川昂はタッチアウトとなった。伊藤将自身もこのけん制について「うまくいってよかった」と振り返った。続く鵜飼をワンバウンドする球で空振り三振。失点につながりかねない局面を、投球だけでなく自らのけん制でも断ち切った。

五回も粘った。岡林に一塁内野安打を許し、柳の送りバントで1死二塁。福永には四球を与えて一、二塁となった。村松の左飛で2死一、三塁となり、打席には細川。一打先制の場面で、伊藤将は二飛に打ち取った。五回97球、21打者、6安打2四球、3奪三振。それでも失点はゼロ。三者凡退は二回だけだったが、走者を出したイニングで一本を許さなかった。

しかも、この日の相手先発・柳は横浜高の2学年先輩。互いに走者を背負った場面でのフィールディングやけん制にも定評がある同校OB同士の投げ合いとなった。伊藤将は試合後、柳に「負けないように」と投げたと振り返り、「粘って無失点でこられてよかった」と胸をなで下ろした。柳が六回2安打1失点なら、伊藤将は五回6安打でも無失点。投球内容の形は違っても、先にホームを踏ませないという一点で、両投手の我慢比べは続いた。

藤川球児監督も、走者を出しながら守備に助けられて踏ん張った先発左腕を見ていた。完璧に相手をねじ伏せた五回ではない。だが、打線が柳に封じ込まれている状況で、先に1点を失えば試合はさらに苦しくなる。そこでスコアを動かさなかったことに価値があった。伊藤将が「0-0」を六回へ持ち込んだからこそ、近本のソロが「先制弾」であり、そのまま「決勝弾」になった。

 

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木下、工藤の「100マイルコンビ」が鉄壁リレー

六回からはリリーフ陣の仕事になった。0-0で木下里都が2番手として登板。先頭のサノーを三ゴロに仕留めたが、石川昂に内野安打、石伊に左前打を許し、1死一、二塁。中日はここで鵜飼に代えてボスラーを送った。木下は代打を見逃し三振。続く岡林を二ゴロに打ち取り、無失点で切り抜けた。1回29球、2安打1奪三振。直後の六回裏に近本が先制弾を放ったため、木下に今季3勝目がついた。

内容には木下らしい剛球もあった。石川昂への初球で自己最速タイの161キロを計測。それでも、本人が強調したのは球速ではなく切り替えだった。1死から連打を浴びても、走者の存在を引きずらず「打者、打者」と頭を切り替える。ボスラーから三振を奪い、岡林まで仕留めてスコアボードに0を残した。2024年度ドラフト3位の木下がつなぐと、次に出てきたのは同じ24年度に育成1位で入団した工藤泰成だった。

1点をもらった七回、工藤は代打・高橋周平を空振り三振、福永を三ゴロ、村松を左飛。まず三者凡退で流れを渡さなかった。さらに藤川監督は八回も工藤に託した。先頭の細川に中前打を許したが、サノー、石川昂を連続空振り三振。2死から、この日3安打目となる左前打を石伊に浴びて一、二塁となったものの、最後はボスラーを中飛に打ち取った。2回36球、8打者、2安打3奪三振、無失点。1点差での回またぎを完遂した。

2日前のカード初戦では、阪神は九回2死から逆転を許して敗れていた。だからこそ、八回2死一、二塁の空気は軽くなかった。内野陣もマウンドへ集まった。それでも工藤はボスラーを中飛。自身も、毎回3人で終えられるわけではないからこそ、走者を出した後にどれだけ冷静でいられるかが重要だと振り返っている。藤川監督が2イニングを任せた采配に、内容で応えた。

今岡真訪氏が注目したのは、工藤の「速さ」だけではなかった。160キロを超える直球が最大の武器として打者に意識される一方、実際の投球では変化球も多い。この日奪った3三振は、すべて変化球だったという。打者はまず剛速球に遅れないようタイミングを取らざるを得ない。その状態で変化球を使われるところに、工藤の狙いづらさ、打ちづらさがあると分析した。速球の数字が目を引く右腕だが、この日の2イニングは「160キロを投げる投手」という説明だけでは足りなかった。

