阪神が、勝負どころで出た守備の乱れに泣いた。2026年6月3日、甲子園で行われた西武との交流戦。阪神は終盤に意地を見せたものの、2-3で敗れた。スコア上はわずか1点差。しかし、その1点の裏には、序盤から続いた拙攻、好投を続けた先発・大竹耕太郎を援護できなかった打線、そして七回表に起きた痛恨のミスが重なっていた。
試合は二回表、西武4番・ネビンの一振りで動いた。阪神先発の大竹は初回、カナリオを空振り三振に仕留めた後、滝澤夏央に左前打を許したが、桑原将志を6-4-3の併殺に打ち取り、結果的に3人で終えた。立ち上がりは悪くなかった。ところが二回、先頭のネビンに中越えの10号ソロを浴び、1点を先制された。続く渡部聖弥は遊ゴロ、古賀悠斗は左飛、長谷川信哉は三直に仕留めただけに、まさに一発だけが悔やまれるイニングとなった。
阪神打線はその裏、すぐに反撃の形を作った。先頭の佐藤輝明が左前にポテンヒットを落とし、無死一塁。大山悠輔は空振り三振、立石正広は見逃し三振に倒れたが、伏見寅威が中前打でつなぎ、2死一、二塁とした。しかし、小幡竜平は右飛。先制直後の好機を逃したことで、試合の流れは西武先発・渡邉勇太朗の手元に傾いていった。
三回以降、阪神打線は渡邉の前に沈黙した。三回裏は大竹が三ゴロ、髙寺望夢が左飛、中野拓夢が遊ゴロ。四回裏は森下翔太が四球で出塁したものの、佐藤輝が二ゴロ、大山が空振り三振、立石が一ゴロ。五回裏は伏見が遊ゴロ、小幡が一ゴロ、大竹が空振り三振。六回裏も髙寺が二ゴロ、中野が9球目を空振り三振、森下が遊ゴロに倒れた。二回に2安打を放った後、七回まで追加の安打が出ない。渡邉に対して粘る打席はあっても、得点に結びつく一本が出なかった。
その間、大竹は粘り強く試合を壊さなかった。三回表は源田壮亮を見逃し三振、渡邉を空振り三振、カナリオを中飛。四回表は滝澤を投ゴロ、桑原に中前打を許したが、ネビンを再び6-4-3の併殺に仕留めた。五回表も渡部を遊ゴロ、古賀を二直に打ち取り、長谷川に中前打を浴びたものの、源田を二ゴロ。六回表は渡邉を三ゴロ、カナリオを中飛、滝澤を二ゴロと、三者凡退で流れを渡さなかった。
だからこそ、七回表の2点は重かった。先頭の桑原に安打を許し、無死一塁。ネビンは空振り三振に仕留めたが、渡部に中前打を浴び、1死一、三塁。古賀を空振り三振に取った際、一走・渡部が盗塁を決め、2死二、三塁となった。ここで迎えたのが長谷川。打球は遊撃方向へ転がった。難しい打球ではなく、ここをしのげば1点差のままラッキーセブンの攻撃へ向かう場面だった。
しかし、小幡が打球を処理しきれず、さらに一塁へ悪送球。2つの失策が記録される間に、三走・桑原、二走・渡部が相次いで本塁へ生還した。0-1が一気に0-3。安打で崩されたのではない。四球で自滅したのでもない。好投していた大竹の足元から、試合の均衡が崩れ落ちた。長谷川は二塁へ進み、甲子園の空気は一瞬で重くなった。源田を遊飛に打ち取り、ようやく3アウトを取ったが、この2点が最後まで阪神にのしかかることになる。
大竹耕太郎は7回3失点、自責1と責められない粘投
先発・大竹耕太郎の内容は、敗戦投手という数字だけでは語れないものだった。7回を投げ、91球、打者26人、被安打6、被本塁打1、奪三振5、与四死球0、失点3、自責点1。二回にネビンのソロを浴び、七回に守備の乱れで2点を失ったが、四球はひとつも出していない。テンポを崩さず、ストライク先行で打たせて取り、味方の反撃を待ち続けた。
象徴的だったのは、ピンチを併殺で切り抜けた序盤の投球だ。初回、滝澤に左前打を許して1死一塁とした場面では、桑原を遊ゴロ併殺。四回には桑原に中前打を浴びた直後、ネビンを遊ゴロ併殺に打ち取った。西武打線は決して大竹を攻略しきっていたわけではない。ネビンの一発を除けば、六回まで無失点。打者を走者に出しても、大量失点につながる前に断ち切っていた。
