このオフ、FA移籍の有無が注目されたタイガース。結果的には大山選手ら4名全員がタイガースに残ってくれましたが、来季には近本選手も移籍の可能性が浮上します。FA宣言との共生をいかにうまく行うかが、チーム編成のカギとなってくるでしょう。
【元虎番キャップ・稲見誠の話】阪神・近本の単年契約 〝大山鳴動〟の一難去って、また1年…〝FA防衛〟は27年まで続く?
(サンケイスポーツより)
11月29日の朗報から2週間も経っていない。10日、5000万円増の年俸3億7000万円(金額は推定、以下同)で更改した阪神・近本光司が会見で契約年数を明言した。
「単年です」
国内FA権を行使した大山悠輔の残留で、胸をなでおろしたのもつかの間、順当なら来季、権利を取得する近本が同じ道を選んだ。球団提示の複数年契約を固辞し、1年を選択。今オフは幸いにも〝大山鳴動〟だけで、最悪の事態は免れた。一難去って、また1年…。来年の11月から12月にかけて、虎党は不安な期間を過ごす。しかも数年に渡って続く可能性があるから、やっかいだ。
「球団とコミュニケーションを取って、話し合う時間が結構あった。すごくいい時間だった」「1年で勝負したいと思った。球団の思いもたくさん聞かせてもらって、それでも単年でいいかな、と」「みなさんが思っている感じじゃない」
言葉を費やしながらも、真意は見えてこない。単年契約のメリットを聞かれて「それは言えないでしょ」。球団から示された今季年俸3・2億円からの昇給をベースにした4年や5年契約の総額。新年俸3・7億円を基本にした複数年契約を2025年シーズン終了後に結んだ際の総額。2パターンのうち、どちらに夢があるか。単純な〝ソロバン勘定〟の結果なら、それでいい。
例えば今季143試合に出場し、チームトップの打率・287を残した巨人・吉川尚輝も来季、権利を手に入れる見込みで、1・1億円増の年俸2億円で3年契約を結んだ。一方で中日・柳裕也は3800万円減の1・1億円で単年契約を終えた。近本も柳も言えるのは「吉川ケース」ではなく「大山パターン」というワケ。
チームの戦力充実の象徴と言うべきか。順調なら26年には木浪聖也が取得し、27年は中野拓夢、佐藤輝明が揃って国内移籍の自由を得る。大山を含めれば、4年連続の〝FA防衛〟。投手陣に目を向ければ伊藤将司や大竹耕太郎も控えている。いかにして流出を防ぐか。FA組に対応しながら、いかにして次の選手を育成するか。ここ5年間の適切な対応が10年後の阪神を決めると言っても過言ではない。新旧交代を図るためには、主力の確保が条件。大山は防いだ。今度は近本の移籍回避に全力を注ぐ。
根尾昂や藤原恭大の春夏連覇を達成した大阪桐蔭コンビに注目が集まった18年秋のドラフト会議。阪神は藤原を競合で外し、立命大・辰己涼介も楽天に奪われた末に、獲得できたのが大阪ガスの近本だった。結果的に吉と出た。入団6年間の安打数は933。盗塁王は5度で、同僚の中野にタイトルを明け渡した21年は最多安打をゲット。6年連続して個人タイトルを獲得し、ベストナインとゴールデン・グラブ賞は4年連続のダブル受賞。球宴は5年連続のファン投票選出中だ。球界を代表する選手が権利を行使すれば、複数球団が興味を示すのは当然。先述した辰己も取得予定。兵庫・社高コンビの去就に視線が送られることは間違いない。
「僕も来年、その立場になるかもしれない。そういうことも踏まえていろんな話を聞いていました」
〝大山の足跡〟を念頭に近本は新年を迎える。同学年で30歳シーズンを迎える先人は巨人に声をかけられ、悩んだ末に5年総額17億円プラス出来高払いで残留を決めた。近本は1年間にどんな答えを出すのか。その決断は、12球団の勢力分布を大きく変える可能性もある。狙われる人材を保有していることがチーム力の証し。FAとの〝共生〟が次の阪神を強くする。
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