木下と工藤は、ともに登板した試合で7月16日の中日戦から7連勝。木下は工藤が2イニングを抑えた投球を高く評価し、自分も負けないように頑張ると話した。一方の工藤も、木下を単純な「ライバル」と見るのではなく、2人ともゼロで後ろへつなぐことが仕事だと強調した。藤川監督も、工藤が2イニングを投げたことで、その後の継投をきれいにはめられたと評価している。2人の「100マイルコンビ」が六、七、八回をゼロで埋め、最後に最も経験豊富な左腕へバトンを渡した。

岩崎が9球で締めた 10安打されても最後までゼロ

九回、マウンドに上がったのは岩崎優だった。1点差。先頭は岡林。岩崎は空振り三振に仕留め、まず一つ。続く代打・阿部寿樹を中飛。最後は、この日内野安打と四球で出塁していた福永を三ゴロに打ち取った。わずか9球の三者凡退。近本が六回に奪った1点を、そのまま最後まで守り切った。今季11セーブ目、通算131セーブ。山本和行を抜き、球団単独2位に浮上した。

岩崎の言葉は、この緊迫した九回とは対照的なほど静かだった。大事な試合であっても、やることは変わらない。一人一人の打者に集中する。それだけだった。7月17日の広島戦以来、23日ぶりのセーブ。試合後には木下、木浪聖也、梅野隆太郎らが笑顔で迎え、藤川監督もハイタッチを交わした。131セーブという数字についても、岩崎は一つずつ積み重ねていく姿勢を崩さなかった。派手な言葉より、9球で終わらせた内容そのものが雄弁だった。

藤川監督にとっても、この九回は一つの判断だった。岩崎の起用については固定的な形と決めつけず、「戦略の中の一つ」という位置付けを示している。この日は伊藤将が五回まで投げ、木下が六回、工藤が七、八回を担当。工藤の回またぎが成功したことで、最後に岩崎を置く形が成立した。誰か一人が九回を守った試合というより、先発から救援まで役割をずらさずつないだ末の完封だった。

振り返れば、中日は一回に2安打、三回に2安打、四回に1安打1四球、五回にも1安打1四球。六回は木下から2安打、八回は工藤から2安打を放った。最終的には34打数10安打、2四球。それでもホームは一度も踏めなかった。阪神は伊藤将が五回、木下が一回、工藤が二回、岩崎が一回。4人で9イニングをつないで完封した。中日の石伊は4打数3安打、村松と細川もそれぞれ2安打。それでも得点は0だった。ヒットの「数」ではなく、得点させないところで阪神が勝った。

もちろん、勝利によって攻撃面の課題まで消えたわけではない。阪神は26打数2安打。二塁打の森下と本塁打の近本以外は無安打だった。金村義明氏は、残り43試合ではベンチの用兵やタクトが重要になるとの見方を示し、苦しい時ほど首脳陣が試合を動かす必要性や中野の起用法にも目を向けている。今岡氏も「中日10安打、阪神2安打」という内容を踏まえた上で、ここからは勝つこと自体が重要になると論じた。勝った事実と、打線が抱える課題は分けて考える必要がある。

それでも、首位争いの最中に「内容が悪いから勝利の価値も半分・・・」ということはない。近本が柳の一球を仕留め、伊藤将が走者を出しても耐え、木下が六回のピンチを切り抜け、工藤が二イニングを背負い、岩崎が9球で扉を閉めた。藤川監督は11日からの巨人との直接対決を前に「敵は内にあり」と語り、相手よりもまず自分たちの野球に目を向ける姿勢を示した。勝ってもおごらず、負けてもへこたれず、前向きに戦い続けるという考えで首位攻防戦へ向かう。

近本の1号が生んだ、たった1点。その1点を勝利に変えるまでには、27個のアウトすべてが必要だった。森下の二塁打と近本の本塁打しか出なかった夜。相手には10本もの安打を許した夜。それでもスコアボードには最後まで九つの「0」が並んだ。

2安打で1点を取り、10安打を浴びて0点に抑える。

華やかな勝ち方ではない。だが、落とせない一戦で先発、守備、若い剛腕2人、そして岩崎までが一本の線でつながった。近本の一振りで得た虎の子の1点を、最後の一球まで離さなかった。阪神が京セラドームでつかんだ1-0は、まさに投手陣の粘りと執念で拾い上げた白星だった。

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