猛虎12安打10得点!首位攻防戦を制し単独首位に

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猛虎打線が宿敵をのみ込んだ。
阪神は7月9日、東京ドームで行われた巨人との首位攻防戦に10-2で快勝。12安打で10得点を奪う猛攻を見せ、同率首位で並んでいた巨人との3連戦を2勝1敗で勝ち越し、単独首位へ浮上した。

圧勝劇の号砲を鳴らしたのは、23歳の若き大砲・前川右京だった。

試合は決して阪神ペースで始まったわけではない。先発の伊原陵人が一回、先頭・浦田に右前打を許し、松本の犠打、キャベッジへの四球、ダルベックの三塁内野安打で1死満塁。ここで泉口の左犠飛によって先制点を奪われた。

だが、猛虎打線はすぐに牙をむいた。

二回、先頭の佐藤輝明がストレートの四球を選ぶ。続く大山悠輔の遊ゴロで走者が入れ替わり、1死一塁。打席には「6番・左翼」でスタメン出場した前川が入った。

巨人先発・則本の初球を見送り、カウント1-0。そして2球目の外角146キロ直球を迷わず振り抜いた。打球は右中間へ高々と舞い上がり、そのままスタンドへ一直線。前川自身、打った瞬間に「いくかなと思った」という完璧な一撃だった。

逆転の5号2ラン。1-0から一瞬で1-2となった。

前川はこれで直近5試合で4本塁打。2024年に記録したシーズン4本を早くも上回り、自己最多の5号に到達した。巨人との首位攻防戦という大舞台で、6番定着を狙う若き大砲が、これ以上ない「一発回答」を示した。

試合後のヒーローインタビューでは、先制された直後の打席について「1点ほしいなと思ったんで。打ててよかったです」と振り返った。派手な一発とは対照的に、その言葉は淡々としていた。

この日の先発・伊原は智弁学園高の先輩でもある。「伊原さんが勝ててよかったです」。自身の本塁打以上に、先輩左腕の勝利を喜んだ。

好調の理由を問われても「本当にこつこつ、1打席1打席頑張ります」と答え、首位浮上にも「あんまり順位とかはそんな。1試合1試合頑張りたい」と浮かれる様子はない。

だが、そのバットが今の阪神打線にもたらしている効果は大きい。藤川球児監督も「前川が非常に機能することで、全体がまた、打線が長くなりますので」と評価した。

クリーンアップの後ろに前川が座ることで、相手投手は一息つくことができない。この日はさらに7番・熊谷敬宥も2安打。藤川監督は「さらに熊谷も、いい状態ではありますので」と続けた。

上位打線だけを警戒すれば済む打線ではない。3、4、5番の後ろに長打力を備えた前川が控え、その後ろからも熊谷が好機をつくる。この「打線の長さ」こそ、12安打10得点につながった大きな要因だった。

前川は智弁学園高時代、「手の皮がなくなるまで振っていた」と語り継がれるほどバットを振り込んだ。さらに岡田彰布顧問から教わった「傘差し打法」も実を結びつつある。積み重ねてきたものが、5戦4発という結果になって表れている。

この試合の流れを決定づけた最大の一打として、前川の逆転弾には大きな価値があった。森下も、佐藤輝も、大山も打った。それでも、1点を先制された直後に試合をひっくり返した前川の一発がなければ、展開は違っていた可能性がある。それほど大きな意味を持つ一打だった。

ロマンを感じさせる若手から、相手が恐れる本物の大砲へ。前川が、その階段を一段ずつ上っている。

佐藤輝、大山、髙寺、森下で5イニング連続得点

前川の逆転弾は、猛虎打線爆発の始まりにすぎなかった。
二回に2点を奪って逆転すると、三回からも阪神の攻撃は止まらない。

三回、先頭の伊原が空振り三振、髙寺望夢も二ゴロに倒れ、簡単に2死となった。しかし、ここから得点を奪えるのが、この日の阪神打線の強さだった。
2番・中野拓夢が外角球を左前へ運び、2死一塁。続く森下が死球を受けて一、二塁とした。

ここで4番・佐藤輝が勝負強さを発揮する。
カウント1-1からの3球目を捉えると、打球は中堅方向への適時二塁打。二走・中野が生還して1-3。なおも二、三塁と好機は続いた。

続く大山はカウント2-2から中前へ弾き返した。二者が一気に生還し、1-5。2死無走者から中野、森下、佐藤輝、大山と4人がつなぎ、一挙3得点。巨人先発・則本を一気に追い込んだ。

