首位を走る阪神が、バンテリンドームで痛い連敗を喫した。8月26日の中日21回戦は0-4。7安打を放ちながら最後までホームを踏めず、今季7度目の零封負けとなった。中日戦は2カード連続の負け越し。前日25日の2-4に続いて敵地で連敗し、優勝マジック点灯も28日以降へ持ち越された。
試合は、いきなり守備のミスから動いた。
阪神先発は伊藤将司。初回、先頭の福永裕基に中前打を許すと、続く上林誠知が三塁へ内野安打。これを処理した三塁・佐藤輝明が一塁へ送球したが、ボールは大きくそれた。一塁側ファウルゾーンを転々とする間に一走・福永が一気に生還。記録は上林の内野安打と佐藤輝の失策で、阪神はわずか2人の打者で先制点を献上した。
それでも伊藤将は崩れなかった。なお無死二塁で細川成也を空振り三振。サノーには四球を与え、石川昂弥の中飛で二死一、三塁とされたが、最後は花田旭を空振り三振に仕留めた。失策で始まった初回を1失点だけで食い止め、二回は石伊雄太、土田龍空、涌井秀章を三者凡退。三回も福永、上林、細川を3人で退けた。
打線にも序盤から走者は出ていた。一回二死から森下翔太が中越え二塁打を放ったが、佐藤輝は中飛。二回には二死から坂本誠志郎が左前打を放ったものの、元山飛優が空振り三振に倒れた。三回は伊藤将、近本光司、中野拓夢が三者凡退。中日先発・涌井を捉え切れないまま、0-1で試合は中盤へ入った。
藤川球児監督は試合後、佐藤輝の失策について、選手はミスをしようとしてプレーしているわけではないと責めなかった。その上で、こういう時こそチームと個々が気持ちを持って翌日に向かうことがプロとして問われる、との趣旨で前を向いた。
ただ、この日の阪神を苦しめたのは一つの失策だけではない。守備で与えた1点を攻撃で取り返せそうな場面はあった。むしろ、試合の流れを決定的にしたのは、その直後に訪れた絶好機を生かせなかったことだった。
分岐点は4回 3人連続出塁も森下が本塁憤死、前川は併殺
この試合で阪神が最も得点に近づいたのが四回だった。
先頭の森下が四球を選ぶ。続く4番・佐藤輝が左前打を放ち、無死一、二塁。さらに大山悠輔も左前へ運んだ。クリーンアップが四球、安打、安打とつなぎ、涌井を一気に攻略する絶好の場面をつくった。
だが、大山の打球で二走・森下が三塁を蹴って本塁へ突入。中日左翼・細川が素早く処理し、本塁へワンバウンドの好返球を送った。森下は本塁でタッチアウト。無死一、二塁から安打が出たにもかかわらず、得点は入らず、一死一、二塁となった。
さらに前川右京が一ゴロ。サノーから遊撃・土田、再び一塁へと渡る3-6-3の併殺が完成し、一気にチェンジとなった。中日は最大のピンチを無失点で切り抜け、サノーは併殺成立にガッツポーズ。阪神にとっては、3人続けて出塁しながら1点も奪えない重い攻撃となった。
この本塁突入について藤川監督は試合後、「そういうときも必ずありますからね」と語り、結果だけを取り上げて責めることはしなかった。一方、MBSテレビで解説していた岡田彰布オーナー付顧問は異なる角度から問題を指摘した。無死の場面だったことを重視し、首位にいるチームがあそこでギャンブルをする必要があったのかと疑問を呈した。三塁で止まれば無死満塁。岡田顧問は、四球、安打、安打と続きながら無得点に終わったことの重さを指摘した。
結果論だけでは片づけられない場面だった。細川の返球は正確で、相手の好守が阪神の得点を阻んだことも事実。ただ、1点差、無死、後続にも打者が残る状況だっただけに、「アウト一つと引き換えに本塁を狙う必要があったのか」という視点も残った。
その余韻が残る五回にも、阪神は自ら好機を手放した。
先頭の坂本が空振り三振に倒れた後、元山が中前打で出塁。一死一塁で打席には伊藤将。送りバントを試みたが、打球は捕手の前へ転がり、併殺となった。前の回の前川に続く2イニング連続の併殺。走者を出しながら攻撃を広げられず、涌井を楽にさせる結果となった。
涌井は六回まで83球。阪神打線に5安打1四球を許しながら3三振、無失点にまとめた。六回は近本を中飛、中野を中飛、森下を右飛。阪神の上位打線をわずか3人で片づけてマウンドを降りた。40歳の右腕に対し、阪神は決して走者を出せなかったわけではない。それでも得点につながる一本、あるいは一つの進塁を作れなかった。
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伊藤将、粘投も福永&サノーに痛恨の2発
味方の援護を待ちながら粘っていた伊藤将にとって、悔やまれるのは中盤の2球だった。
0-1の五回。土田を二ゴロ、投手の涌井を一ゴロに仕留め、簡単に二死を奪った。ところが福永に対し、カウント2-2から左翼スタンドへソロ本塁打を浴びる。これで0-2。
さらに六回。先頭・細川を中飛に打ち取った後、4番サノーにカウント1-0から左中間スタンドへ運ばれた。こちらもソロ本塁打。阪神にとっては、四回、五回と攻撃で走者を出しながら得点できなかった直後だけに、スコア以上に重い追加点となった。