七回も、大竹自身は踏ん張っていた。先頭の桑原に安打を許した後、ネビンを空振り三振。渡部に中前打を許して一、三塁となったが、古賀を空振り三振に仕留めて2死までこぎつけた。渡部の盗塁で二、三塁とされても、あと1アウト。打球は長谷川の遊ゴロ。記録上は小幡の失策による2失点で、自責点は大竹につかない。投球内容だけを見れば、十分に試合を作ったと言える。
一方で、阪神打線はその大竹を援護できなかった。西武先発・渡邉の前に、七回まで2安打1四球で無得点。二回裏に佐藤輝の左安と伏見の中安で作った2死一、二塁を逃すと、以降は攻撃の糸口をつかめなかった。四回裏には森下が四球で出たが、佐藤輝が二ゴロ、大山が空振り三振、立石が一ゴロ。走者を出しても、得点圏で流れを変える一打が出なかった。
大竹自身も打席に立ち、三回裏は三ゴロ、五回裏は空振り三振。六回まで1点差のまま耐えたが、打線の援護は最後まで遠かった。七回裏は佐藤輝が中飛、大山が右飛、立石が9球粘った末に空振り三振。守備のミスで0-3となった直後、すぐに反撃したいイニングだったが、渡邉を崩せなかった。
八回以降、阪神ベンチは継投に入った。八回表は大竹に代わって湯浅京己が登板。西武は渡邉の代打に平沢大河を送ったが、湯浅は平沢を二ゴロ、カナリオを空振り三振、滝澤を遊ゴロに仕留め、3人で片づけた。九回表は工藤泰成が登板し、桑原を一邪飛、ネビンを空振り三振、渡部を遊ゴロ。リリーフ陣も無失点で踏ん張った。投手陣全体としては、西武打線を6安打3点に抑え、四球はゼロ。負けはしたが、投手陣が試合を壊したわけではない。
だからこそ、敗因はより明確である。大竹が作った試合を、打線が中盤まで動かせなかったこと。七回の守備で余計な2点を与えたこと。九回に追い上げたからこそ、そこまでの1点、1アウト、1プレーの重みが際立った。スコアは2-3。紙一重のようでいて、細部の差がそのまま結果に出た一戦だった。
沈黙を破った8,9回 サトテル15号2ランで甲子園が沸騰
七回まで沈黙していた阪神打線が、ようやく息を吹き返したのは八回裏だった。西武は先発・渡邉から甲斐野央へ継投。阪神は伏見に代えて島田海吏を代打に送った。島田は見逃し三振、小幡も見逃し三振で2死。流れはなお西武にあったが、ここで湯浅の代打・嶋村麟士朗が一塁内野安打で出塁した。続く髙寺も中前打でつなぎ、2死一、三塁。ようやく複数安打で走者をため、反撃の気配を漂わせた。
ただ、この場面も得点には届かなかった。中野は三ゴロに倒れ、3アウト。八回裏は無得点に終わった。それでも、完全に押さえ込まれていた打線が、終盤に初めて西武救援陣へ圧をかけたイニングだった。九回裏へ向け、甲子園の空気はまだ諦めていなかった。
そして九回裏、ドラマは突然始まった。西武は守護神・岩城颯空をマウンドへ送った。3点を追う阪神は、先頭の森下翔太から。森下は左翼へ鋭い打球を放ち、一気に三塁へ到達した。無死三塁。七回まで渡邉に封じられ、八回も得点できなかった打線が、最終回の先頭打者で一気に反撃の号砲を鳴らした。
ここで打席に立ったのが、佐藤輝明だった。この日、二回には左前へポテンヒットを放ち、四回は二ゴロ、七回は中飛。迎えた第4打席、カウント1ボール1ストライクからの一球を逃さなかった。打球は左翼方向へ伸びる。森下が三塁から悠々と生還し、佐藤輝もダイヤモンドを一周。15号2ラン。スコアは一気に2-3。3点差が、たった2球で1点差に変わった。
甲子園の空気は一変した。八回まで重く沈んでいたスタンドが、佐藤輝の一発で一気に沸き上がった。序盤から続いた沈黙、七回の痛恨ミス、好投の大竹を援護できなかったもどかしさ。そのすべてを振り払うような一撃だった。森下が三塁打で出て、佐藤輝が本塁打で返す。阪神が誇る中軸が、最後の最後で試合を壊さず、むしろひっくり返す寸前まで持ち込んだ。