この3点の中でも、特に重かったのが大山の2点適時打だった。

勝敗を分けたポイントとして「追加点の重み」を挙げたい。阪神先発の伊原は一回に1点を失いながら、そこで踏みとどまった。一方の則本は、三回に佐藤輝の適時打で1点を失った後、さらに大山に2点適時打を許した。

1点で止めるか、さらに2点を奪われるか。その差が両先発の明暗を分け、試合の流れを大きく阪神へ傾けた。

四回も攻撃の手を緩めない。先頭の熊谷が中堅への二塁打で出塁。梅野隆太郎は三ゴロ、伊原は空振り三振に倒れて2死となったが、1番・髙寺がカウント0-1から右翼への適時打。二走・熊谷を迎え入れて1-6とした。

そして五回。先頭・森下が四球を選ぶと、佐藤輝が右翼への二塁打。無死二、三塁で再び大山を迎えた。

大山はまたも中前へ運んだ。

三回に続く2打席連続の2点適時打。これで1-8。大山は4打数2安打4打点の大仕事を果たし、試合の中盤で勝負をほぼ決定づけた。

さらに六回、2死走者なしから中野が四球を選ぶ。そして森下が高梨とのフルカウント勝負を制した。

打球は左中間スタンド中段へ飛び込む22号2ラン。スコアはついに1-10となった。

この日の森下は一回に三塁併殺打に倒れたが、三回には死球、五回には四球で出塁。そして六回にダメ押しの2ラン。3打数1安打ながら3得点2打点を記録した。打てない打席でも出塁し、最後には一発で仕留める。相手にとっては、まったく気の抜けない3番だった。

阪神は二回から六回まで5イニング連続得点。球団としては2021年5月4日のヤクルト戦以来で、巨人戦に限れば球団史上4度目のタイ記録となった。

得点内容も多彩だった。

前川の2ランで逆転し、佐藤輝の適時二塁打で追加点。大山が2打席連続の2点適時打を放ち、髙寺も適時打。最後は森下が22号2ランでとどめを刺した。

本塁打だけではない。四球、死球、単打、二塁打を絡め、2死からも得点した。

1番・髙寺は4打数1安打1打点に死球。2番・中野は3打数2安打2得点1四球。森下は1安打2打点3得点、佐藤輝は2安打1打点2得点、大山は2安打4打点、前川は逆転2ラン、熊谷は2安打1得点。途中出場の福島圭音も八回に中前打を放った。

計37打数12安打、10得点、10打点。5四球と2死球も絡み、二回から六回まで途切れることなく得点を積み重ねた。

先発野手で安打がなかったのは梅野だけだったが、その梅野は扇の要として伊原ら5投手をリードした。打つべき選手が打ち、つなぐべき選手がつなぎ、守るべき選手が役割を果たす。まさにチーム全体でつかんだ10点だった。

 

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伊原、89日ぶり白星!6回途中まで4安打6奪三振

大量援護を呼び込んだのは、復帰先発の伊原の粘りだった。

腰部の張りによる長期離脱を経て、4月19日以来、81日ぶりとなった一軍の先発マウンド。立ち上がりは決して順調ではなかった。

一回、先頭・浦田に右前打を許す。松本の犠打で1死二塁となり、キャベッジには8球粘られた末に四球。さらにダルベックの三塁内野安打で1死満塁となった。

泉口の犠飛で先制点を失った。

しかし、ここで崩れなかった。

続くティマを空振り三振に仕留め、失点を1で止めた。この粘りが大きかった。

伊原自身も「あそこを最少失点で粘れたのは良かった」と振り返った。前川が直後の二回に逆転2ランを放ったことで、試合の流れは一気に阪神へ傾いた。

二回は佐々木を中飛、小林と則本を連続空振り三振。三回には先頭・浦田に12球粘られたが、13球目の直球で見逃し三振に仕留めた。

「あそこで四球を出すのだけは嫌だった。我慢強くいけた」

その言葉通り、松本を空振り三振、キャベッジを遊飛。初回に苦しんだ打線を三者凡退に抑えた。

四回は先頭・ダルベックに右前打を許したが、泉口を右飛、ティマを右飛、佐々木を空振り三振。五回も代打・笹原を遊直、岸田を中飛。浦田には投手内野安打を許したが、松本を左飛に打ち取った。

六回はキャベッジを中飛に仕留めた後、ダルベック、泉口に連続四球。ここで藤川監督が交代を告げた。

最終成績は5回1/3、106球、打者23人、被安打4、6奪三振、3四球、1失点。4月11日の中日戦以来、89日ぶりとなる今季3勝目を挙げ、プロ2年目で巨人戦初勝利を手にした。