伊藤将はここで降板。5回1/3を90球、打者22人、5安打、2本塁打、4奪三振、1四球。3失点のうち自責点は2だった。初回の失策による1点を背負いながら四回まで追加点を許さなかっただけに、五、六回のソロ2発が結果的に致命傷となった。
試合後、伊藤将自身も「あの(初回の)1点で試合をつくろうと思っていた」と振り返った。その上で出た言葉が「1発でやられたなという感じ」。この試合では昨年9月10日のDeNA戦以来となる1試合2被弾を喫し、「しっかり勝てるピッチングをできたら」と悔しさをにじませた。
しかも伊藤将は登板前、バンテリンドームについて、本塁打を浴びないよう低めに投げたいという趣旨の警戒を口にしていた。その中で福永、サノーに一発を許した。大量に連打されたわけではない。だからこそ2本のソロが痛かった。
伊藤将の後を受けた神宮僚介は六回途中から登板。石川昂を遊ゴロに仕留めた後、花田に中前打、石伊に左前へ落ちる安打を許して二死一、三塁とされたが、土田を左飛に打ち取り無失点で切り抜けた。
七回からは津田淳哉が登板したが、中日の攻撃を止められなかった。先頭の代打・ボスラーにフェンス直撃の二塁打を許すと、代走に樋口正修。続く福永に中前適時打を浴び、0-4となった。上林を右飛、細川を見逃し三振とした後も、サノーに四球、石川昂に死球を与えて満塁。最後は花田を空振り三振に仕留めたが、この回1点を失った。
八回は桐敷拓馬が登板。石伊を空振り三振に取った後、土田に死球を与え、土田は代走・ロドリゲスと交代した。樋口の犠打で二死二塁となったが、福永を三ゴロに仕留めて無失点。投手陣は計9安打を許したものの、中日の得点は初回の失策、2本のソロ、七回の適時打による4点にとどめた。
勝敗を分けたのは、中日が得点につながる場面を確実にものにしたのに対し、阪神は走者を出してもホームまで返せなかったことだった。
9回無死一、二塁も中軸が沈黙 問われる「次の1点」
終盤も阪神打線は反撃の糸口をつかめなかった。
七回は中日2番手・齋藤綱記に対し、佐藤輝が一ゴロ。阪神ベンチは一塁アウトの判定を巡ってリクエストしたが、判定は変わらなかった。続く大山が三邪飛、前川も捕邪飛で三者凡退。八回は橋本侑樹を相手に、坂本が空振り三振、元山が三ゴロ、伊藤将の打順に入った代打・ガルシアも空振り三振。二イニング続けて一人の走者も出せなかった。
それでも九回、最後に意地は見せた。
中日4番手・アブレウに対し、先頭の近本が中前打。続く中野も右前打でつなぎ、無死一、二塁とした。ここで中日はアブレウから守護神・松山晋也へスイッチ。打順は3番・森下、4番・佐藤輝、5番・大山。阪神にとって、これ以上ない形でクリーンアップに回った。
だが、最後の壁を破れない。
森下は空振り三振。佐藤輝は一死一、二塁から外角低めの直球を打ったが左飛に倒れた。二死となり、最後は大山。走者一、二塁から遊ゴロに打ち取られ、ゲームセット。無死一、二塁で中軸3人を迎えながら、走者を一つも進められなかった。
阪神は31打数7安打。近本、中野、森下、佐藤輝、大山、坂本、元山がそれぞれ1安打を記録したが、長打は初回の森下の二塁打だけだった。四球は森下の1個。6三振を喫し、得点はゼロ。中でも3~5番は森下が3打数1安打1四球、佐藤輝が4打数1安打、大山が4打数1安打。3人で3安打を放ちながら打点はつかなかった。
数字だけを見れば「7安打で0点」。しかし、その中身を見ると敗因はより鮮明になる。
一回は森下の二塁打を生かせず、四回は森下、佐藤輝、大山が3人続けて出塁しながら本塁憤死と併殺で無得点。五回は元山が安打を放った直後に送りバント失敗の併殺。九回は近本、中野の連打で無死一、二塁としながら、クリーンアップが3人続けて凡退した。
一方の中日は、初回に相手の失策を得点につなげ、五回は二死走者なしから福永が一発。六回にはサノーが一発。七回は先頭・ボスラーの二塁打から福永が適時打を放った。福永は5打数3安打2打点1本塁打。阪神が好機を逃す一方、中日は少ないチャンスから着実にスコアを動かした。
前日の大野雄大に続き、この日は40歳の涌井に6回無失点。経験豊富な右腕の投球術の前に、阪神打線は最後まで主導権を奪えなかった。
藤川監督は敗戦後、結果を見てから何を言っても同じであり、試合前に準備してスタートしているという考えを示した。そしてミスや好機逸について誰か一人に責任を負わせるのではなく、チームを立て直して次戦へ向かう姿勢を強調した。
首位を走ってきた阪神にとって、1敗そのもの以上に気になるのは、その負け方だ。守備のミスで先制され、最大の好機では走塁死と併殺。先発が粘っている間に援護できず、追いかける展開で一発を浴び、最後に無死一、二塁をつくっても得点できなかった。
それでも、試合は一つずつ続いていく。藤川監督が口にしたように、問われるのはこの敗戦を翌日にどうつなげるかだ。
0-4というスコア以上に、攻守の細部で流れを手放した一戦。優勝争いが佳境へ向かう中、必要なのは大きく野球を変えることではない。走者を一つ先へ進めること、取れるアウトを確実に取ること、そして得点機で一本を出すこと。この夜できなかった一つ一つを、次の試合で取り戻せるか。首位・阪神にとって、その修正力が試される敗戦となった。