さらに阪神の反撃は続いた。続く大山がストレートの四球を選び、無死一塁。ここで一塁走者・大山に代わって植田海が送られた。ベンチは同点、そして逆転を狙う態勢に入った。無死一塁、1点差。打席には立石。ここで一気に流れをつかみたい場面だったが、立石は空振り三振に倒れ、1アウトとなった。
それでも、まだ終わりではなかった。代打・坂本誠志郎が打席へ向かう。1死一塁。長打なら同点、一気に逆転サヨナラの可能性も残る場面だった。しかし、坂本の打球は三塁方向へ転がり、5-4-3の併殺。阪神は一塁アウトの判定にリクエストを行ったが、判定は覆らなかった。怒涛の追い上げは、あと一歩で止まった。
九回裏の攻撃は、敗戦の中にも強烈な印象を残した。森下の三塁打、佐藤輝の15号2ラン、大山の四球。無死から一気に同点圏まで迫った迫力は、甲子園の空気を確かに変えた。だが、最後の1点が遠かった。2-3。佐藤輝の一発は、反撃の象徴であると同時に、七回の2失点がどれほど重かったかを浮き彫りにする一発にもなった。
1点差に詰まったからこそ浮かぶ課題 打線の沈黙と守備の1プレーが勝敗を分けた
この試合の阪神は、終盤に意地を見せた。だからこそ、この負け方は悔しさが募る。九回裏に森下、佐藤輝、大山で無死一塁まで持ち込み、甲子園を一気に沸かせた。それでも勝てなかったのは、中盤までの攻撃と、七回の守備が響いたからだ。
打線全体では32打数6安打2得点。得点は九回の佐藤輝の2ランのみだった。髙寺は一ゴロ、左飛、二ゴロの後、八回に中前打。中野は一ゴロ、遊ゴロ、空振り三振、三ゴロで4打数無安打。森下は三ゴロ、四球、遊ゴロ、九回に左三塁打。佐藤輝は左安、二ゴロ、中飛、左本で4打数2安打2打点。大山は空振り三振、空振り三振、右飛、四球。立石は見逃し三振、一ゴロ、空振り三振、空振り三振で4打数無安打3三振だった。
下位打線では伏見が二回に中前打を放ったが、五回は遊ゴロ。代打の島田は八回に見逃し三振。小幡は二回に右飛、五回に一ゴロ、八回に見逃し三振。大竹は三ゴロ、空振り三振。代打・嶋村は八回に一塁内野安打を放ち、チャンスを作った。九回に代打で出た坂本は三ゴロ併殺。個々の打席を見ても、好機を広げる局面はあったが、得点につながったのは最後の中軸の一発だけだった。
西武もまた、試合全体を通じて圧倒的に打ち勝ったわけではない。だが、二回に4番が一発で先制し、七回には相手のミスを確実に得点へ変えた。阪神は九回に中軸が意地を見せたものの、そこまでに積み重なった差を最後まで消し切れなかった。
守備では小幡に2失策が記録された。七回2死二、三塁、長谷川の遊ゴロを処理しきれず、一塁悪送球。このプレーで2者が生還した。結果論ではなく、スコアの上でも明確に勝敗を分けた場面だった。大竹の自責点は1。チームの失点は3。ここに、この試合の性格が表れている。
西武投手陣では、渡邉が7回112球、打者24人、被安打2、奪三振6、与四球1、無失点で3勝目。八回の甲斐野は1回24球、被安打2、奪三振2、無失点。九回の岩城は森下の三塁打、佐藤輝の2ラン、大山の四球で苦しみながらも、最後は坂本を併殺に打ち取り、17セーブ目を挙げた。阪神投手陣は大竹、湯浅、工藤で9回を投げ、与四死球ゼロ。投手戦としては、阪神にも十分に勝機があった。
阪神にとって救いは、最終回に沈黙のまま終わらなかったことだ。森下が三塁打で出て、佐藤輝が一発で返した。クリーンアップの力で試合を最後まで分からなくした。その一方で、勝ち切るには七回までの攻撃で一歩でも渡邉を揺さぶる必要があった。二回の2死一、二塁、四回の無死一塁、八回の2死一、三塁。どこかで1点を奪えていれば、九回の2ランは同点、あるいは逆転への一打になっていた。
2-3のスコアには好投、沈黙、失策、猛追。そのすべてが詰まった一戦だった。阪神は最後に牙をむいた。だが、勝負を決める前に、自らのミスで相手に与えた2点があまりにも重かった。甲子園に響いた佐藤輝の15号2ランは、次戦につながる希望であると同時に、勝利に届かなかった悔しさをより濃く残す一発となった。