4安打のうち2本は内野安打。大きく捉えられた打球は少なく、復帰登板として十分な内容だった。

伊原は「高さを頑張るところや、コースを頑張るところ、梅野さんとコミュニケーションを取った中で、頑張るところは頑張れた」と女房役にも感謝した。

高く評価できる点が、その制球と配球だった。

右打者の内角、左打者の外角へ投じたカットボールやスライダー。そこを投球の起点とし、少し苦しんだ場面でも大事なゾーンへのボールを間違えなかった。梅野も勝負どころでその球を使い、巨人打線を封じた。

藤川監督も「コントロールがもともといいので、ファウルで少し粘られたところはありましたけど、あのあたりで根負けしないのが彼の良さ」と称賛。「本当によく帰って来てくれた」と復帰を喜んだ。

伊原降板後は木下里都が六回の2死満塁を無失点で切り抜けた。七回は門別啓人が1安打無失点、八回は津田淳哉が三者凡退。九回は今朝丸裕喜が2安打から1点を失ったものの、最後まで大勢に影響はなかった。

伊原、木下、門別、津田、今朝丸の5投手で巨人打線を7安打2失点。打線の10得点ばかりが目立つ試合だったが、投手陣も大量リードの中で試合を崩さなかった。

長期離脱中、伊原は「投げていない期間、チームに迷惑をかけていた」と責任を感じていた。それだけに、首位攻防戦での復帰勝利には特別な意味がある。

「まだまだチームの勝利に貢献できるように」

帰ってきた背番号18が、シーズン後半戦に向けて頼もしい戦力となることを証明した。

12安打10得点で宿敵粉砕!浮かれず次戦へ

最終スコアは10-2。

阪神12安打、巨人7安打。両軍失策なし。阪神は二回に2点、三回に3点、四回に1点、五回に2点、六回に2点と、5イニング連続得点で巨人を圧倒した。

巨人先発・則本から5回で10安打8得点。二番手・高梨からも森下の22号2ランで2点を奪った。

一回に先制を許しながら、直後の二回に逆転。そこから攻撃の手を緩めることなく、三回、四回、五回、六回と加点し続けた。

この試合で際立ったのは、誰か一人だけに頼らない攻撃だった。

前川が試合をひっくり返し、中野が2安打と四球で打線をつないだ。佐藤輝は2本の二塁打を含む2安打、大山は2本の適時打で4打点。髙寺が貴重な追加点を奪い、熊谷は単打と二塁打。最後は森下が本塁打で締めた。

前川の一発で始まり、大山の勝負強さで突き放し、森下の一発で完全に勝負を決める。

それぞれの役割が、一本の線になった。

5試合ぶりの複数安打を記録した中野は「自分がイメージしている通り。追い込まれてから何とかというところ。逆方向2本は、そういう打撃ができたので良かった」と手応えを口にした。

藤川監督も「タイガースとしては、いいゲームをお見せすることができたのでホッとしています」と胸をなで下ろした。

ただし、指揮官は浮かれてはいない。

巨人との首位攻防3連戦を2勝1敗で勝ち越した。初戦を落としながら、第2戦、第3戦を連勝。しかも最後は10得点の圧勝だった。

それでも、この3連戦がシーズンのターニングポイントになるかと問われると、藤川監督は「まだターニングポイントは今じゃないかなと。ペナントレースにおいてもね。全体像で見ていますので」と冷静だった。

前川も同じだった。

「まだ試合、半分くらいあるんで。あんまり順位とかはそんな。1試合1試合頑張りたいなと思います」

目の前の巨人を打ち破り、単独首位に立った。それでも、シーズンはまだ続く。だからこそ、一勝に酔わず、次の一戦へ向かう。

ただ、この日の10-2という数字が示した強さまで控えめに語る必要はない。

宿敵の本拠地・東京ドームで12安打10得点。逆転弾あり、連続適時打あり、2打席連続の2点打あり、ダメ押し弾あり。しかも、二回から六回まで5イニング連続得点。打線の上位から下位までが機能し、復帰登板の伊原が最少失点で耐え、救援陣がリードを守った。

首位攻防戦の最終戦で見せたのは、勢いだけではない。

打線の厚み。勝負どころでの集中力。先発投手の粘り。大量リードでも崩さない継投。そして、結果が出ても浮かれない指揮官と選手たち。

前川はヒーローインタビューの最後に、短く言った。

「明日も勝てるように頑張ります」

10点を奪っても、視線はもう次の試合へ向いている。

猛虎が宿敵を粉砕した夜。東京ドームに刻まれた10-2のスコアは、単なる大勝ではない。若虎の成長、中軸の破壊力、復活した左腕、そして長くつながる打線――。今の阪神が持つ力を、存分に見せつけた一戦だった。

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